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ミチアナ  作者: Hekuto


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第3話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



 体が少し軽くなった感覚と共に、層間移動用エレベータが止まる。


<7階層です。降りる際は足下にお気をつけください>


 複数ある扉が開くと同時に人の波が動き出し、その流れに身をゆだねれば、あっと言う間にエレベータホームから押し出されてしまう。そのまま流れに任せて歩を進めれば、そこは2層より少し明るく開放的な七層のシャフト前、まっすぐ歩けばすぐにダンジョン広場に出られる。


「ラウンジは、いいか」


 ホームから出たら、またしばらく歩かなければいけないくらいにダンジョン広場は広いが、ダンジョン自体はそれに負けず劣らず、遠くからでもわかるほど大きい。今日もゴツゴツとした岩肌が見える。この辺りのブロックは特殊なブロックで他より大きく見通しが良い、そんな見通しが良いダンジョン周辺に点在しているのはフリーラウンジ。


 椅子とテーブルとパラソルと言う、何とも簡素なスペースを利用することはそれなりにあるけど、お金がかかる利用は滅多にしない。大体は無料のドリンクを飲んで少し休憩するくらいだ。ブラックエレベータの後なんかはよく利用するけど、周囲もそういう時は疲れた表情で椅子に座る人が多い気がする。金がかかる有料席もあるが、そっちは使った事がない。


「受付さんおはよう」


 そんなフリーラウンジを横目に向かうのは、簡単な仕切りしかない円形の受付エリア、その個室ブース内。そこには通称で受付さんと呼ばれる、高度AIのロードメイカー案内受付職員が、ホログラフィの中で微笑んでいる。


 正直なとこ普通の人にしか見えないが、普通の人より頭が良いAIさんだ。この巨大な移民船を運用する上で絶対に必要な人材だと言っていい。人の手だけじゃ移民船の運用は不可能だと言われているので、怒らせない方が良いと俺は思っている。


<穴見様、おはようございます。お休みは十分にとれましたか?>


「いやぁゴロゴロしてばかりで、休んだ気がしなかったかなぁ」


 穴見ふしみ、それが親から貰った苗字である。ちなみに名前は冬道ふゆみちと言うが、これは誰が付けてくれた名前か知らない。そういう情報はデータベースに残ってないのだ。


 俺の返答に、受付さんはいつもと同じように迎えてくれるが、その表情はよく変わる。そして最後には困った様に微笑む。現実の女性は俺にこんな表情を見せてくれることはない。もう俺、女性は受付さんだけでいい気がしてきた。社長関連の事を思い出していたから余計にそう思うのだろうか。


<そうですか……余裕があるなら、次回の休日は8層などに足を延ばしてみてはいかがですか? 美術館などの割引チケットをご用意できますよ?>


 8層は娯楽施設が集められた階層である。生産施設が多く集められた七層とは空気のにおいからして違うし、中央シャフト辺りなんかは本物の芸術品が飾られていたり、さらに前方のエリアでは、若き芸術家の卵がうんぬんかんぬん、そんな宣伝がされる場所だ。


「あんまり興味ないかなぁ? それより今日の安全確認がしたいんだけど」


 正直興味がない。せいぜい行ったとしてもメダルゲームで一日中ダラダラ出来るコインパーク系の店くらいだ。でもああいう場所はいつも同じ人がいる感じがして空気も悪く、最近は近付きもしていない。最後に8層に行ったのなんて……前職の時代だな。


 そんな事より安全確認、毎回入ダン前ここに来てるのはダンジョン内の安全確認のためだ。初心者の頃、右も左も分からず一から十まで受付さんに質問していたころからの習慣だが、受付さんも良い事だと肯定してくれるので、今更変えるつもりがない習慣の一つと言える。


 ……急いでいるとたまに忘れはするけどね。


<わかりました。比較的安定しているのはA区画です。1層から5層まで特に問題は出ていません。D区画は減衰期の様ですのでお気をつけください。そのほか低層において目立った異常は見られませんが、ダンジョン全体の空間安定値に変動が見られますのでご注意ください>


 ダンジョンは、大きな岩に開いた洞窟のような通路をまっすぐ抜けた先にある。


 ゴツゴツとした自然を感じる岩壁や天井を見上げながら、それとは逆に綺麗に舗装されたコンクリートの床を歩いて抜けた先は別世界。文字通り世界が違う。岩自体は百メートル四方の岩塊でしかないけど、中はこの船より広い世界が360度に広がっている。


 とは言え一層は歩いて端まで行ける程度の広さで、中央の出入り口から周囲を4分割した一区画をA区画やA地区と呼んでいるだけだ。A地区一層、この辺は地球側の一層と同様にダンジョンの中で最も安全な場所である。でも変動した場合はそうとも言えない。


「変動か、地形変動するかな?」


<低層での変動はないものと思われますが、最前線でスライムが確認されていますので、その影響だと思われます。低層での活動であれば問題ないでしょう>


 ダンジョンの常識として、ダンジョンは生き物であり常に形を変えていると言う話があるが、その形が変わる事を地形変動と言って、良くわからない装置でその変動する確率を毎日計測するのは、ダンジョン庁のお仕事である。


