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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
ファリン

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38/50

第三十八話:侵入

低く、不快な警報音が鳴り響く。


リアクター区画。


封鎖寸前。


「侵入制限、レベル3に移行」


無機質なアナウンス。


時間がない。


レンが走る。


その隣を、カイトが支えられながら進む。


完全じゃない体。


それでも、止まらない。


「……間に合うか」


カイトが呟く。


レンが短く返す。


「間に合わせる」


迷いはない。


二人は、封鎖ゲートを突破する。


その先、リアクター内部。


空気が重くなる。


息が詰まるような感情の濁流。


「……これ全部、溜まった感情だ」


カイトが顔をしかめる。


レンが周囲を見渡すと、黒い揺らぎ。


音にならない声。


「……気持ち悪いな」


カイトが言う。


「流れきれなかったやつだ」


「残ったまま、腐ってる」


その中心の青い光が揺れている。


グロキシニア。


まだ、消えていないが限界が近い。


崩壊寸前。


「……あそこだ」


レンが踏み出そうとする。


その時。


「止まりなさい」


二人の動きが止まる。


振り向くとファリン。


共鳴兵装まで装備した、完全武装。


表情は、いつも通り冷静。


だが目だけが、少し違う。


「ここは封鎖区域よ」


淡々とした声。


「命令違反」


レンが舌打ちする。


「来ると思ったぜ」


ファリンは無視する。


視線はカイトへ。


「あなたが原因ね」


カイトは否定しない。


「そうだよ」


まっすぐ答える。


ファリンの視線がほんの一瞬だけ揺れる。


「引き返して。これ以上は危険。」


レンが前に出る。


「無理だな」


ファリンの目が細くなる。


「……排除対象よ」


レンが返す。


「違う」


間髪入れずに返す。


空気がぶつかる。


「感情の残滓よ」


「ユウリだ」


完全に対立する二人。


カイトが口を開く。


「まだ間に合う」


ファリンを見る。


「助けられる」


その言葉が刺さる。


ファリンの指先がわずかに震える。


だが、すぐに押さえ込む。


「……不可能よ」


冷静に。


「リアクターと完全同期してる」


「引き剥がせば暴走する」


カイトが頷く。


「だから止める」


ノートを取り出す。


「一瞬だけ」


ファリンの目が変わる。


「……何をする気」


カイトが言う。


「物語を固定する」


理解が追いつかない。


だが、危険性だけは伝わる。


ファリンが一歩踏み出す。


「やめなさい」


声が強くなる。


「それ、リアクターに干渉するレベルじゃない」


「世界ごと壊れる」


カイトは笑う。


「知ってる」


ファリンの表情が歪む。


「じゃあなんで――」


言い切る前にカイトが言う。


「ユウリがいるから。それだけ。」


ファリンが言葉を失う。


一瞬で正しさを揺らすその言葉はずるい。


レンが言う。


「ファリン、もう一回聞く」


目を見て。


「お前、あれ見てどう思った」


ファリンの呼吸が止まる。


頭の中に、あの光景が蘇る。


揺れる輪郭、少女の形。


「……やめて」


あの声。


「……こわい」


震えていた。確かに“ユウリだった”。


「……っ」


否定する言葉が出ない。


でも認めたら、全部崩れる。


「……私は」


やっと出た声。


震えている。


「私は……」


レンが静かに言う。


「守れなかったんだよな」


ファリンの目が見開かれる。


「……だから今度は守る」


レンの声は、静かだが強い。


「俺はそうする」


カイトも言う。


「俺も」


沈黙。


二人のまっすぐな視線。


逃げ場はない。


ファリンの手が、震える。


銃を握る手。


引き金にかかる指。


撃てる。


止められる。


“正しい選択”。


だが、撃てない。


「……なんで」


小さく呟く。


「なんでそんな顔できるのよ」


レンが少し笑う。


「決めたからだろ」


カイトが続ける。


「お前も決めろ。正しい方じゃなくて、自分で。」


数秒の沈黙。


永遠のような時間。


そしてファリンは――


銃を、ゆっくり下げる。


不本意だが視線を逸らす。


「……見逃したわけじゃない」


小さく言う。


「ただ」


少しだけ間を置く。


「証明しなさい」


顔を上げる。


強い目。


「それが“ユウリ”だって」


完全な合流ではない。


だが、敵でもない。


レンが笑う。


「上等」


カイトも頷く。


「見せるよ」


三人が、同じ方向を見る。


リアクターの中心部、青い「グロキシニア。」


そこに向かって、もう止まらない。

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