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ミチアナ  作者: Hekuto


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第2話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



 朝5時、とても静かな部屋で目を覚ましてシャワーを浴びて準備運動。これが仕事の日のルーティンと言うやつだ。二年もやってれば何も考えずとも体が動く。


「バックパック、水、採取ボトル、収穫バック、空き、ヨシ! ダンジョンカード、ヨシ!」


 まったくよろしくない。


 いつもより空きスペースが広いバックパック、本来なら居れているはずの栄養バーがないという事は、お昼ご飯は抜きという事だ。昼前で仕事を終わらせるか、空腹と戦うか、その二択しかない。


「ロッド、煙玉、匂玉、デコイ花火、ヨシ!」


 左腰を叩けば、滅多に使う事がないスパイク付きの木の棒が頼りなさげに揺れ、右の太ももを叩けば専用ケースに入った煙玉と匂い玉、それにしっかり固定されたデコイ花火。擦るだけで火が付き後は投げるだけと簡単なローカーの便利グッズで、独特のにおいと色付きの煙が大量に出る煙玉と、異臭で嗅覚を麻痺させる匂い玉、それにかんしゃく玉や爆竹と言った破裂する花火を参考にして作られたらしいデコイ花火。


 花火なんて使った事は片手で足りる程度、なにせモンスターを狩る事がほぼないのだから、使う場面にそもそも遭遇しない。


「服装はたぶんヨシ! 帽子、クリップ、ヨシ!」


 軍でも使う防刃繊維のフィールドジャケットにパンツ、街で見かけたらミリオタを疑われる格好であるが、ダンジョンの低層ならこれで十分。中級ローカーにもなると、もっとこだわりの装備や、ダンジョン装備で身を固めるので、ローカーの間では初心者装備とも言われている。


 なので、低級ローカーでも早々に変える人間が多く、ずっとこの服のままの俺が見下される原因の一つとも言えるだろう。でもお金がないから仕方がない。


「部屋の状態……ヨシ」


 深めに被れる短いつば付き帽子の位置を調整しつつ見渡す部屋には物が少ない。物が少ないので見るのは鍵くらいなものだ。ただ最近ちょっと散らかっている。見ないようにした一画にチラリと目を向ければ、積み上げられた支給品用の段ボール箱、そろそろ片付けないといけないだろう。


「何食べようかな」


 今は考える事ではないので、ゴミの事なんて忘れて朝ごはんに想いを馳せる。選択肢なんて大してないけど、30円ならかけ蕎麦一択だが42円なら少し選択肢が広がるのだ。





 家を出て歩くこと十分ほどでシャフトエリアに到着、この辺りまで出てくると街も随分賑わってくる。居住エリアでもシャフトから遠くなると店と言うものが無くなるので、聞こえてくる音が全く違う。


 一本のシャフトで一層24ブロックを支え、そんなシャフトを何百本と使って、何千メートルと言う長さの船体を支えている。横も長く高さは程々の平べったい形の宇宙船を維持するメインエネルギー源は、これから向かうダンジョン。


<超長距離移民船フジ、本日の気候設定は快晴、洗浄予定なし>


 それが俺の住む “フジ” と言う船であり街である。


 今日は洗浄予定がない快晴の日とあって、見上げるブロックの天井照明から注ぐ光からは少し熱を感じた。今はまだ冬季管制が終わり春季管制が始まったばかりでわりと涼しい、これからどんどん温かくなってくるだろう。


 夏管制が始まる前に新しい服が欲しいところだ。


<こちらは491シャフト、利用状況イエロー、安全に配慮し落ち着いてご利用ください>


 シャフトの大型エレベータの混雑状況はほどほどか、混みそうなら一度七層に上がってから店を探さないといけないけど、七層の店は高いんだよな。これくらいの混み具合なら、いつもの定食屋に寄ったほうがいい。


 食後の満員エレベータはきついとはいえ、まだイエローなら問題ない。流石にレッドになったら無理だし、ブラックなんか乗ったら潰されて食べたものを無理やり押し出されかねん。


「いらっしゃーい! 好きな席にどうぞ!」


 店に入るとおじさんの元気な声が聞こえてくる。ここの店主は無駄に元氣が良いというか、よくあんな奥の厨房から入り口まで声が届くものだ。声帯系のスキルでも持っているのだろうかと毎回考えてしまう。


「さて何を食べるか」


「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」


 席の半分くらいが埋まる店内の奥に入り、いつもと変わらぬカウンターに座れば、いつも通り機械的な声の定型文と共に、木目調のテーブルにメニューが表示される。 “本日のおすすめ” やら “シーズン限定” の文字が言葉通りに踊っているが、そんなものは無視して端っこの小さな表示をつつく。


