表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミチアナ  作者: Hekuto


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/5

第1話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



 無限に広がる大宇宙。


 人がどれだけ足掻いたところで、その全貌を明らかにすることは出来ない。どんなに足掻いても宇宙の中で人間なんて虫けら以下の塵芥も同然である。


「とは言え、引き籠っていたら宇宙の壮大さなんてわかりゃしないわけだけど」


 テレビから流れてくる音に耳を傾けてぼーっとしてたら変な夢を見た。


 自分が宇宙船の艦長になって壮大な冒険を刷る夢だった気がするが、正直そんな仕事を出来る気がしない。ネットを開けば上級国民たちへの不平不満、自分たちだけ贅沢をして底辺の人間は日々暮らすだけでも大変だと。艦長なんてものは、そんな上級国民の代表である。


 かくいう俺は、この長距離宇宙移民船の底辺なわけで、本当に底辺の人間はSNSで文句を言う元氣も無く天井を見上げているわけだ。大体にして、SNSで文句を言っているような連中の半分は、今も地球に住んでいる奴らであって、本当の意味で移民船の現状なんて知らないだろう。


「ロードメイカーの求人も絶えないなぁ……」


 俺の仕事だ。


 移民船でローカーの仕事をする人間は結構多い。その大半は真面目に働いているわけではなく、副業のようなものだと思う。大半の人間が、ダンジョンに入ってみたいと言う欲求を満たすためだけに、その資格を取っている。


 俺はそんな中で珍しい専業側の人間だ。だからと言って一握りの限られたトップレベルの人間のように、その名の示すような偉業を成そうなど思ってもいない。ちょっと興味はあっても、実力が全くこれっぽっちも足りないのだから、掲げるのもおこがましいというやつだ。


「護衛艦隊の求人も同じくらい流れるな」


 志願兵はとても少ないらしい、移民船の中でも安定した生活環境を築いている中流層がメインの護衛艦隊、その中でも志願するのは夢見がちな下級市民と正義感に熱い中流層だろう。特に敵も何もいない宇宙をまっすぐ進むだけの移民船であるが、やはり宇宙と言うのは危険な世界だ。


 一番死者数を出してる仕事はローカーだけど、その次に護衛艦隊の死者数は多いらしい。大体事故死や緊急事態で命を落とすそうで、万年人手不足は俺たちローカーとそんなに変わらないだろう。テレビを見ていてもこの求人募集宣伝が二大巨頭である。


「割合的に足りないのは、ロードメイカーの方だろうな」


 それでもローカーの方が人手不足の度合いは上だ。なにせ大半が真面目に働かないくせに、この移民船の根幹なのだ。もしローカーが一人もいなくなった場合、移民船はただの大きな棺桶になるだろうな。


 エッセンシャルワーカーが大事にされないのは、昔から続く日本の伝統なんだろう。地球の本国と変わらず、この超長距離移民船 “フジ” でもエッセンシャルワーカーの扱いは良くない。技術力による改善はされたとしても、結果としてしわ寄せが発生するのは変わらない。そのしわ寄せ先は、突然降って湧いて出た超技術の入手先であるダンジョン、そこで働く人間のロードメイカー。


 ダンジョンに入り、未知の世界に道を作る立派なお仕事。そんな風に習う仕事であるが、未だにその結果は出ていない。結果が出ないと真っ当な評価をされないのが世の中、未だに宇宙船と地球を繋ぐことができないローカーは、世間的に底辺扱いだ。昔は違ったらしいけど……あぁ、新しい技術でダンジョン内でも最近はライブ配信が出来るようになって、その評価も少し変わってきているとは聞く。


「働くならインフラ整備士とか良いなと思ったけど、エリート様専用だからなあれ」


 小さい頃はまさかローカーなんかになるとは思ってなかったから色々夢見たものだけど、いざ就職を考え始めると現実にぶっ叩かれる。大半の仕事が上級国民様や中流階級によって独占されていた。


「俺みたいな親なし子じゃ、まともなスタートラインにも立てやしねぇ」


 革新的技術開発によって少子化と言う言葉が無くなり、子供がいくらでも生産でき、それによる居住環境の改善を宇宙に求めた現代の弊害と言うやつだ。子供はいくらでも工場で生産できるけど、育てる親が居なければ全員施設送りだ。


 正確には俺にも親はいるのだが、工場で生産されたと言うのに育てる事が出来なくなったそうだ。地球の無法地帯と違って、移民船は計画出産である。一人として無駄には出来ないし、一応倫理的に生まれた人間をそのままゴミのように再生プラント行きになど出来ない。結果、施設で似たような出自の人間と纏めて育てられ、時間が来たら放り出される。


