革命軍1
新宿区・歌舞伎町付近
眠らない歓楽街を、巨大なエンジン音が切り裂いていた。
「どけぇぇぇッ!!」
装甲補強された大型トラックが、車列を強引に押しのけながら市ヶ谷方面へ暴走する。荷台には異様な存在感を放つ大型金庫。その後方では、何台ものパトカーが赤色灯を激しく点滅させながら追跡していた。
『そこのトラック!!今すぐ止まりなさい!!』
拡声器の警告など誰も聞いていない。
次の瞬間――
ダダダダダダッ!!
荷台から激しい銃声が響く。
掲載車両へ向けて拳銃を乱射していたのは、狐の仮面を被った細身の男だった。道路脇のネオンが仮面を妖しく照らしている。
「ちょっと吉田先輩!!」
男は振り返り、運転席へ向かって叫んだ。
「やっぱ金庫ごと奪うの無理あったんじゃないっすか!?」
その声は、サイレンと銃声にかき消されそうになりながらも運転席へ届く。
ハンドルを握る男――吉田和樹、25歳。
短く刈った髪に鋭い目つき。だがその表情は妙に楽しそうだった。
「しょうがねぇだろ!!」
吉田は後方を確認しながら怒鳴り返す。
「うちは慢性的な人手不足なんだから!!」
「それ理由になります!?」
その横で、荷台後方から身を乗り出していた若い男がアサルトライフルを乱射していた。
「神崎さんも何とか言ってくださいよ!!」
銃口の火花が昼の乾いた道路を照らす。
すると、巨大金庫の上によじ登っていた一人の女が顔を出した。
神崎玲子、24歳。
黒いジャケットを羽織り、両手でロケットランチャーを重々しく抱えている。
「文句言ってたらぁ……」
神崎は不敵に笑った。
「今月の給料、半分にしちゃうぞぉ?」
「ブラック組織すぎる!!」
狐面の男が叫ぶ。
その瞬間。
神崎は道路脇へ視線を向けた。
「――そこ」
トリガーを引く。
ドォンッ!!!!
発射されたロケット弾が一直線に飛翔し、近くを走行していたガソリン輸送トラックへ命中した。
次の瞬間――
轟音
爆炎
衝撃波
巨大な火柱が青梅街道を飲み込み、後続車両が次々と急停止する。パトカー数台が横転し、道路は炎の壁に遮断された。
『うわぁぁぁぁ!!』
『車両が破壊された!』
無線の怒号が響く中、革命軍のトラックだけが爆炎の先へ走り抜けていく。
神崎はロケットランチャーを肩に担ぎながら、ひらりと金庫から飛び降りた。
「これで振り切ったも同然ね」
運転席から吉田の声が飛ぶ。
「神崎!! ナイス!!」
「……」
神崎の額に青筋が浮かぶ。
「あんたねぇ!!」
彼女は運転席へ向かって怒鳴った。
「もうちょっとコンパクトなルート無かったの!?」
「最短ルート選んだ結果だ!!」
「被害総額いくらになると思ってんのよ!?」
「知らん!! 経費だ経費!!」
「絶対違うでしょ!!」
車内に怒鳴り声が響く。
だが、その直後。
後方から再びエンジン音が聞こえた。
しかも一台ではない。
「……え?」
狐面の男が後ろを見る。
炎の向こう側。
燃え上がる車両を強引に突っ切り、一台の黒いセダンがこちらへ向かって加速してきていた。
赤色灯を点滅させながら。
「……マジかよ」
吉田の顔から笑みが消える。
そして無線から、静かな男の声が響いた。
『そこのトラック。楽しいドライブは終わりだ』
黒いセダンのハンドルを握っていたのは――
荒木巧だった。
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