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東京2038  作者: たくたく
第一章
16/18

民間刑事・警視庁5.2

首都高速都心環状線。

昼間の東京。

だが、その空気は完全に異常だった。


ウゥゥゥゥゥゥ――――!!


無数のサイレン音。

一般車両が次々と車線変更し、道路脇へ避けていく。

その先頭を走っていたのは――。


一台のパトカー。


だが本物ではない。

中央警察署から奪取した偽装車両。

運転席には荒木巧。

助手席には白石真帆。


白石はシートを掴みながら叫ぶ。


「ちょっ、ちょっと速すぎるって!!」


荒木は前方を睨みながら答える。


「今は捕まる方がまずい!!」


スピードメーターはすでに限界近い数字を叩き出していた。


後方。


四台の警視庁パトカーが猛追している。

その先頭車両。

運転しているのは伊藤勇作。

助手席では水野相馬が無線を握っていた。


『対象車両は都心環状線外回りへ侵入!』


『各車両、包囲しろ!!』


伊藤が前方を見る。


「見えたぞ!!」


遠く前方。


偽装パトカーが車両の隙間を縫うように走っている。


伊藤はアクセルを踏み込む。


「逃がすかよ……!」


一方。


荒木はバックミラーを見る。


「しつこいな……!」


白石は震えながら後ろを見る。


「警視庁ブチギレてんじゃん!!」

「まぁ警察署襲撃して人攫ったようなもんだからな」

「軽く言わないで!?」


荒木は一気にハンドルを切る。


タイヤが悲鳴を上げる。


キキィィィィィ!!


一般車両の間をギリギリで突破。

後方では警察車両も同じように突っ込んでくる。

水野は荒木の運転を見ながら低く呟いた。


「……異常だな」


伊藤が聞き返す。


「何がだ?」


「あの運転技術」


水野は険しい目で前方を見る。


「一般の民間刑事レベルじゃない」


荒木は再び車線変更。


大型トラックの横を数センチ差で抜ける。


白石が悲鳴を上げる。


「ひぃぃぃぃっ!!」

「舌噛むなよ」

「そんな冷静になれないから!!」


その時。

前方道路情報表示板が切り替わる。


《前方・検問実施中》


荒木の目が細くなる。


「……来たか」


白石が青ざめる。


「え?」


数百メートル先

高速出口付近

既に警察車両がバリケードを形成していた


「終わった!?」

「いや、まだだ」


荒木は即座に判断する。


右手でハンドル。


左手でダッシュボードを開く。


そこから取り出したのは、小型発煙弾。


白石が目を見開く。


「え、何それ」

「保険」

「民間刑事って何だっけ?!」


荒木は発煙弾の安全ピンを抜く。


そして窓を開け――。


後方へ投げた。


次の瞬間。


ボンッ!!


大量の白煙が高速道路を覆う。


「うおっ!?」


後方の警察車両が急減速。


視界が一気に消える。


伊藤がハンドルを握り直す。


「煙幕だと!?」


水野は即座に無線を掴む。


『全車注意!!』

『対象、煙幕使用!!』


クラクションと急ブレーキ音が鳴り響く中


その隙に荒木は出口分岐へ突っ込む。


白石が叫ぶ。


「曲がるの!?」

「舌噛むなって言っただろ!!」


ドリフト気味に急旋回

タイヤが火花を散らす


偽装パトカーはギリギリで分岐へ侵入した。

その瞬間。


煙幕を抜けた水野がそれを見る。

「ッ!!」


伊藤が叫ぶ。

「分岐行ったぞ!!」


水野は即断する。

「追え!!」


警察車両が一斉に進路を変更した。

荒木はバックミラーを見る。

後方の警察車両は煙幕の影響で多少距離が開いていた。


「……今のうちか」


荒木は片手でハンドルを押さえながら、無線機を取った。


ザザッ――。


「こちら、荒木。聞こえるか?」


数秒後。

無線にノイズが走り、聞き慣れた声が返ってくる。


『荒木!!』


『生きてたか!!』


後藤優斗の声だった。

荒木は苦笑混じりに返す。


「死ぬわけないだろ!!」


白石は横で、


「十分死にそうだったけど!?」


と小さく突っ込んだ。

しかし後藤はすぐ本題へ戻る。


『荒木、今どこにいる?』


荒木は前方道路を睨みながら答える。


「千代田区の首都高分岐を抜けた」

「今は港区方面へ向かってる」

「多分あと10分くらいで着く」


無線の向こうで後藤が少し安堵したように息を吐く。


『……そうか』


『なら急げ』


『この辺りでも警察の巡回が増え始めてる』


『どうやら警視庁が本気で動いてる』


荒木は小さく舌打ちする。


「だろうな」

「中央警察署から人連れ出したんだから」


後藤は低い声で続けた。


『しかも今回はお前だけじゃない』

『白石ちゃんまで関わった』

『もう警視庁も引けなくなってる』


荒木は一瞬だけ助手席を見る。

白石は不安そうに窓の外を見ていた。

荒木は静かに答える。


「……分かってるよ」

「白石も無事だ」


その言葉を聞き、後藤は少しだけ安心したように笑った。


『ならいい』

『とにかく戻って来い』

『これ以上面倒事が増える前にな』

「了解」


ブツッ――。

通信終了。

車内に再びエンジン音だけが響く。

白石は小さく息を吐いた。


「……ごめん」


荒木は前を見たまま聞き返す。


「何が?」

「私のせいで……」

「警視庁に追われることになったんじゃん」


荒木は少し黙る。


そして短く笑った。


「今さらだろ」

「俺、元々まともな側の人間じゃないし」


白石は少し呆れた顔をする。


「そういう問題かなぁ……」


一方――

分岐に入ってから荒木を見失った警察らは


「そう遠くに入ってないはずだ」

「首都高で巡回している高速隊にも協力を要請するんだ!」


と水野がスマホで本部へ伝えると通話を切った。

すると伊藤が呟き、


「あの運転技術だ。もうかなり遠くに行っちまったかもしれんぞ...」


そう真っすぐ前を見ながら運転しながら言うと、

水野はさっきよりかは少し落ち着いていて


「また取り逃がしちまったな...」


とサイドミラーを見ながら言った。

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