軽んぜられている妃候補の令嬢の場合
今日も王子妃教育として何故か外交の交渉に同席する
第三王子の婚約者候補のキャロライナ ホーヘルン伯爵令嬢。
これまたテンプレ通りの第三王子 アルバート君は、候補者に過ぎないキャロライナ嬢に
シノワ帝国の使節団の接待を丸投げ。
彼の国は森羅とも呼び、生活用品も習慣も言葉も何もかもがハイラント王国とは違う国から
やって来た客人を礼儀とマナーを遵守しながら迎え入れ、滞在に何の不安も不便も感じさせる事無く
言葉も正確に使い、言い回しやウィットに富んだちょっとした冗句も使い熟せなければいけなかった。
なのに何の学びも身に付かなかったバカ王子はこれ幸いと、婚約者候補のキャロライナに試験だとばかりに
色々と公務での根回しから下調べから何から何まで面倒事を押し付けた挙句
とうとう表舞台にまで引っ張り出してきた訳だけど…
そこからしておかしいんだよ。
キャロライナ嬢は婚約者"候補“にしか過ぎないんだよな。
王家主導で進めている他国との交渉の内容、譲歩出来るギリギリのラインとか
外に漏れるとヤバくてマズイ諸々の情報がホーヘルン家にダダ漏れじゃん。
王家に忠誠の前に自家の繁栄じゃん!絶対普通の貴族令嬢なら父親に伝えて有効活用するじゃん!!
「どうすんのよ」
見ていた俺に隣に座した女王陛下は小さく微笑んだ。
彼女は訳あって王冠を戴いた女の子だ、その際に眉を寄せて困ったわと呟いたのを面白く感じて側にいる。
「アンタの弟と伯爵んトコの小娘、どっちを?どっちも?」
今回は大公家の子息という体で女王陛下の側に侍っている俺が短く問えば、彼女は微笑んだまま
「両方」と扇子の内に小さく溢した。
「んじゃ、陛下のお手並みを拝見」
「なら私にも"見せて"頂戴」
ニンマリと細められる目、彼女は玉座に昇る際に困ったようにボヤいたのは
俺と一緒に面白いものが見れなくなってしまうと、気楽な王女の立場を惜しんだ後悔。
ならば"見る"だけならと彼女は権力を持つ事で、俺を利用する禁忌に抵触するのではと
女王即位から逃げ回ったので、やらかしたヤツをザマァするのを
見物させて貰う代わりに、俺は愚か者共のやらかしを知らせてやると交換条件を出した。
自分が直接ザマァを仕掛けられるのならと、気を取り直しての即位だったんだよな。
ま、全部は教えてやらんけど。
それで第三王子アルバート君には取り敢えずホーヘルン伯爵ン所の令嬢キャロライナちゃんの
義務でしか無い婚約の予定は予定でしか無く、アルバート君にはしっかり者のキャロライナちゃんが
ピッタリだと思われた保護者達大人の思惑とは別に、親心や周りの大人の親切心なんか知ったこっちゃ無いと
アルバート君的に、伯爵令嬢程度が自分の妃候補とはとヘソを曲げて拗ねてるだけ。
国王の息子なんだから同格の他国の姫、もしくは公爵令嬢、今代はいないけど大公家令嬢クラスの
ハイレディじゃなきゃ釣り合わないと、勝手にキャロライナ嬢を爵位だけでラベリングして嫌ってる。
長兄は本来、王太子として未来の国母を迎える立場だったので最初はキリアラナ王国の姫との
婚約が整いそうだったけど急な病という名の、禁忌に触れ王として立てなくなってしまった為に
先方に詫びを入れて縁談は敢え無く消滅。
次兄は第二王子として既にゲール公爵家に婿入りして臣籍降下の予定をそのまま履行。
顔合わせの茶会で一目惚れのゲール公爵令嬢の婿として盛大に結婚式を挙げ、今はもうゲール小公爵様として
昼は部下や民衆に手を振り、夜は寝台で腰を振りと生殖行動=恋愛みたいな過激少女マンガそのままの
ヒロイン溺愛激甘系スパダリとして、社交界でレディ達の悩ましい吐息と砂糖を吐かせまくっている。
そしてザマァに名乗り出た長女の第一王女から女王に即位されたこの娘は、絶賛王配募集中。
拗れに拗れた関係の行く先はと見てれば…
テンプレ化してる公開婚約破棄?とやらをシノワ帝国の使節団の前でやらかし
正式な婚約者でも無いキャロライナ嬢に大恥をかかせて踏ん反り返ってるw
キャロライナちゃんの方も、あれだけ大臣だの文官や他国の外交官と渡り合えるだけの
知識も度胸もある筈なのに何故か何も反論も抗弁も無く、一言承知しましたとだけ口にし
義理と形式だけのカーテシーでその場を投げ出し後にしたとさ。
反論しろよ!黙って飲み込んで承知して立ち去ったらバカの言い分認めたようなモンじゃん。
後々当主から反論させるにしても一言、後日弁明をと言い残すべきで、承知したなんて言ったら駄目じゃね?