 頑張って就職活動したと言うのに、就職先は数年で倒産。社長が悪い様な悪くない様な感じで倒産して、完全になんの補助も無くたどり着いた先がいまだ。


「はぁ、 ”ほいほい亭” に就職できた頃はもう少し夢も見てた気がするんだけど」


 あの頃はよかった。何も考えずに、毎日出勤して、弁当作って、あとはドローン任せ、それで家に帰ればネットでゲームだ。


 ゲームなんて、しばらくやってない。なんせ金がない。


「最近じゃ独り言も増えた気がする……いや、確実に増えてる」


 金がなければ遊びにも行けない。昔は仕事柄自然と外を出歩くこともあったけど、今はそれも無い。ダンジョンと家の往復で心がすさんでいるのを感じる。


「それでも呟かないと心が死ぬ。SNSに呟いてもむなしいだけだし、それでもたまに呟いてしまう俺は弱い……」


 俺は弱い、でもついついスマホに手が伸びてしまう。


「弱いついでにお腹もすいてきたな」


 ローカー用のSNSの ”ロカチャ” を開けば、おすすめとして流れて来た画像で飯テロを喰らった。人の思考を読むが如くおすすめを表示してくれるスマホのなんと優秀な事か、優秀なら懐事情も考えてほしい。


 と言うか、金持ちローカーのキラキラお食事事情なんて興味ないんだよ。


「あぁぁぁぁ……せっかく連休にしたのに心が腐る」


 誰にも縛られない自由な仕事ロードメイカー、休みも仕事も自分の思うがままに調整可能、貴方もそんな自由な生活を満喫しよう! じゃねぇよ……今日だけで何回目だこの宣伝。


 いかん、本格的に駄目な思考の底に落ちていく。


「何か面白いことはないかな」


 楽しい事だ。せっかく月末月初を休日にして三月から気合を入れ直そうとしてるのに、これでは本末転倒もいいところだ!? 何か、何か楽しいことはないのか……。


 飯テロで思わず床に落としてしまったスマホを手に取れば、わかっていますと言いたげな顔で今日の艦内スケジュールをめくっていくスマホ君。こういう機能は年々強化されるよな。便利ではあるんだけど、何か監視されているようで怖さもある。


「1層に行けば何かイベントでもやってると思うけど、なになに? ひな祭り、超巨大ひな人形展示、ドレス試着会……男の子には無縁の世界だな」


 時期が悪いとしか言えない。五月なら多少何かあったかもしれないけど、こんな三月のひな祭りシーズンに男一人で楽しめるイベントなんて無かったんや。


「……だめだ、出歩く自分が想像できない。アウェーの洗礼に焼かれる未来しか想像できない」


 女の子のお祭りに男は不要、そう言えば施設でも3月の空気はどこか俺によそよそしかった。気のせいかもしれないけど、3月ってあんまり思い出がないから事実なのかもしれない。ホワイトデー? 知りませんねそんなイベント、2月にフラグが立たなきゃ意味ねーんだよ。


 そもそも、イベント目当てに出かけても金がかかるんだよな。イベントを見るだけならあまりかからないかもしれないけど、やっぱりイベントの種類が悪い。不審者扱いされて捕まるんじゃないだろうか? 女の子のイベントだもんな、絶対やべぇのもいるだろう。


 俺は社長の二の舞にはなりたくない。


「そもそも、無料で楽しもうというのが駄目なのか? 今いくら入ってるんだっけ?」


 タダで楽しい事をと思っても、何をするにもお金が必要な世の中なわけで、スマホを開いて財布の残高を確認する。数回タップしたらアプリに俺の財布が表示され、


「えーっと、42円……」


 ははは、これじゃイベントの入場料にも満たないじゃないか。


 ……てか、こんなに少なくなってたのか、もっと小まめに財布アプリで確認しないと危険だな。しかし、どうするか? これじゃ蕎麦いっぱい食べたら一桁になっちまう。


 いや解っている。何をしなければいけないのか分かってはいるんだ。たとえこの船が遥か宇宙の彼方に存在する移住可能惑星を探索する船だとしても、そこに住む人間の生活なんて地球人と変わらない。


 そう、それは勤労。勤労しなければ、誰かの役に立つことをしなければ、お金はもらえない。


「休日は今日までかぁぁぁ」


 これ以上休んでも仕方ないとは言え、金欠で休み気分が吹き飛んでしまうというのは、何とも味気ないものだ。これも結局自分が弱いのがいけないんだろう。それは分かっているんだよな。同時にそれがどうしようもないという事も……。


「宇宙軍所属なら、衣食住は支給されるだろうな」


 その代わり、上から命令されたら機械のように働かなければならない。その上、上級国民と俺ら下級民の間には理不尽な格差まである。施設に来ていた軍人が、夢見がちな子供の俺にそんなことをこっそり教えてくれた。だから軍人にだけはなりたくない。


 とはいえ、生活は確実に軍人の方が良いだろう。


「ローカーでも上に行けばうまいもん好きなだけ食えて、いくらでも休めるんだろうけど」


 格差と言う意味ではローカーにも越えられない壁があるわけで、それはダンジョンに体が順応することで発現する資質とスキル。こればっかりは完全に運であるが、だからこそ底辺の下級国民でも上級国民になる可能性を秘めている。


 スキルによっては、上級国民より良い生活だって夢ではない。実質、上級ローカー以上は中流家庭なんかよりよっぽどいい生活ができるし、特級ローカーなら上からの圧力も突っぱねられる権力も手にできる。


