表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミチアナ  作者: Hekuto


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/16

第13話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「……逮捕されたのか」


 大型の浮遊モニターに、でかでかと化物ババアの顔が映し出されている。もう少しで尊厳破壊されるところだったのを思い出すから、その映像をさっさと切り替えて欲しい。せっかくラウンジで休んでいるのに休んだ気がしなくなる。


 俺が顔を下げればいいのだ。力を抜けば自然と視線が下がる。背中が丸くなって体重が掛けられたラウンジのテーブルが少し軋む。このテーブルが無くなったら俺は、地面でスライムになるんじゃないだろうか。


「まぁ、あれだけ大暴れしてたらそりゃそうか」


 むしろ今まで野放しだったの何でと言いたいくらいだ。


 考えても分からないのでテーブルの映像に目を向ける。こっちはカラフルな映像で、注文できる商品が次々と切り替わっていく。最近の流行りは柑橘系の果物を使ったドリンクなのだろうか? 夏も近付いているから確かに合いそうだ。たまに桜ドリンクなんてのも流れてくる。


 注文するまで、この映像は消えない。いい加減切り替えの早い映像に目が疲れるて来たので、近くの給仕ロボットに目を向ける。瞬間こっちに正面を向けて走ってくる給仕ロボット。


<ドリンクはどうしますか?>


「冷たい緑茶で」


 無料のやつですまない。


<かしこまりました。少々お待ちください>


 特に気にした様子もなく走り去る給仕ロボットには、受付さんのような高性能AIは組み込まれていない。それでもある程度のコミュニケーションはとれるのだけど、今はそんな元気もない。もうこの場で寝てしまいたいまである。


 寝たら確実に警察のお世話になる。たまに酒を飲んで寝てしまったローカーが、ドローンで海苔巻き運送されているのを……たまにじゃなくよく見るな。ほぼ毎日誰かしら運送されてるんじゃないだろうか。


「少し暑いな……すずしい」


 涼しい。


 暑いと言った瞬間、テーブルと一体化しているパラソルから冷気が降り注いでくる。太いポール部分にエアコンのダクトが内蔵されているらしく、パラソルの内側に向けて送風する仕組みになっているとか、割とどこのラウンジにも採用されているタイプだ。


 もっと高性能だと、同じテーブルを囲む個々人に合わせて冷房暖房送風を切り替えてくれるのだとか、そこまで行くと何がどうなってるのか想像もできない。ま、利用者は便利だと思っておけばいいのである。


「大規模汚染か、明日からは場所替えだな」


 パラソルから吹き下ろしてくる風を浴びていたら視界に浮遊モニターが入って来たが、幸いババアはもう消えていた。話題は現在進行形で拡大するダンジョンの汚染。


 汚染の一言に行っても色々あるらしく、現在の汚染はダンジョン環境を変位させるタイプの汚染らしい。人間には無害だけど、ダンジョンに思わぬ変化が出るので、基本落ち着くまで汚染された場所には近づけない。


 どうやらDの汚染とは別種のようだけど、入れる場所がまた狭まってしまったな。もしかしたらババアを捕まえたのはその所為もあるのかもしれない。人の行動範囲が狭まれば、ローカーの密度が上がってババアによる被害人口も増えるだろうからな。


「今日の御飯はどうしよう? 貯金優先とはいえ、少しは豪華に、なんだったらお酒にチャレンジ、いやだめだな」


「酒ぐらい良いだろうがよ!」


「お、おん?」


 怒られてしまった? いや違うな、近くのテーブルで何かあったようだ。贅沢を考えた瞬間怒鳴り声が聞こえて来るとか心臓に悪い。まるで世界が俺に贅沢を禁じているような気分になる。


「酒が入ったらまたすぐ暴れるじゃない! しばらく禁酒よ!」


 あー、良く暴れる人いるよね。酒飲んで暴れるのは三流だとおじさん達も言ってた。おじさん達は素面でも喧嘩してるじゃん、と口にしなかった俺は偉い。


「俺がいつ暴れたってんだ!」


「今日も酒飲んで駆除してたでしょ! それでスキルバンバン使って!」


「あれって……」


 虎柄中級ローカーじゃん。ペナルティ2点喰らってた人達だ。今日の戦闘中お酒は言ってたのか、だからあんなに暴れてたって事? いや、お酒飲んで戦えるのもすごいけど、怖くないのかな。