 大きくなった表示に並ぶのは比較的安いメニュー表、蕎麦だけでも十種類にその他のメニューも含めれば結構な量だ。それだけメニューがあって毎月新商品が出ても、ここはおじさん一人で経営出来ている。


「蕎麦なら少し余るけど、しっかりめで行きたいから……40円、おまえだな、カツ丼」


 現代社会のフードマシンに感謝しつつ、今日の朝ごはんは40円のカツ丼に決定。確認ボタンを押せば表示が支払い画面に変わるので、ジャケットの内ポケットに入れているスマホを取り出す。


 取り出す時に少し引っかかるがしょうがない。なにせ使っている機種がローカー用のゴツイシリーズだし、世代も少し古いのでどうしても嵩張ってしまう。でもその分とても丈夫で使いやすくもあるので変える気はない。……金がないとも言う。


「お支払用カードをかざしてください……ダンジョンカード確認、入金処理完了。もうしばらくお待ちください」


 テーブルの上にスマホを置けば、スマホカバーに差し込んでいるダンジョンカード経由で財布から支払いが行われる。これで所持金は2円、今日頑張らないともう食べ物がない。定期支給はもう少し先なので、餓死の危機である。


 そんながけっぷちでカツ丼を来るのを待っていると、おじさんが厨房の奥から出て来た。


「よう兄ちゃん! カツ丼なんて珍しいじゃねぇか」


 蓋の無いメラミンのどんぶりから頭を出すカツ丼に視線を奪われながら、飯屋のおじさんに返事を返す。どんぶりと一緒に七味などの薬味も出してくれるおじさんは、妙にニコニコと俺を見下ろしていた。


「連休明けなんでしっかり食べとこうと思って」


「ローカーは体が資本だ、今日だけと言わず普段からもっと食べて欲しいとこなんだがなぁ?」


 そのニコニコ顔も、俺の返事を聞いた所為か困った様に歪む。言わんとする事は分かるがこればっかりは無理な話だ。自他ともに認める底辺ローカーである俺が、毎日カツ丼なんて食べられるわけもない。


 これは特別な意味を込めたゲン担ぎのような物だ。10円の違いとは言え、いつも食べている蕎麦や栄養バーとは食べる時の気持ちが違う。


「無理言わないでよ、40円だよ? そんなの毎日食べてたらすぐお金が底尽きちゃうよ。蕎麦の方がトッピング付けても安いのに、お腹も膨れるわけだし?」


「やっぱローカー辞めて就職の方が良くないか? 戦闘スキル無しなんだろ?」


 痛い所を突かれて思わず愛想笑いが消えそうになってしまう。


 戦闘スキル無し、そんなローカーは五万といるが、専業でローカーをやる戦闘スキル無しはほぼいない。何かしら副業をもっているか、ローカーが副業であるケースばかりで、ローカーの相談窓口でも再三にわたって副業などを勧められた。


 勧められたところで、就職先がないのだからどうしようもない。


「……そうは言っても、入れる会社なんてないよ。前職関係は社長の所為でどこも入社拒否されるし、とばっちりで上級国民様に睨まれちゃったからね」


「ひでぇ話だよなぁ? これだから上級国民様ってのは嫌いなんだ」


 ひでぇ話であるのは事実だ。


 追われていると、どこからか逃げて来た社長を一晩かくまっただけで、俺はその後どこにも就職が出来なくなってしまった。勤めていた会社が大企業の圧力で消滅してからは、社長の姿も見ていない。


 そのくせどこの企業も、俺の情報を行政サイトで確認するすぐに顔色を変えて追い出すのだ。これでローカー専業以外にどうしろと言うのだ。軍? 馬鹿言えあそこは上級国民の巣窟だぞ? それこそ殺されかねない。


「そんな事言ってるとおっちゃんも消されるんじゃない?」


 おじさんも気を付けてくれよ? いくら平均寿命が延びたご時世だと言っても、殺されたらそれまでだからね。良くしてくれる人間が居なくなるのは嫌いなんだ。


「はは! そん時は家の店ブロックごと自爆してやらあ! はっはっは!」


「目が笑ってない、ほんとにやりそうで怖いな……」


 一頻り笑った後の顔にはガチでやるぞと書いてある気がした。なんでこの世代って色々頭のネジがおかしなことになってる人が多いんだろう? 飯屋のおじさんは第二世代だよな? いや、割と第一世代の可能性もあるか……ゆるゆるぎりぎりな第四世代には解らない何かがあるんだろうな。





 飯屋のおじさんにスキルの事を弄られた所為か、ちょっと気になって来た。


「スキルか……念のために確認して行こう」


 ローカーになると必ず資質と言う謎の力をダンジョンから与えられる。その資質の種類によって、様々なスキルを覚えるのだが……俺にはそのスキルの中に戦闘スキルがない。


 どんな資質でも、戦闘経験を積むことで戦闘スキルが発生すると言われていたのは昔の事で、今はダンジョンから与えられる三つの資質次第では、どんなに頑張っても戦闘スキルが手に入らない。それが最新のダンジョン学の結論であった。


