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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
レン

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第三十四話:続・守るということ

朝。


いつも通りの、訓練場。


白に包まれた無機質な空間。。


整列された装備。


変わらない日常。


レンは一人、中央に立っていた。


レゾナンスブレードを握る。


上段に構えてから正面へ、ブレードを振る。


空を裂く鋭い一閃。


正確で無駄のない動き。


速く、強い残像が残る。


だが、「……チッ」


納得できず、動きが止まる。


もう一度振る。


同じ動き、同じ結果。


それでも何かが違う。


「……なんだよ」


小さく呟く。


あの瞬間を思い出す。


ブレードを振った時の感触。


“壊した”手応えじゃなかった。


まるで“削った”ような感触。


「……生きてるみたいな」


言ってから、顔をしかめる。


「……バカか」


強く否定する。


感情の波に反応して強く振動しているブレードを握りなおす。


その時。


「力みすぎ」


声に振り向く。


エヴァ。


黒の装備。


無駄のない立ち姿。


胸元の隊長バッジが、静かに光る。


綺麗に整備されたレゾナンスシューターを背負っている。


レンは少しだけ姿勢を崩す。


「……見てたのかよ」


エヴァは頷く。


「動きが鈍い」


短く的確に指摘する。


レンが眉をしかめる。


「いつも通りだろ」


エヴァは首を振る。


「違う」


一歩近づく。


「迷いがある」


レンは一瞬黙る。


視線をすぐに逸らす。


「……ねえよ」


エヴァは言う。


「ある」


「刃が止まっている」


レンが舌打ちする。


「だから違うって――」


エヴァが遮る。


「戦場で迷いは死に繋がる」


冷たい声だが事実なので、レンは何も言えない。


エヴァが続ける。


「今回の対象は排除対象だ。迷う理由はない」


正論。


だが、レンは小さく言う。


「……あいつ」


エヴァが止まる。


レンが視線を落とす。


「“こわい”って言ってた」


エヴァは答えない。


レンが続ける。


「敵が、そんなこと言うか?」


エヴァは少しだけ考える。


深く考えてから答える。


「言う」


レンが顔を上げる。


エヴァは続ける。


「恐怖は感情だ」


「感情は情報だ」


「情報は再現される」


アルトと同じ理屈。


ブレない。


「それが本物かどうかは関係ない」


言い切る。


「戦場では、排除すべきかどうかだけが重要」


レンが黙る。


理解はできるし納得もできる。


だが、何かが引っかかる。


エヴァが一歩下がる。


「迷うなら来るな」


冷たく言う。


「そのままでは次の戦闘で死ぬ」


そのまま背を向け、去ろうとする。


その時、レンが言う。


「……じゃあさ」


エヴァは振り向かない。


レンが続ける。


「守るって、なんだよ」


静かな問い。


エヴァは少しだけ間を置く。


「排除だ」


「誰かにとっての脅威を取り除くこと」


「それが守るということだ」


レンは、ゆっくり首を振る。


「……それで」


「守れなかったら意味ねえだろ」


空気が止まる。


エヴァが、わずかに振り向く。


初めて、一瞬だけ見せる感情の気配。


レンは低い声で続ける。


「俺、一回やってる」


「“正しいこと”選んで」


「ユウリ、守れなかった」


沈黙。


エヴァはしばらく何も言えなかった。


レンが拳を握る。


「もう一回同じことやるのは嫌だ」


まだ揺れているが、レンの中で確実に変わり始めている。


エヴァが、静かに言う。


「私も、それで多くの仲間を失った。」


「それでも…私の選択は正しかった。」


振り向かないまま。


「任務は変わらない」


「だが、選ぶのはお前だ」


それだけ言って、歩き出した。


足音が遠ざかる。


静かな訓練場。


感情に揺れるレゾナンスブレードに、一瞬自分が映る。


迷っている歪んだ顔。


「……守るってなんだよ」


レンにとっての答えはまだ出ない。


だが、“疑い始めている”。


それが変化だった。

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