 目の前で笑みを浮かべている受付さんは、そんなダンジョン庁のローカー支援局の所属だそうだ。とは言え、人の手を離れたと言ってもいい彼女達AIにとって、所属と言うのはあまり関係ないのかもしれないと、どこかの陰謀論掲示板の人は言っていた。


 人より優秀な彼女達が問題ないというのだから、信じて問題ないだろう。


「わか「おい! どういうことだよ! なんで買い取り額が前回より下がってんだよ!!」……」


<困りましたね>


 びっくりした。


 支援局のダンジョン前支部の受付は半個室化しているので、普通に話していても隣の声が聞こえて来るなんてことはない。それにもかかわらず突き抜けて来たって事は、相当大きな声で怒鳴ったのだろう。もしかしたら飯屋の店主と同じ声量系のスキル持ちだろうか? 意外と似たようなスキルを持っている人は多いという事か。


「お前じゃダメだ! おい! そっちの受付変われ! ……なんだ低級かよ、さっさとどけ!! 俺は中級だぞ!」


 バイザーデバイスを付けた人型モンスターが、怒鳴りながらこっちのスペースに乱入してきたんですが? 隣だったのか、そりゃ聞こえてくるわけだ。しかし中級だからと言ってこんな横暴許されるわけがない。と言うか、受付さんは個室ごとで何か対応が変わることないだろうに……。得た情報は常に統合並列化してるらしいから、AIである受付さんの見た目が違っても、中身の判断基準はほぼ同一人物と言っていいはずだ。


<受付業務を乱さないでください>

「うるせえAI野郎! さっさと査定しろ!」


 受付さんの声にかぶせるように叫ぶ自称中級の口が臭い。一人であれば広い受付個室も二人も人が居れば臭い。てかマジで酒臭い。飲んでんのか? それとも体臭なのか、聞くことは聞いたしさっさと退散しよう。


 マナーやらルールやら言いたいことは山ほどあるが、こんな野生動物に何か言っても理解出来ないだろうからな。でも受付さんは悪くないので小さく手を振っておこう。


「それじゃ、失礼します」


「おら! ベリーの査定だ早くしろ!!」


<……了解しました>


 小さくこちらに会釈をしてくれた受付さんが、見たことも無い表情で中級男に返事を返す。こういう糞みたいな人種が多いもんで、ローカーの受付は基本全対応AIである。人だったら絶対問題が毎日発生するだろうな。


 それにしてもあんな表情、初めて見たな。これまで笑ったり困った顔した受付さんしか見たこと無いから、あんな害虫を見るような目は新鮮である。あんな目で見られた日には、新しい扉が開かれる前に心が折れそうだ。


「中級のベリー業者か、ガラ悪いなぁ? どこの会社の社員だろう?」


 外に出れば清々しい空気、あの酒くさ中級はベリーだと言っていたから十中八九企業ローカーだろうな、あそこまでガラが悪い人間を雇用してるなら、クレームを入れても意味がないだろう。


 結構離れたと思うのにまだ怒鳴り声が聞こえてくるので振り返ってみたら、受付の周りに同じような装備の団体が集まって叫んでいる。


「なにあれうるさ」


「あれってGHグループじゃない?」


「マジ? 絡まれたらやだし受付変えよう」


「マジそれ」


 周囲の人間もその光景を見て迷惑そうに話しているが、なるほど確かに、クレームを入れてもダメな企業だ。ゴールデンフードグループの傘下企業では終わっている。


「ゴールデンフードか、俺も近付かないようにしないと、俺の敵だからな」


 なんせ俺の前職失業の元凶であり、目的のためならどんな事でもする悪徳企業である。そのくせ幹部連中は全員上級国民で警察も真面に動かない。これだから閉鎖環境ってのは嫌になるよ。


「上もアレなら下もアレなんだな、あの会社」


 過剰香水ババァの下は酒くさ野郎なんだから、お似合いである。あの見た目の装備を付けた連中には近づかないようにしないと。なんで肩にスパイクパッドが付いてるか知らんけど、なんか強い装備なんだろうか。


「ダンジョン確認ヨシ。いつも通りの岩、色も変化なし、問題なさそうだな」


 小走りでその場から離れてやってきました俺の職場、今日も特に異常なし。これも受付さんから教えてもらった確認の一つ、何かダンジョン何に問題があると、この岩の見た目も少し変わるそうで、何をしても破壊できない岩塊であるダンジョンが変質してる時は、あまり入らない方が良いらしい。


<ダンジョンカードをかざしてください>


「はい」


 特に列も無くばらばらとダンジョンに入る同業者を見回しながら、俺もダンジョンに入るとすぐにポール型のドローンがやってくるので、スマホでその頭を軽く撫でる。


<……確認しました。データ問題なし。穴見冬道様の進む道に幸多からんことを>


「ありがとう」


 ただの認証と定型文ではあるが、俺はこの見送りが好きである。ついついポールドローンの頭を撫でるくらいには好きだ。頭を撫でるとポールのディスプレイが、ニコニコマークになるので、それを見たさに撫でる人は少なくないと思う。


 たぶん、きっと、少なくないはずだ。


 ん? ドローンのモーター音が頭上から聞こえる。いつもより少し多いように感じるけど、そうか、不安定とか言ってたからそれかな。気を付けないと。



 いかがでしたでしょうか?


 街に出ればどこにでもAIが居る社会。現実ではいつ頃になるのか、それともすでに……。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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