民間刑事・革命軍・警視庁2.5
港区・日の出埠頭。
海沿いの巨大倉庫群を、大型トラックが爆音を響かせながら走り抜けていく。
荷台の巨大金庫は固定具が半ば壊れ、激しく揺れていた。火花を散らしながら道路を削り、その後方を黒いセダンが執拗に追跡している。
運転席。
荒木巧は、前方のトラックを睨みながらハンドルを握っていた。
ここまで来る間に、民間側の追跡車両はほぼ壊滅。
残っているのは自分だけ。
それでも荒木は、確実に相手を追い込んでいた。
「……もう少しで芝浦埠頭か」
その時だった。
無線からノイズが走る。
『荒木、少し状況がまずくなってる』
聞き慣れた事務所の男の声。
荒木は片手で無線機を掴む。
「どうした」
『警視庁が動いてる可能性が高い』
「え...」
『23区全域で警察の動きが急激に活発化してる。検問も増えてる。どうやら本腰入れてきやがった』
荒木は無言になる。
嫌な予感がした。
警視庁と東京保安庁。
両組織は表向き協力関係だが、現場では縄張り争いが絶えない。
そこへ民間刑事まで混ざれば、状況は最悪になる。
「……面倒だな」
荒木が小さく呟いた、その直後だった。
前方。
芝浦埠頭へ続く交差点。
そこに――。
赤色灯。
何台ものパトカーが道路を封鎖していた。
「ッ!?」
荒木の目が見開かれる。
同時に、トラック側でも異変に気づいていた。
「前ぇぇぇぇ!!」
戸川が叫ぶ。
運転席の吉田和樹が舌打ちした。
「チッ、警視庁か!!」
交差点目前。
普通なら減速が必要な速度。
だが吉田はブレーキを踏まない。
「掴まってろ!!」
ハンドルを強引に切る。
大型トラックが悲鳴のようなタイヤ音を響かせ、交差点を急カーブ。
横転寸前の状態で右方向へ突っ込んだ。
荷台の金庫が大きく傾く。
「うわぁぁぁ!!」
今坂と戸川が悲鳴を上げる。
神崎は荷台へしがみつきながら怒鳴った。
「あんた運転荒すぎんのよ!!」
「今さら言うな!!」
トラックはなんとか横転を免れ、そのまま別ルートへ逃走を開始する。
後方。
荒木も即座に反応した。
「逃がすかッ!!」
黒いセダンが急旋回。
タイヤが白煙を上げながらトラックを追う。
だが、そのさらに後方から――。
ウゥゥゥゥゥン!!
新たなサイレン音が接近していた。
警視庁のパトカー三台。
赤色灯を回転させながら、猛スピードで追跡に加わる。
その先頭車両。
運転席では伊藤勇作がハンドルを握っていた。
「いたぞ!! トラック確認!!」
助手席。
水野相馬が冷静に前方を見据える。
「前にいる赤色灯の付いた黒いセダン……民間刑事か」
「保安庁側の犬かもしれねぇな」
伊藤が吐き捨てる。
だが水野は小さく首を振った。
「いや……単独でここまで追ってる」
水野の目が細くなる。
「明らかに普通じゃないだろ...」
前方では。
革命軍の大型トラック。
民間刑事・荒木巧。
そして警視庁。
三つの勢力が、深夜の芝浦エリアで激突しようとしていた。
その時。
神崎玲子が、トラック荷台から後方を見た。
「……増えたわね」
黒いセダン。
警視庁のパトカー群。
そしてさらに遠く。
別方向からも赤色灯が接近している。
東京全体が、この事件へ飲み込まれ始めていた。
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