「な、なにがわるい!」


 ペナルティ喰らってたし、それはまぁそれなりに悪いんじゃないかな。


「悪いに決まってんでしょうが! 違反二つも切られたんですけど? ねぇ? 何か言う事あんでしょ、まだ言ってないよね?」


 だよね。


「う、ぐ……わるかった」


 小さくなっちゃった。背中がまるまると急に小さくなったように見えるよね。俺も猫背になりがちだから気を付けないと、舐められるのはそういう所が関係してるかもしれないし、ふん! ……ふぅ、腰が痛い。


「と言うわけで今月禁酒だから」


「はぁ!?」


 今月、今月ってまだ始まったばかりだから、ずいぶん長い禁酒になりそうだな。俺は全然気にならにけど、ダンジョンで仕事する日でも飲む人にとっては辛いんじゃないかな? 少なくともおじさん達は絶望しそうだ。今度ためしに聞いてみようかな。


「……あ?」


「……ハイ」


 こえー……美人さんが眉間に皺寄せて見下ろす様に睨むのこえー、美人だから余計に怖いのか、あの人が単純に怖いのか、やべ目が合った。


<冷たい緑茶のお届けデース>


 ボクミテナイヨー? オチャガクルノマッテタダケダヨー。


「ありがとう……ぼっちにかんぱい」


 ほらロボット君も一緒に乾杯だ。あっちに目を向けちゃいけません。目で殺されますよ。


<かんぱーい>


 気を利くロボット君は、お茶を置いたアームを器用に俺の持つカップにやさしくぶつけてモニターに楽しそうな顔を表示してくれた。モニターの顔はいくつかのパターンを切り替えながら笑っている。


 こっちはぼっちでロボット君と楽しんでいるので、睨まなくて大丈夫です。ロボット君のピカピカボディに反射した美人さんがまだこっちに目を向けている。怖い。怖いぞ美人さん。


「パーティって大変だなぁ」


 ロボット君は一頻り笑顔を振りまくと去って行った。怖くて後ろを振り向けないけど、本当に人付き合いはめんどくさい。ぼっ……一人って楽だな。


「静かな席も多いけど、どこも一人の席はないな」


 美人さん達に目を向けないように周囲を見渡せば、どこの席からも楽しそうな会話が聞こえて来る。時間帯がそうなのか、それともこのラウンジがそうなのか分からないけど、意識すると場違いな気がしてくる。


「最近は軽食勢も多いんだな」


 会話でにぎわっているし、テーブルの上もにぎやかだ。


「でも低級にはサービス悪いしなぁ」


 それに比べて俺の席の何と寂しいことか、無料の緑茶が置いてあるだけなら、まだメニューの宣伝が表示されている方がマシかもしれない。目には優しくないけど。


「やっぱ最低でも中級には上がらないといけないか」


 ラウンジ利用に関して、低級には基本何のサービスもされない。金払いの悪い低級にサービスしたところで、企業には何のメリットもないということだろう。さっさと中級になって金を落とせということか、世知辛い。


「なんかよくわからない呪文みたいなメニューの一つでも置けば、少しは華やぎそうではあるけど」


 あんなの飲むくらいなら、カツ丼食べた方がマシである。負け惜しみとかじゃないんだからね! ……誰に言ってるんだ俺。


「ん? 大テーブルが騒がしいな」


 あっちは有料テーブルエリアだと思う。ちょっとした囲いもあるけど、透明だから中の席は丸見えである。そこに人が集まっているみたいだけど、なんだろう。


「ファンなんですサインください!」


「私もお願いします!」


「特級が来てるのか、すげぇな」


 パーティ全体にサイン貰ってるって事は、全員特級かな? その辺詳しくないからよくわからんけど、ファンにとっては凄いんだろうな。知らない俺からしても、特級は装備から何から次元が違うので、すごいとは思う。ヘリカルなんとかさん達も、デカい武器を持ってたけど、あんな重そうな武器を使えるだけでもすごい。


