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俺の書いたキャラが現れた。そいつを消さないと世界が終わるらしい。―グロキシニアの凱旋  作者: ひろほね
レン

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第三十二話:守れなかったもの

夜。


静かすぎる通路。


誰もいない、任務の後のわずかな空白。


レンは、一人で歩いていた。


足音だけが響く。


一定のリズム。


乱れない。


だがその内側は、ざわついている。


「……チッ」


小さく舌打ち。


思い出す。


あの声。


「……やめて」


頭から離れない。


レンが足を止める。


拳を握る。


「……違う」


自分に言い聞かせる。


「あれは敵だ」


「ただのノイズだ」


繰り返す。


だが完全には消えない。


「……こわい」


あの声。


震えていた。


“恐怖”。


それは、偽物じゃなかった。


レンの呼吸が、わずかに乱れる。


その時。


「まだ引きずってるの?」


声。


振り向く。


ファリン。


黒の装備。赤いライン。金のバッジが静かに光る。


レンは視線を逸らす。


「……別に」


短く返す。


ファリンが近づく。


「嘘ね」


即答。


レンが眉をしかめる。


「……なんだよ」


ファリンはまっすぐ見る。


「迷ってるでしょ」


核心。


レンは一瞬黙る。


そして、吐き捨てる。


「……迷ってねえ。やることは決まってる」


ファリンは首を傾ける。


「排除?」


レンが頷く。


「当たり前だろ放っといたら広がる」


「被害が出る」


正論。


ファリンも頷く。


「そうね」続ける。


「でも」


少しだけ、声が低くなる。


「それで、また守れなかったら?」


空気が止まる。


レンの目が、わずかに揺れる。


「……何の話だ」


分かっている。


それでも聞く。


ファリンが言う。


「ユウリの時と同じ」


その名前。


一瞬で、過去が蘇る。


閃光。


崩れる空間。


手を伸ばすが届かない。


「……やめろ」


レンの声が低くなる。


ファリンは止まらない。


「守るって言ってた」


「絶対に守るって」


一歩近づく。


「結果は?」


沈黙。


レンの拳が、震える。


「……っ」


言葉が出ない。


ファリンが言い切る。


「守れなかった」


その一言が深く刺さる。


レンが顔を歪める。


「……違う」


絞り出す。


「俺は……」


言葉が続かない。


ファリンが続ける。


「今回も同じになるわよ」


冷静に。


残酷に。


「“正しいこと”を選んで」


「また、大事なものを切り捨てる」


レンが叫ぶ。


「違う!!」


壁に拳を叩きつける。


鈍い音。


「今回は違う!!」


息が荒い。


「これは戦いだ」


「敵なんだよ」


必死に言い聞かせる。


ファリンは静かに言う。


「じゃあ聞くけど」


「さっきの、敵に見えた?」


沈黙。


レンの呼吸が止まる。


あの瞬間。


後ろに下がった動き。


「こわい」と言った声。


あれは。


「……っ」


否定できない。


ファリンが小さく言う。


「私はね」


少しだけ目を伏せる。


「もう一回同じことするのは嫌」


レンが睨む。


「じゃあどうすんだよ」


ファリンは答えない。


「考えなさい」


そして、背を向け去っていく。


足音が遠ざかる。


レンはその場に残る。


一人拳を握ったまま。


「……クソ」


小さく吐き捨てる。


視線を落とす。


震えている。


気づいてしまったから。


“迷っている”ことに。


その時微かに、声がする。


「……レン」


顔を上げる。


誰もいない。


だが、確かに聞こえた。


「……助けて」


息が止まる。


レンの目が、大きく見開かれる。


「……ユウリ?」


返事はない。


ただ、静寂。


レンが、ゆっくりと後ろを振り返る。


リアクターの方向。


遠く。


見えないはずの場所。


だが確信する。


“いる”。


拳を強く握る。


「……俺は」


小さく呟く。


「どうすればいい」


答えはない。


だが、選ばなければならない。


もう一度。


今度こそ。

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