この場合、物語の筋だとシノワ帝国側の使節団代表とかシノワ本国の王子や高位貴族のイケメンが
キャロライナ嬢の書式か文字か整えられた数字に惚れてる設定だけど
大体正式な書式に書き足さなくていい余計なメモ書き…対応する他国の外交官とか
代表として来てる責任者の体調とか癖を見つけて
本人が男か女か知らずに紙上の文字を見て勝手にトキメキを感じるって平安貴族か変態か?
それで第三王子アルバートとホーヘルン伯爵令嬢キャロライナの婚約は2人の間で私情だけの
勝手な判断で行われた破談の了承事が為されたのをシノワの使節団…他国の重要人物の前で
公的な席で目撃されちまったって訳だけど。
見ていた女王サマがすかさず立ち上がって会議場として設定されている広間へと急ぐ。
ここから女王サマ自らのザマァ劇場って事か。
「お待ちなさい」
1人廊下を歩くキャロライナ嬢を誰何する女官、当然だ。
城内を一人歩きする令嬢なんて見た事も聞いた事も無い。
城内のセキュリティ的にも、令嬢の評判的にも令嬢が付添人を付けず
王宮の女官と侍従の案内も無しにチョロチョロ歩かせるなんて
王家と令嬢の家、両方の恥でしか無いだろ。
退出して廊下を歩くキャロライナ嬢を女王サマは呼び止めると、女官と一緒に供をさせ会議場にUターン。
そして女王陛下の御成!と仰々しく扉を開けて、今行われた婚約破棄騒動の尻拭いが始まった。
突然入場した女王サマの周りにはお付きの女官達、護衛の女騎士、更に周りを近衛騎士が囲み
端に女官2人に挟まれる形でキャロライナ嬢。
「此度のシノワ帝国使節団との会合はコナノワ河灌漑工事による両国の取水量と交易の関税を
取り決める会議であろう、何故議場からホーヘルン伯爵令嬢が出てくるのだ?」
会場に控えていた侍従が急いで場を整えに動き、女王の席を用意する。
その支度の間に答えられる文官は居らず、アルバート君も口を閉ざしたままだ。
「シノワ帝国の、部外者が紛れていたとは我が国の不手際を謝罪する」
女王陛下自らが謝罪の言葉を口にしたけど、頭を下げる事は無い。
この場合頭を下げるのはアルバート君だよな、ボケっと立ってるアルバート君を促す
扇子のパチリと閉じる女王サマの圧に慌てて頭を下げてる始末。
女官に挟まれてるキャロライナ嬢は震えてるだけで、シノワのヤツ等もえっ!?て顔してる。
「アルバート、何故この場にて婚約云々なぞと関係の無い事を口にした」
「え、それは」
急に婚約破棄wについて言及され、答えようと口を動かし出したアルバート君の後ろから
近衛騎士が肩を叩いてそれ以上の発言を止めてから左右からガッチリ押さえられて部屋から引きずり出された。
「大変失礼致しました、アルバート殿下は体調を崩され退出されます」
側仕えの女官が発言を合図に会議は一時中断となり、キャロライナ嬢も騎士に引っ立てられて退場。
使節団の皆にはハイラント王国自慢の高級翠茶と甘味を出しての小休憩。
退場したアルバート君の代理で女王サマがハイラントの代表を務める事となり、まさか女王自らと動揺した
シノワ側は先程の騒動で譲歩を引き出そうかとの計算も飛び、サクサクと本来の条件のまま条約は締結された。
そして場を移動して無機質な会議室へ。
主にハイラントの文官が国内の様々な業務を行う行政区の小さな一室、先程の儀礼と外交の場では無い。
「アルバート、何か申し開きはあるか」
公的な場で、部外者を同席させた挙句、シノワ帝国には1ミリも関係の無い
ハイラント王国の、第三王子に過ぎないアルバートの婚約破棄!
