堂田財閥・自警団3
荒木巧と警視庁による激しいカーチェイスが首都高速で続くその頃――。
堂田財閥は、築地市場から盗まれた“資料”の捜索に総力を挙げていた。
東京都中央区
堂田財閥本社ビル
超高層ビル内部では、すでに異常事態とも言える空気が流れていた
オフィスフロア
大量のモニター
鳴り止まない電話
そして飛び交う怒号で包まれていた
「まだ追跡情報は掴めないのか!?」
「防犯システム解析班はどうした!!」
「再開発契約企業への説明資料を急げ!!」
職員たちは休む暇もなく動き続けていた。
ホールディングス傘下企業。
再開発契約先。
関連自治体。
各地から問い合わせが殺到していた
もし流出資料の内容が外部へ渡れば――
堂田財閥だけでは済まない
東京経済そのものを揺るがしかねない
その混乱の中心に、田中龍平もいた。
情報管理部オフィス。
デスク上には空になった缶コーヒーが並び、資料が山積みになっている。
その時も。
プルルルルル――。
電話が鳴る。
田中は疲れ切った表情のまま受話器を取った。
「……はい、堂田財閥情報管理部です」
『例の資料流出って本当なんですか!?』
『うちの契約内容も入ってるんでしょう!?』
また同じ内容だった。
田中は目を閉じる。
「現在調査中です」
「外部流出は確認されていません」
『本当に信用していいんでしょうね!?』
ガチャッ。
通話終了。
その直後、また別の電話が鳴る。
田中は額を押さえた。
彼はすでに六時間以上、ほぼ休みなしで対応を続けていた。
疲労は限界に近い。
「……最悪だな」
そう呟いた時だった。
オフィス奥の大型モニターへ、新しい通知が表示される。
《東京自警団活動範囲拡大確認》
《横浜方面監視強化推奨》
田中の目が細くなる。
「……自警団か」
一方その頃――。
神奈川県横浜市中区野毛町二丁目。
そこは、表向きには普通の下町だった。
古い住宅街。
小さな商店街。
飲み屋街。
しかし実際は違う
この町一帯は、東京自警団によって管理されている“セーフゾーン”だった。
街角には監視カメラ
見張り役
改修中の建物
一見すると工事現場だが、その内部には。
武器庫。
金庫室。
通信室。
作戦司令部。
東京自警団中央本部が存在していた
そして、その近くにある小さな居酒屋
暖簾をくぐった店内では、煙草の煙と焼き鳥の匂いが漂っている
カウンター席
そこには見覚えのある六人が座っていた。
井上宗平
和田修一
飯田順平
村上新之助
渡辺小百合
村上直美
築地市場襲撃を成功させた東京自警団第4部隊だった。
テーブルには大量の串料理と酒瓶。
飯田がジョッキを持ちながら笑う。
「いやぁ〜、さすがに今回は死ぬかと思ったわ」
和田も苦笑する。
「ドローン班がいなかったら終わってたな」
渡辺は枝豆を食べながら言う。
「でも、あそこまで財閥が慌てるとは思わなかった」
井上は静かに酒を飲みながら答えた。
「……それだけ価値のある資料だったってことだ」
村上新之助が周囲を確認する。
「本当に大丈夫なんすか?」
「こんな普通に飲んでて」
村上直美は笑った。
「野毛町だよ?」
「財閥も警視庁も、簡単には手を出せない場所なんだから」
その時だった。
店の奥に置かれていたテレビ画面へ速報が流れる。
《警視庁、中央警察署からの逃走事件を発表》
《民間刑事関係者が逃走中》
《首都高で追跡継続か》
画面には
高速道路を走る複数のパトカー映像。
そして一瞬だけ映った黒い偽装パトカー。
渡辺が目を見開く。
「あれ……」
飯田も気づく。
「この前の民間刑事じゃね?」
井上は静かに画面を見る。
荒木巧
井上は何も言わずただテレビの画面をじっと見つめていた。