 まぁ、その資質に関しても良くわかてないので、明確に戦闘スキルが発生しやすいとされる資質は解っていても、これは絶対に戦闘スキルを発生させないとされるスキルはあまりわかっていない。偉そうな専門家曰く、悪魔の証明に近いので結論が出せないそうだ。


<HBD照合ターミナルをごり……ダンジョンカードを確認しました。ご利用内容を教えてください>


 シャフト区画には必ずあるターミナル、正式名称は……忘れた。でも機械の原理は分かる。なので使用には問題はない。これもダンジョンからの技術流用なのだが、生体情報を読み取り移民船のデータセンターに保管することで、移民船に住む人々の管理に利用されることになる。


 昔は個人情報保護だのプライバシーだの問題になったらしいけど、今の移民船では利便性が勝ったようで、普通に誰でも利用できるよう、シャフトには必ず設置義務があるらしい。なんか前に問題が発生してニュースでやってた記憶がある。


「生体データの更新確認でお願いします」


 外からの見た目は大きな個室トイレ、中はなんか明るくて広いパウダールームと言ったところだ。施設に居た頃に、女の教務員の人がそんな説明をしていた気がする。監視カメラがあるから変なことしちゃだめとか言ってたけど、何の事だかあの頃は分からなかったな。


 使い方は簡単で、市民カードを専用のテーブルに置けばAIが勝手に読み取って利用開始、あとは普通に話しかければ問題ない。人付き合いが苦手な人間も、人の目に晒されず安心して利用できます……とか言う感じのうたい文句だった気がする。昔は全部人の手で操作していたそうだ。


<了承しました。スキャン開始、カード情報とのリンク問題なし、スキャン内容を表示します>


 テーブルの上の壁は全面ウォールディスプレイで、そこに検査結果が表示される。少しずつデータが表示される光景は何度見ても未来感がある。金持ちの家だと標準装備だというのだから驚きだ。


「……デバフなし、バフなし、資質の変化なし、スキル変化なし、何も変化なし」


<前回更新時より特段の変化はありません。健康状態に若干の不安があります。食生活に気を付けてください>


「……はい」


 変化はなし、健康状態に難あり、なんともししょっぱい結果である。


 ローカー用市民カードであるダンジョンカードからのアクセスだから、表示もローカー仕様だ。特に資質の項目は重要で、所謂レベルアップすると内容も少しずつ変わるのだが、俺の資質は低級ローカー認定を受けた時から変わらず、 “共鳴” と “混合” と “清掃” である。


 ダンジョン初心者はこれが最初一文字だったり二文字だったり、成長すると文字数が増えたり変化したりするんだが、何とも弱そうな字面じゃないか。スキルだって “虫の知らせ” や “状態均一化” と戦い向きな感じはしない。パッシブスキルの項目はこの二つ、俺の意識とは関係なく勝手に発動するものだ。


 危機察知系と身体強化系だという話だが、身体強化に関しては病気耐性に近い何かという判定が出ている。今の技術をもってしてもスキルの詳細は自分で手探りするしかない。自分のスキルは、なんとなくわかるんだけど解らないという何とも気持ち悪い感覚がある。


「改めて見てもピンとこないよな……」


 その下の項目はアクティブスキル、自分で使うぞと意識してやっと使えるスキルと言うのは分かるんだが…… “クリーンボディ” と “ニコイチ” と “お清め” の三つ、使ってみてもどれもピンとこない。


 字面からクリーンボディは体が綺麗になるんだと思う、でも使ったところで変化は感じず、ニコイチは知り合いのおじさんのアドバイスで使い方は判明したが、これも実際の効果のほどは良くわからない。ダンジョンで拾った石二つが光って一つになっただけだった。なんかきれいな石になった気がしたけど、それだけだった。


 お清めだけはちょっとした事件でその使い方は分かったけど、どのくらい効果があるものなのかは不明なままだ。少なくとも攻撃に役立つスキルはない。


<またのご利用をお待ちしております>


 画面とにらめっこしても、前回と変わったところがあるわけもなく、良いことはまぁまぁ健康な方ということと、呪いや怪我をしてないことぐらい。これが戦闘スキル無しの低級ローカー、いや俺の現実である。


 さっさとダンジョンのある七層に行こう。朝から淡い期待なんてするもんじゃない。



 いかがでしたでしょうか?


 低級ローカーの普通というよりは彼の普通である変わらぬ能力、そんなスキルで大丈夫か? と問えば問題しかないと怒鳴られそうである。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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