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東京2038  作者: たくたく
第一章
6/18

交錯する思惑

芝浦埠頭――。

本来ならそこで包囲を完成させるはずだった。

だが、吉田の強引な急旋回によって計画は崩壊。

大型トラックは再び都心部へ逃走を始めていた。


「クソ……!」


黒いセダンの中で、荒木巧が低く吐き捨てる。


フロントガラス越しに見えるのは、逃走を続けるトラック。そしてその後方から迫る複数の警察車両。

状況は最悪だった。

無線から再び声が響く。


『荒木、作戦変更だ』


事務所の男の声は先ほどより緊張している。


『警視庁が本格介入してる。あいつら、この件を完全に横取りする気だ』

「……だろうな」

『とにかく警視庁の手には絶対渡すな』


無線の向こうで誰かが怒鳴っている声が聞こえる。


『どんな手を使ってでも金庫を奪い返せ!!』


短い沈黙。


荒木は前方のトラックを見据えた。


「分かってる……!」


その目つきが変わる。

今までの賞金狙いの追跡者ではない。

獲物を逃さない捕食者の目だった。


一方。


逃走トラック内部では、状況は急激に悪化していた。


「クソッ!」


今坂優斗がアサルトライフルの引き金を引く。


カチッ。


乾いた音だけが響いた。


「弾切れ!?」


彼は慌ててマガジンポーチを探る。


だが。


「……無い」


最後のマガジンだった。


狐面の戸川も青ざめる。


「こっちも残り少ない!!」


神崎玲子は舌打ちした。


ロケットランチャーを逆さにして確認する。


空。


「……終わった」

「え?」

「弾切れ☆」

「えぇぇぇ!?」


戸川が絶叫する。


「もうちょっと絶望感ある言い方してくださいよ!!」

「無いもんは無いのよ!!」


神崎が怒鳴り返す。


運転席の吉田和樹は汗を拭いながら前方を見る。


「まずいな……」


後方。


警視庁車両が確実に距離を詰めてきていた。

そしてそのさらに後ろには、まだ黒いセダンもいる。


「なんであいつまだ付いて来てんだよ……」


吉田が呟く。


その頃。

警視庁車両。

助手席に座る水野相馬は無線機を手に取っていた。


「こちら水野。目標トラックを確認。現在追跡継続中」


ノイズ。


そして本部から声が返る。


『了解』


わずかな間。


続いて低い声が聞こえた。


『東京保安庁の民間刑事に、絶対成果を奪われるなよ』


水野は一瞬だけ無言になる。


「……了解」


通信終了。


隣で運転していた伊藤勇作が鼻で笑った。


「やっぱ財閥絡みかね」


パトカーはサイレンを響かせながら加速する。


水野は窓の外を見つめた。


前方を走るトラック。


そのさらに奥。


黒いセダン。


「……そうだろうな」


財閥の機密資料。


東京保安庁の異常な執着。


警視庁上層部の焦り。


全部が繋がっていた。


伊藤が言う。


「ったく、俺ら警察なのか、財閥の私兵なのか分かんなくなるな」


水野は答えなかった。


ただ静かに前方を見据えていた。


その時だった。


前方の大型トラックが突然、大きく蛇行する。


「ッ!?」


吉田の怒鳴り声が聞こえる。


「ハンドルが――!!」


火花。


異音。


積み続けていた巨大金庫の重量に、ついに車体が耐えきれなくなり始めていた。


大型トラックが制御を失いながら、高速湾岸道路へ突っ込んでいく。


そしてその後方では――。


荒木巧が静かにアクセルを踏み込んでいた。

見てくださった皆様、本当にありがとうございますm(__)m

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