しかも相手は正式な婚約を結んでいない候補の娘!
女王サマの扇子がパチパチと圧を掛けるかのように鳴らされ、言外に下らない言い訳を吐こうものなら
首を刎ねる方の断罪だと怒りを隠さない。
そしてあの場に居合わせた文官、そして侍従一同も呼び集められて女王サマの御前で
怒りの圧の中、畏まって侍立していた。
「そもそも何故無関係の令嬢をあの場に置いたのだ」
「そ、それは婚約者として私の妃に相応しいかのテストで」
「その選定は我等が行う事、それにこの程度の取り纏めすら出来ぬ未熟者だからこそ
才女と評判の娘を宛てがい王城にて女王弟として妾の補佐として生きていけるよう計らうつもりであったが
噂も当てにならぬの、まさか権限も資格も無いのに公の会議場に入り込むとは」
呆れも露わにヒラヒラと扇子を向け、所在無げに立ち尽くすキャロライナ嬢に嫌味をぶつける。
「妃と立てようと思案の最中であったが、まさかその候補に公務を丸投げとは
己が怠ける為の悪知恵だけは長けているとはの、こうなれば何処の家も娘を王子妃に出そうとは思わぬであろう。
仕方無い、アルバートは出家させ修道士として国の安寧を祈らせるしかあるまい」
王子として王家の血統の保持と治世の一助と城に残そうとの婚姻も、あまりに愚かで王族としての資質に欠ける
アルバートを、国交の質として婿に出そうにもシノワ帝国使節団に恥を晒した後では
相手側の王家に対して失礼極まりない人選だ。
物語でザマァ先の、色欲旺盛な一妻多夫で制度としても合法で逆ハーレムを蓄えている熟女王や
脂ぎったガマガエルとオークかゴブリンのハイブリッドみたいな見た目の
次々と金に物言わせて処女を喰い漁り、飽きたらハードなプレイで責め殺して次を仕入れる
隠居た好色スケベ貴族が都合良く転がっている訳が無く、そんなヤツがいたら家族親族が黙っていない。
秘密の愛人程度じゃ飽き足りず男漁りに勤しみ
若いツバメを囲う女王や有閑マダムなんて家の恥、御家の名誉を守る為と即病死コース一択だ。
そしてガマガエル好色親父も同様に、隠居の分際で家の財産を喰い潰すマネなんかしてみろ。
当主となった息子に即座に毒の一つも盛られて切り捨てられるだけだろ?
