自警団2
首都高速湾岸線。
東京湾沿いを、一台の大型トラックが静かに走っていた。
外見だけ見れば、どこにでもいる物流車両。
だが、その内部には。
堂田財閥を揺るがしかねない資料を盗み出した“東京自警団第4部隊”の姿があった。
運転席。
ハンドルを握る井上宗平が、前方の道路を見据えている。
助手席には和田修一。
後部荷台では、飯田順平、村上新之助、渡辺小百合、村上直美の四人が、奪取した資料をコンテナケースから次々と取り出していた。
荷台の天井灯だけが薄暗く揺れている。
飯田が笑いながら言った。
「いやぁ、それにしても……」
「よく成功したよな、あの作戦」
村上新之助も苦笑する。
「ほんとですよ」
「財閥の市場施設なんて、絶対要塞化されてると思ってましたし」
すると渡辺小百合が資料をめくりながら口を開く。
「まさか改造ドローン一機で突破できるとはね」
「しかも数分で終わったし」
助手席の和田がニヤリと笑った。
「だから言っただろ?」
「義手をドローンに付けたの正解だったって」
井上も小さく笑う。
「正直、俺も成功すると思ってなかった」
今回の作戦。
飯田が改造した小型ドローンへ、簡易人工義手を搭載。
狭い通気ダクトから侵入し、防犯システムへ電子妨害をかけた上で、内部ロックを遠隔解除。
そのまま資料だけをピンポイントで奪取した。
普通の犯罪者では到底不可能な作戦だった。
その時。
無線からノイズが走る。
ザザッ――。
和田が無線機を取る。
「こちら和田」
だが聞こえてきたのは、荷台にいる飯田の声だった。
『ちょっと待ってください』
『……やばいの見つけたかもしれない』
空気が変わる。
井上がバックミラー越しに後ろを見る。
「何があった?」
荷台では、飯田が一枚の資料を見つめていた。
その顔から笑みが消えている。
「これ……かなり重要だぞ」
村上直美も資料を覗き込み、目を細めた。
「再開発資料……?」
飯田は頷く。
「過去の再開発地域一覧だ」
「投入金額、土地取得費、政治献金、工事契約先……全部書かれてる」
井上の表情が険しくなる。
「...その資料の内容について詳しく教えろ」
飯田はメモ帳を取り出し、内容を整理しながら言った。
「まず、堂田財閥が過去に行ってきた再開発について詳細記録されてる」
「予算規模、裏契約金額、自治体側との交渉履歴まである」
だが飯田はさらに続けた。
「問題は...このホッチキスで止められたもう一つの資料だ」
荷台の空気が静まり返る。
「資料の右下に、承認印が二つ押されてる」
井上の目が細くなる。
「誰だ」
飯田はゆっくり答えた。
「一つは、堂田財閥社長――堂田末広」
その名前だけでも十分危険だった。
だが。
飯田はさらに低い声で続ける。
「もう一つが……」
資料を見つめる。
「財務大臣・松田修三」
その瞬間。
トラック内部の空気が完全に変わった。
誰もすぐには言葉を出せなかった。
国家中枢。
つまり
堂田財閥の再開発には、日本政府そのものが関与している可能性がある。
井上が静かに呟く。
「……国家規模かよ」
和田が顔をしかめる。
「これ公開したら、日本経済はどうなるんだか...」
渡辺も険しい顔になる。
「だから財閥があそこまで必死だったのね……」
飯田は資料をペラペラとめくった
「しかも、これまだ一部だ」
「他にも暗号化されたデータ媒体がある」
井上は、それを聞いていると
「早めに本隊と合流して、この情報をすぐに保管しよう」
そう言ってトラックは首都高を走り去っていったが
空では財閥直属部隊のヘリや攻撃ドローンが飛び交っていた。