「配信勢と特級パーティは、ローカーの二大巨頭だよなぁ」


 浮遊モニターを見上げればダンジョン配信者の宣伝が流れている。配信者ランキング的な物らしい映像には、いろいろなコスチュームで戦うローカーが映し出されていた。


「特級は無理でも、配信なら……ないな」


 ちょっと考えた。配信なら機材を揃えることが出来れば始められるし、今は配信機材もピンキリではあるけど素人でも手に入ると聞いたこともある。その辺の機会も最近は進歩して扱いも難しくない。


 でも、浮遊モニターに映し出される配信者はどれも顔が整った、所謂イケメンや美女、美少女。自分ではそんなに悪くないと思っていても、あそこに入ればただのヒョロイ、どこにでもいるような一般人モブである。猫耳フードを被った配信者が大きく映し出されるけど、ああ言うのが似合う人だから様になってるわけで、俺がかっこいい服着ても映えないだろう。


 そもそも、ラディッシュを採取する配信でかっこいい装備ってなんだ? 同接一人で草が生えたら御の字だろ。見て見ろ浮遊モニターのコメント欄を、高速で流れて読めもしねぇよ。


「特級と上級の間にある高い壁より高いよ」


 中級にもなれない俺には論外すぎる選択だな。


「上級も最近は特級になりたがらないもんな」


 上級ローカーの人数は過去最高になっているらしい、その割に活動している特級ローカーの人数は過去最低だとか。昔は特級は特級だけで集まってチームやパーティを作っていたけど、今は特級に上級、下手すると中級も参加しているらしい。そういったパーティはあまり難しい依頼を受けないでいいだそうだ。


 法令の変更にローカーの意識の変化、優秀な人材の喪失を恐れて育成重視への方針転換だと、おじさん達が愚痴ってた。よくわからないけど、おじさん達として納得がいかない話のようだ。


「船が出て80年くらいだっけ、アメリカの船はすでにプロキシマの調査に入ってるらしいけど、ダンジョン開通は進まずだっけ」


 安全第一は俺としても有り難いけど、本来の予定が進まないのはまぁ確かに困った問題だと思う。アメリカも調査予定地に着いたにもかかわらず、ダンジョンが開通が出来ないから焦ってると言う話も聞くし、日本も移民船側より地球本国の方が焦ってるそうだ。


 予定ではもっと早く、船のダンジョンと日本の秋葉原ダンジョンは開通していたそうなんだけど、想定が狂いっぱなしで、今では全く開通の見込みが立たないそうだ。まぁそもそもダンジョンの階層数とか構造の想定違いが出港後に判明するなど、開始時点でアホやらかしてるらしいけどね。


 これもおじさんズの愚痴だ。


「こっちはまだ先とは言え、ダンジョン開通なんて出来るのかねぇ?」


 日本が目指しているのはK2なんとかって言うスーパーアースでだいぶ遠い。ダンジョンエネルギーを使ったワープ技術が開発できてなきゃ行こうとも思わなかっただろうな。そうなると俺も生まれてない可能性が高いわけだ。


 うん、そういう意味ではダンジョン科学者には感謝なんだけど、その感謝の気持ちがあったとしても、俺にはダンジョン開通云々についてどうすることもできない。地球の空を見てみたいと思いはするけど、船の航行予定はまだ半分も進んでないわけで、その状態で船に住む人々が開通に前向きになるとも思えない。


 思った結果が過去のローカー大量死なわけで……お茶が温くなってしまった。考えすぎたかな? まぁ一気に飲むなら温い位が丁度いいよね。冷たいの一気飲みすると頭とか喉が痛くなるし。


<緑茶のおかわりはいかがですか?>


「有料でしょ?」


 知ってますよロボット君。


<低級は二杯目から有料です>


「……ランクアップかぁ」


 低級に対してもサービス良ければ考えないのに、こういう所で毎回考えさせられる。まだ喉の渇きは完全に癒えてないけど、有料でお茶を飲むほどではない。


 ランクアップのために貢献度上げとか、現実もゲームと変わらないな。



 いかがでしたでしょうか?


 世の中どこも世知辛く、日々の中でじわじわと冬道を焦らせる。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