 と言うか、人間兵器扱いで手が出せないとも言えるな。


「現実がしんどい」


 そんな夢を少しばっかり抱いてローカーになった俺と来てみれば、ハズレを引いて三年目の未だに低級ローカーである。


「何が君も今日からロードメイカーなんだか……道の開拓なんて、上級以上の仕事だろ」


 本当にロードメイカー募集の宣伝は多い。かと言って無音の部屋で天井を眺めているだけと言うのは、なんとも心にくるものがあるので、雑音でもないよりは良い。


 下級国民の、さらに低級ローカーのままおっさんになろうとしている自分の現状に、鬱々としてしまう心が少しは誤魔化せる。知り合いのおじさん達に言わせたら大した問題じゃないと言うが、先が見えないこちらとしては大問題だ。


 一応、打開策のために行動はしているが、何せ財布の中がこれだから、貯金を切り崩してしまわないかと日々欲望と戦い続けている。俺は頑張っている、その証拠にソシャゲは止めた。止めてすぐに貯金がたまり始めたんだから、ガチャは悪い文明だって、はっきりとわかんだね。


 にしてもお腹が減った。


「どうしようかなぁ? 今から食べに出るか、明日に残すか……」


 何もしなくてもお腹は減るんだから、生きてること自体が悪い事のようにも感じる。今の財布の中身で食事できる回数は、一回だけだろう。それをどこに持ってくるかが問題だ。


 スマホに目を向けるとすでに時刻は16時、朝と昼の間くらいに支給品のポテチをたべただけ、起き上ればその残骸の筒がテーブルの上にポツンとたたずんでいる。それ以外は特に何もない半壊した広い部屋、壊れた壁の向こうの部屋には前職の社長から貰ったノートPCが支給品用の丈夫な箱の上で光っている。


 何でも壊れているので常に画面が起動したままになるそうだ。俺も消えたところを見たことがない。しかも一度電源を落とすと起動するのに小一時間かかると言う壊れっぷりの所為で、常に小さなファンの音が鳴っている。


 立ち上がって隣の部屋の奥に行けば、こちらも貰い物の業務用冷蔵庫。テーブルの下が冷蔵庫と冷凍庫になっているタイプで、部屋が壊れていなければ置く場所にも困っただろう。そういう意味では、この部屋で爆発事故を起こして二部屋を一部屋にした前居住者には感謝だ。


 おかげで二部屋分の広さなのに賃貸費用は相場の半額、二部屋分ではなく一部屋分の半額である。


「なにか、うわぁ大豆バーだけか」


 支給品に必ず入ってくる栄養バーの中では可もなく不可もなく、そんな濃い豆腐に醤油を少し足したような味のにくいやつが一本、大きな冷蔵庫の真ん中で寂しそうにしている。他にはポットに入れた水しか入っていない。


「せめてミートバーならマシなんだけど」


 一番おいしいのは当然だが肉味である。ミートバー系はハズレがないので、毎回実験のために味を変えてこられてもミートバーだけはおいしい。そう言えばこの大豆バーだけは改良品が無いけど、完成した味という事なんだろうか? 先月の支給品はバニラ納豆バーやらフルーティチョコレバーやらハズレが多かったから、今月は普通にしてほしい。


 そういう意味では大豆バーを残してたのは英断だな。


「エネルギーバーよりマシ」


 一番わけわからん味が多いエネルギーバーなんて、大体全部ケミカル味で何を食べてるのかわからん。栄養は一番バランス良いらしいけど、あれならドクペの方がまだ落ち着いた味だよ。


「……いいや、時間も時間だし」


 今から外に出て食べると言うのも怠い。しかし腹が減っている。となれば食べるしかないわけだが、これで明日のお昼は抜きとなった。


 ペリペリと剥がれる包装の音が何とも物悲しい。


「んー……味気ねぇ」


 うっすい……もう少し味を濃くしてほしいけど、そうなると水分が欲しくなる。一応は非常食も兼ねているから、水分が欲しくなるようには出来てないとか聞いたことがある。


「でもこれが一番安いんだよなぁ、エネバーは目が覚めるし、納豆バー臭いし、大豆は10円バーじゃマシな方だよな」


 一本十円で一食分のカロリー……には満たないけどお腹は膨れるのでよし。今の時間にエネバーを食べたら眠れなくなるし、納豆バーは近くで食べてる人が居たらすぐわかるくらいには臭い。


「……朝飯ちゃんと食べて、しっかり稼いで来ないと」


 今日はもうお風呂で暖まって早めに寝てしまおう。元氣がなけりゃ稼げるものも稼げない。そもそも低級ローカーはそんなに稼げないのだから、下手したら飯にもありつけなくなってしまう。


「いつもの定食屋で決まりだな」


 残金42円、これは明日の朝飯に使わざるを得ない。



 いかがでしたでしょうか?


 新作ミチアナ、それは一体何なのか、この先も楽しんで貰えたら幸いです。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