だからアルバート君は王子として城に置いて王族として遇すには能力も人柄も
難のある人物と断ぜられ、娘を輿入れさせても使い倒して顧みない不幸な結婚相手と
国内ではもうマトモな家からは相手にされず、外に出すにしても厄介者を押し付けるゴミ箱扱いする気かと
相手国を怒らせるだけのマジモンの厄介者。
捨て扶持を与えて飼い殺すメリットも無いので仕方無く、本当に仕方無く教会に身柄を委ねるしか無くなった。
ま、教会は悩める信者の救いの家とか言ってるし、それなりに寄付金積みゃなんとかなるし。
アルバート君はそれでお終い、王族だってのもあるから金で厄介払い。
キャロライナ嬢に地味だの王子である自分に嫁げる幸運に感謝して尽くせなんて
パートナー選びの筈が、モラハラ男の本性丸出しだったから
きっと奥さん要らないよねと、女性とは無縁の神の家で神様に仕えるのが幸せだと思うよ。
女王サマの決定に反論を与える間も無く、左右を騎士に押さえられて退場したよ。
そしてキャロライナ嬢の番。
「お前は何故付添人も付けずに城に居る」
「直答をお許しください、それは両親が付けてくれなかったからで御座います」
「それはホーヘルン家から馬車に1人乗せられ、城に着いたら放り出されたという事か。
誰ぞホーヘルン伯を至急呼び出せ。
お前は勉強が出来て多少事務仕事が出来ても、貴族令嬢として最低限の常識すら備わっていなかったのだな。
城に置き去りにされたのならば、女官に声を掛けて付き添いを頼んで家に連絡を寄越すとか
城内に居る良識のある者や妾に窮状を訴えれば良かっただけではないか。
1人勝手にアルバートの下に向かって言いなりになり、勝手に行政区域に足を踏み入れて
国政に外交に嘴を挟む、それも男ばかりの文官の中に混じってだ。
何の為に文官登用試験があると思う、守秘義務を守らせる魔法契約を結ばせ
実家に肩入れをしたり情報を流したりと不正を行わせない為だ。
妾から見れば文官の職分を犯し、男に媚びるアバズレでしか無い」
薄汚いものを遮るように扇子を眼前に翳し、キャロライナ嬢をアバズレと断じた女王サマに
言われた当人は真っ青だ。
「一体ホーヘルン家の教育はどうなっておる!
今すぐホーヘルン夫妻とアバズレの兄弟姉妹がおるなら纏めて疾く呼んで参れ!!」
女王サマの怒りに慌ててホーヘルン伯爵と夫人、キャロライナ嬢の妹、リリエットも纏めて呼び出された。
ヤツ等を待つ間、女王サマはシノワ帝国使節団の出迎え役を急遽第三王子から
第一王子に変更するよう指示したり、俺ん所に来て爆笑しながら茶をしばいてから
ヒロイン気取りのキャロライナ嬢の家族の到着を知らされるまで楽しく快適に待っていた。
それに引き換え会議室に呼び出されたキャロライナ嬢と、アルバート君に従って
仕事を放棄してキャロライナ嬢にシノワ帝国使節団の接待から会議の議題の下調べから根回しまで
ほぼ丸投げしてた文官共は、女王サマが公務を取る為に退出し休憩を取っている間
ずっと立ったまま、どうしても我慢出来無い程に切羽詰まった小用に迫られたら
恥を忍んで監視役に置かれた騎士に申請して一緒に部屋を出て生理的な欲求を果たしに行って来る。
無論、キャロライナ嬢もパウダールームの中で薄い扉一枚挟んで騎士に張り付かれての放出に涙目だw
そうして参内したホーヘルン伯爵一家。
到着を知らされて爆笑していた女王サマはヤツ等が案内される前にと会議室に戻り先に文官共を叱責。
無資格の小娘1人に業務を丸投げする無能は要らん!と喝破し、仕事を放棄したとして一律減給。
責任の軽重で左遷や配置転換に降格とし、退出せよと追い払われる。
そしてアルバート殿下付きの副官として今回のシノワ帝国関連の外交責任者だけは、その場に残された。
「さて、ホーヘルン伯爵家では淑女というものを何だと思っておる」
ペシペシと閉じた扇子を掌に打ち付けながら問う女王サマ。
「仮にも王族の婚約を打診された娘に付添人を付けない、勝手に城に置き去りにして
我が愚弟に扱いを丸投げ、挙句に文官としての登用試験を受けてすらいない小娘を行政区域に入り込ませる。
お前等は娘をスパイとして城に放って彷徨かせていたのか?」
「い、いえ、その、長女のキャロライナはしっかりしているから大丈夫と妻が…」
「お前は国の法や貴族家としてのマナーやルールより妻の言葉を優先するとは、何とも麗しい愛妻家ではないか」
「そのようなつもりでは無くて、その」
「そうです、キャロライナより妹のリリアーナの方が殿下の妃に相応しいと思いまして」
横から口を出すホーヘルン夫人のマナー違反。
いきなり女王サマへ話し掛ける、しかも伯爵に叱責してる最中にそんな口出し。
マジでホーヘルン一家って大丈夫?貴族の自覚ある?
