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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
レン

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33/50

第三十三話:守るということ。

朝。


いつも通りの訓練場。


無機質な空間。


白い床。


整列された装備。


変わらない日常。


レンは一人、中央に立っていた。


レゾナンスブレードを握る。


構えて振る。


鋭い一閃。


空気を裂く音。


無駄のない動き。


正確で速い。


だが


「……チッ」


止まる。


納得できない。


もう一度振る。


同じ動き。


同じ結果。


それでも、何かが違う。


「……なんだよ」


小さく呟く。


思い出す。


あの瞬間。


ブレードを振った時の感触。


“壊した”手応えじゃなかった。


“削った”感触。


まるで「……生きてるみたいな」


言ってから、顔をしかめる。


「……バカか」


否定する。


武器を強く握る。


その時。


「力みすぎ」


声に振り向く。


エヴァ。


黒の装備。


無駄のない立ち姿。


胸元のバッジが、


静かに光る。


レゾナンスシューターを背負っている。


レンは少しだけ姿勢を崩す。


「……見てたのかよ」


エヴァは頷く。


「動きが鈍い」


レンが眉をしかめる。


「いつも通りだろ」


エヴァは首を振る。


「違う」


一歩近づく。


「迷いがある」


核心。


レンは一瞬黙る。


だが、すぐに逸らす。


「……ねえよ」


エヴァは言う。


「ある」


「刃が止まっている」


レンが舌打ちする。


「だから違うって――」


エヴァが遮る。


「戦場で迷いは死に繋がる」


冷たい声。


だが、事実。


レンは何も言えない。


エヴァが続ける。


「今回の対象は排除対象だ」


「迷う理由はない」


正論。


だが、レンは小さく言う。


「……あいつ」


エヴァが止まる。


レンが視線を落とす。


「“こわい”って言ってた」


沈黙。


エヴァは答えない。


レンが続ける。


「敵が、そんなこと言うか?」


問い。


エヴァは少しだけ考える。


そして答える。


「言う」


レンが顔を上げる。


エヴァは続ける。


「恐怖は感情だ」


「感情は情報だ」


「情報は再現される」


アルトと同じ理屈。


ブレない。


「それが本物かどうかは関係ない」


言い切る。


「戦場では、排除すべきかどうかだけが重要」


レンが黙る。


理解はできる。


納得もできる。


だが引っかかる。


エヴァが一歩下がる。


「迷うなら来るな」


冷たく言う。


「次の戦闘は死ぬ」


そのまま背を向ける。


去ろうとする。


その時レンが言う。


「……じゃあさ」


エヴァが止まる。


振り向かない。


レンが続ける。


「守るって、なんだよ」


静かな問い。


重い。


エヴァは少しだけ間を置く。


そして、答える。


「排除だ」


迷いなく。


「脅威を取り除くこと」


「それが守るということだ」


完璧な答え。


間違っていない。


だがレンは、ゆっくり首を振る。


「……それで」


小さく言う。


「守れなかったら意味ねえだろ」


空気が止まる。


エヴァが、わずかに振り向く。


初めて、感情の気配。


ほんの一瞬だけ。


レンは続ける。


「俺、一回やってる」


低く重く。


「“正しいこと”選んで」


「ユウリ、守れなかった」


沈黙。


エヴァは何も言わない。


レンが拳を握る。


「もう一回同じことやるのは嫌だ」


その言葉。


決意の一歩手前。


まだ揺れている。


だが、確実に変わり始めている。


エヴァが、静かに言う。


「それでも」


振り向かないまま。


「任務は変わらない」


冷たく。


「選ぶのはお前だ」


それだけ言って去る。


足音が遠ざかる。


レンは一人になる。


静かな訓練場。


ブレードを見つめるその刃に、自分が映る。


迷っている顔。


歪んでいる。


「……守るってなんだよ」


もう一度、呟く。


答えは、まだ出ない。


だが前とは違う。


“疑い始めている”。


それが、変化だった。

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