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東京2038  作者: たくたく
第一章
3/18

警視庁1

東京都千代田区・霞が関。


昼間の官庁街には、重苦しい空気が漂っていた。

警視庁公安委員会庁舎――。


地下作戦室には、捜査一課、公安部、SAT関係者など、多数の刑事たちが集められていた。大型モニターには、新宿区で発生した銀行強盗事件の映像が映し出されている。


爆走する大型トラック。

炎上するパトカー。

歌舞伎町で発生した爆発。


室内には緊張と苛立ちが混ざった沈黙が広がっていた。

その中で、一人の若い刑事が静かに椅子へ座っていた。


水野相馬(みずのそうま)、23歳。


警視庁直属の若手刑事でありながら、冷静な判断力で頭角を現し始めている男だった。

隣では、相方の伊藤勇作(いとうゆうさく)が腕を組みながらモニターを睨んでいる。


「派手にやってくれたな……」


伊藤が小さく呟く。


その時。


作戦室の扉が開いた。


一斉に空気が引き締まる。


入ってきたのは、警視総監・荒川総悟(あらかわそうご)だった。


白髪混じりの髪に鋭い眼光。

都内警察組織の頂点に立つ男。


荒川はホワイトボード前へ立つと、周囲を見渡した。


「今日ここへ呼んだ理由は一つだ」


低い声が作戦室へ響く。


「二時間前、新宿区で発生した銀行強盗事件。犯人グループは大型金庫をそのままトラックへ積載し逃走した」


モニターに金庫の画像が映る。

通常なら運搬だけで数日かかる代物だった。


「現在も都内を逃走中。足取りは断続的に確認されているが、居場所は確定できていない」


荒川は続ける。


「本来なら東京保安庁との共同作戦を実施したかった」


その瞬間。

室内の空気がわずかに淀む。

誰も口にはしない。

だが全員が理解していた。

警視庁と東京保安庁は、もはや表向きだけの協力関係に過ぎない。


縄張り争い。

捜査権問題。

財閥との癒着疑惑。


両組織の対立は年々激化していた。

荒川は静かに言う。


「……現状、それはほぼ不可能だろう」


誰も反論しなかった。


そして警視総監は、ホワイトボードへ四人の顔写真を映し出す。


「今回の主犯は、都内唯一の女性A級指名手配犯――神崎玲子」


神崎の写真。


爆発事件、武器密輸、企業襲撃。

数々の凶悪犯罪歴が並んでいる。


「そして吉田和樹」


続いて表示された男は、荒っぽい笑みを浮かべていた。


「さらに、この二名に協力している若年メンバー」


「戸川和則」


「今坂優斗」


二人ともまだ学生だった。


「彼らは既に歌舞伎町周辺でタンクローリーを爆破。民間人に多数の死傷者を出し、警察車両五台を破壊している」


作戦室の空気がさらに重くなる。

荒川警視総監は全員を見渡した。


「これ以上、暴れさせるな」


短い言葉だった。

だが、それだけで十分だった。


「以上だ」


警視総監はそのまま部屋を後にする。

すると同時に、刑事たちが一斉に立ち上がった。


怒号。

無線音。

足音。


作戦室は一瞬で慌ただしくなる。

水野も静かに立ち上がった。


伊藤が隣で言う。


「嫌な予感しかしねぇな」


「いつものことだろ」


水野は短く返した。

だがその表情は硬い。


数十分後――。


警視庁捜査一課。

新たな情報が飛び込む。


「犯人グループ、港区方面へ移動中!」


「民間刑事事務所の連中と交戦してるらしい!」


オペレーターの声がフロアへ響く。

直後、無線が都内各所へ一斉送信された。


『警視庁本部から各局。現在、銀行強盗犯車両は港区にて移動中。武装済み。各員注意しろ』


東京中でサイレンが鳴り響く。

首都高速入口では封鎖が始まり、区境では検問が設置されていく。

街全体が戦場へ変わり始めていた。


水野と伊藤は急いでパトカーへ乗り込む。


エンジン始動

赤色灯点灯

伊藤がアクセルを踏み込む。


「港区だ。飛ばすぞ」

「了解」


パトカーは霞が関を飛び出し、高層ビル群の光る東京へ加速していった。

見てくださった皆様、本当にありがとうございますm(__)m

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