「ならば何故そう奏上しない、見苦しくゴテゴテゴテゴテ着飾って。
妹は正式に妃候補に挙げられぬからか?
愚弟に先に才女の噂のある姉を近付け、正攻法では妃になれぬ劣った妹を色仕掛けで籠絡する気だったか。
勉強は出来ても淑女とは呼べぬアバズレ、全くあり得ぬ」
連れて来られたホーヘルンの妹チャンは、ビーチクギリギリの襟ぐりの破廉恥ドレスは
喧しい程のレースとビーズとリボンが縫い付けられていて目がチカチカするw
更に目元のアイシャドウと口紅が油絵の重ね塗りかと思える暑化粧。
首には重ね付けのネックレスと、胸元に並べて付けられた軍人の勲章かと思えるブローチに
両手首にブレスレット、左右の親指と薬指以外には彩り豊かな指輪は色見本。
姉チャンから根こそぎ奪ったドレスの生地と、装飾品と、化粧品をこれでもか!と盛り付けた
平成ギャルも真っ青な盛り髪にバカみたいな髪飾りはハイビスカスを思い出す。
「それにその者の、場を弁えている以前の乞食か泥棒のような欲張った装いはなんだ。
まさかそのトンチキな格好で愚弟を誘惑する気だったのか?頭の中は大丈夫か?」
大道芸でも見ない道化を見せられる女王サマの視線は、珍獣を見るもの。
「それと、キャロライナ嬢の荷物であろう」
女王サマが騎士に扇子の先を向けて促したのは、アルバート君の部屋の傍部屋から押収した革のトランク二つ。
アルバート君がキャロライナ嬢をいいように利用する為に与えていた作業スペースの
机の足元に隠されていたトランクを遠慮なんてものは見せずにご開帳。
きっと婚約破棄か〜ら〜の国外追放という断罪テンプレセットをカマされたら
彼女はカウンター代わりに即国外脱出を企んでたんだろね。
「離籍届も完璧に整えて出奔しようとしたようだな。
もし、此処で見聞きした事柄を一文字でも書き写して持ち出そうものなら情報漏洩の罪で縛り首だがな」
中身をブチ撒けられたトランク、簡素なワンピースにシャツや作業ズボン。
そしてこれは大恥モノだろう、下着も容赦無く晒されてドロワーズまでひっくり返され
縫い目まで騎士の手で調べられて情報流出に関して徹底的に調べる姿勢を見せた。
「そ、そのような事は絶対に致しません。
ですからその、下着などは人目に触れる形で調べるのはどうかお許し頂けないでしょうか」
羞恥に肌を染め、震えながら女王サマに懇願するキャロライナ嬢。
「お前の貞操と一緒で信じられるものか、どうせこれ等平民向けの衣服やその革袋の銀貨銅貨なぞ
伯爵の屋敷で入手出来る物では無かろうに。
黙って屋敷を抜け出して平民街にで下働きの日銭稼ぎか、春を売ったのかは知らんが1人下町を歩き回る女が令嬢?
市井に生きて立ち働く平民の娘が生活の為に出歩くのとは訳が違う。
そんな娘の貞操も信用も信じられるか、キャロライナは資格も無しに外交の場での口出しで
政略上の混乱と遅延を招いた罪で毒杯だが離籍届もあるし、貴族籍から離れた今は平民と同じ縛り首」
立ち続けるキャロライナ嬢の元に、ゆったりと歩み寄った女王サマはトン、と肩を扇子で軽く叩き
歌うようにこれから彼女等の身に訪れる末路を語る。
真面目wに帳簿の数を正しく記録し、外交儀礼を整え、しおらしく慎ましやかに影から
婚約者(予定)を支えていれば、残した仕事が正しさを偽り無く証明してくれるとでも思ってたんだろねw
バカじゃねぇの?
