民間刑事・革命軍2
新宿から始まった戦場は、すでに港区へと移っていた。
レインボーブリッジ方面へ続く幹線道路を、一台の大型トラックが猛スピードで突き進む。荷台には巨大金庫。車体は銃痕だらけで、片側のミラーは吹き飛び、火花を散らしながら走行していた。
その後方。
東京保安庁。
民間警備会社。
私設刑事事務所。
様々な勢力のセダン車が、トラックを取り囲むように追跡していた。
そして――
ダダダダダダダッ!!
荷台から無数の弾丸がばら撒かれる。
「保安庁の奴らだ!!」
運転席の吉田和樹が怒鳴る。
「しつこすぎるだろあいつら!!」
荷台では狐面の戸川和則が必死に拳銃を撃ち返していた。
「無理無理無理!! 数多すぎ!!」
その横で今坂優斗がアサルトライフルを乱射する。
薬莢が道路へ雨のように落ちていく。
だが。
「……は?」
今坂の表情が変わった。
「神崎さん!!」
彼は後方を指差した。
「あの黒いセダン乗ってるやつ何者ですか!?」
「一発も当たらないんですけど!?」
後方を走る一台の黒いセダン。
他の追跡車両よりも遥かに近い距離を維持しながら、弾幕の中を滑るように走っている。
左右へわずかに車体を振るだけで、飛来する弾丸を次々と回避していた。
運転席。
荒木巧は片手でハンドルを握りながら、静かに前方を見据えていた。
銃口の向き。
肩の動き。
発砲前の癖。
すべてを見ていた。
「右」
瞬間、車体を滑らせる。
弾丸が窓の横を通過。
「次、左上」
再び回避。
まるで撃たれる未来を先に見ているようだった。
トラック側では、神崎玲子が呆れた顔をしていた。
「うーん……」
数秒考え込む。
そして。
「私に言われても分かるわけないでしょ!!」
逆ギレした
「えぇぇ!?」
今坂が叫ぶ。
「リーダーでしょ!?」
「人材データベースじゃないの私は!!」
神崎は怒鳴り返しながら、再びロケットランチャーを構える。
一方その頃。
黒いセダンの車内。
荒木の無線からノイズ音が響く。
『荒木、状況は?』
「とりあえず港区まで追い込んだ」
荒木は前方を睨みながら答える。
「かなり暴れてる。民間側も結構やられてるな」
『よし、そのまま追跡を続けろ』
事務所の男が続ける。
『第2芝浦埠頭まで追い込んで確保するぞ』
「了解」
通信終了。
その瞬間。
荒木は視線を上げた。
トラック荷台。
こちらへ向いた複数の銃口。
次の瞬間。
ダダダダダダダダッ!!!
集中射撃。
だが荒木は即座にハンドルを切る。
セダンが車線を滑るように移動。
弾丸はボンネットを掠め、道路へ火花を散らす。
後方では別の民間刑事車両が直撃を受けていた。
車体が横転。
さらに別の一台がタイヤを撃ち抜かれ、ガードレールへ激突する。
炎上。
悲鳴。
無線の怒号。
『応援を寄越せ!!』
『撃たれた!!』
『クソッ、止まれ!!』
だが革命軍の火力は異常だった。
神崎の指示。
吉田の荒い運転。
若い二人の無差別射撃。
その連携によって追跡車両は次々と脱落していく。
そして――。
数分後。
港区の高層ビル街を走る車列の中で、なお追跡を続けていたのは。
ただ一台。
赤色灯を回しながら迫る、黒いセダンだけだった。
荷台の今坂が青ざめる。
「……まだ来てる」
戸川も振り返る。
「嘘だろ……」
神崎が目を細めた。
黒いセダン。
静かに距離を詰めてくる男。
荒木巧。
その目だけが、異様なほど冷たく光っていた。
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