その正しさ以前に、淑女としての最低限のマナーや体裁を忘れて好き勝手に外出して歩き回る
品質保証の全く無いフリーな女を何処の家が迎え入れると思うんだろ?
どうしても!!というハイスペイケメン高位貴族令息や紳士が登場し、救いの手を差し伸べ
一緒になろうだとか、結婚なんて言い出したとしても、イケメン家族や家臣達の手で
真っ先に教会にぶち込まれて、性病と妊娠の有無を厳しくチェックされてから
精々別宅に押し込まれての愛妾や愛人、庇護した『遠縁の子女』って扱いで
徹底的に社交界は無論、表舞台や世間から隠された存在として生きるしか出来ないだろうし?
そんな砂浜でダイアモンド一粒を拾うような幸運が訪れる前に、女王サマが断罪しちゃったけどw
「娘も娘なら親もマトモに娘を躾けられずに育ったのはアバズレと道化。
姉妹の格好を見れば貴族としての品位なぞ毛筋程も感じられぬ。
それから王家から打診した愚弟との婚約も、軽く考えていたから姉のキャロライナを1人で
馬車に乗せて城に置き去りにしていたのであろう。
愚弟との婚姻打診を命じた妾に対し、余りにも不敬だとは思わぬか?」
フワリと裾を滑らせてホーヘルン伯爵の側で優しい声音で問い掛ける女王サマ。
言われてる当人はマジ怖ぇだろなwww
「そして諌めるどころかアルバートの戯言に乗っかり
無資格の小娘に他国の使節の接待から
議題の一切の下調べから草稿の書き出しまで丸投げした無能の名ばかりの副官なんて要らぬわ。
スルスルと裾が滑り、アルバート付きだった今回のシノワ帝国関連の外交責任者の
外交官 レードバッダー侯爵子息の胸元を扇子の先がトンと突かれた。
「レードバッダーの後嗣の息子は幾つだ」
「…12となります」
未だ現役の侯爵の跡継ぎである彼、年齢を問われ嫌な汗を噴き出しながらも
己の長子レイモンの年を答えた。
「ふむ、それならば丁度良かろう。
其方は妻が有るなら至急離縁し、レードバッダー家よりホーヘルン伯爵家へ婿に行け。
其処な道化の婿として、ホーヘルン伯爵家を真っ当な貴族に相応しい家として立て直せ。
そしてその道化と両親は今後、王都に入るに及ばず、城に上がる事無用。
次代を拵え、領地を整えそれなりに成果を出してマトモなホーヘルン伯爵を育て上げる事が其方への罰としよう。
故に白い結婚だの浮気なんぞは許さぬからな、至急ホーヘルン家に入り領地へ親と嫁を連れて行くがいい」
副官君は責任を取らされて、自分ん家の次期当主の座を親父から代を飛ばして当主の孫である息子へ渡し
自身はアルバート君の婚約者予定だったキャロライナ嬢ん家の婿として、外交官の肩書きも王宮へ出仕する
宮廷貴族の立場も取り上げられた。
そしてホーヘルン伯爵一家は貴族としての体面を守れなかったと、当代夫妻は社交界永久追放と
当主の座を婿に渡しての隠棲、領地での蟄居。
入り婿を取ってホーヘルン伯爵家を存続させた妹チャンも、親と一緒に社交界追放と生涯領地での蟄居生活。
婚姻と実子の爵位継承は許されてるから寛大な処置と見られるだろう。
騎士が其々を取り囲んで会議室から退出させ、女王サマもお取り巻きを連れて部屋を出る際に
虚空に向かってニヤリと唇が笑いを浮かべた。
この処置によってホーヘルン伯爵家の爵位及び、領地をを王家の手元に引き寄せる一手になると
これからの実入りに期待しての笑いのようだった。




