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ミチアナ  作者: Hekuto


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12/15

第12話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「はぁ……やっと、外だ」


 疲れた。本当に疲れた。流石に今日はもうクタクタだ。でもこれだけ頑張れば、少しくらいはレベルアップしてくれるかもしれない。なんて言うのは、ちょっと甘い考えだろうか、いやしかしあのババアとの遭遇や緑ウヅラとの戦闘は多少なりとも経験値になってくれるはずだ。


 実際にダンジョンで苦労するほど、スキルの成長は早くなる。それは実際に確認されていることで、しかし数値化することができないダンジョンの不思議だ。とは言え、人間だれしも楽に稼ぎたいわけで、苦労などしたくはない。特にゴールが見えない回り道なんて、精神的にも良くない。


「回り道され過ぎだよ」


 俺は物理的に回り道をさせられたわけなんだけどね。


 汚染が発生してる所為だとかで、あちこち通行止めになってスマホのマップも役に立たない。下手に近道しようと封鎖された道に入れば、即座に警戒中のドローンが頭上から飛んでくる。一層に入ってから5回はドローンに怒られるローカーを見たし、俺も1回怒られた。怒られると言うより注意だけど、あの警察のサイレンにも似た警報音は心臓に悪い。


 そんな騒動の終わらぬダンジョンの出入り口から、受付に行く間にもいくつかラウンジが点在している。ダンジョン広場と言われるこの辺りには、様々な企業がラウンジを展開していて、いろいろな情報収集の場にもなっているとかで、出される飲み物や軽食も期間限定品や新商品が多い。俺達はモルモットなのだろう。


 そんなラウンジの一つで飲んでいるおじさんズと目が合う。手招き、どうやらこっちにこいと言っているらしい。


「おう坊主今帰りか?」


「今日は遅いな」


 仕方なくふらふらと歩いて行けば、機嫌の良さそうなサカナおじさんと水汲みおじさんの二人、テーブルの上にはビールが入ったカップが二つ。


「おじさん達も遅……酒くさ」


「はっはっは! ワシらは物見酒の帰りよ」


 物見酒の帰りって、ここでも飲んでるの、どんだけ酒好きなんだよ。


 空を見上げれば天井照明はオレンジ色、もう少ししたら天井照明がグラデーションになって夜の空に変わっていく。いつもならもう家に帰ってごろごろしてる時間だ。働きすぎた。荷物が余計に重く感じるので見上げるのを止める。


「酒の肴が無くなってな、とりあえず外に出てきたとこよ」


 なるほど、だからってなんでビールをここで飲むのか、俺には解らない世界だ。酒飲みはみんなこういう感じなんだろうか? 周りに酒飲みなんておじさんたちくらいしかいないから、考えてもよくわからん。


 あ、それならそうだ。あげちゃおう。


「それならこれ要ります? 肴になります?」


 飲んでる人に見せるのもどうかと思ったけど、まぁいいだろうと、防水採取袋の口を少し開いて見せる。中には頭を潰された緑ウズラが血の海に浮いていた。


「おお! 緑ウヅラか!」


「なんだ、野菜は辞めてウヅラに転向か? いいぞ若者はそうでなくては!」


 そんなわけない。いや、戦えるならそうするかもしれないけど、なんでおじさん達そんなに嬉しそうに俺の肩を叩くんだろう。視界がぶれる、青痣に響く。


「いえ、二層で襲われまして……帰りにも三回ほど見かけましたけど、狩れたのはこの二匹ですね」


 そう、二匹である。帰る途中で何度か緑ウヅラに遭遇したのだ。しかもその一回は戦う羽目になってしまった。その時は丁度壁際を歩いていたから、短時間で壁ハメ攻略が出来たけど、残りは全部特級ローカーが消し飛ばしてくれた。


 ヘリカルとか言うパーティだったと思うけど、緑ウズラから隠れて移動していたところに颯爽と現れて、ドリルでウヅラをミンチにし、サムズアップを残して走り去る後ろ姿はとてもヒーロー。五人組で、色違いの揃いの装備はとてもヒーロー戦隊ぽかった。


「なるほどな……」


「売らんでいいのか?」


「結晶は外してますし、売っても二匹で6円くらいですから誤差ですよ」


 色々お世話になってるし、6円で少しは返せるなら安いものである。店で買えば100円以上はするだろうから、いやげ物にはならないと思う。十円払えば綺麗に捌いてパック詰めしてくれるロボットもある。その十円が俺には厳しいんだけど、おじさん達は稼いでそうだし問題ないだろう。


「そうか、なら有り難く貰っておこう!」


「よし、揚げ物にするか!」


「ならビールだな!」


 まだビール飲むんだ。


 ダンジョン内では度数の高いお酒で、今はビールを……一気に飲み干した。それで更にウヅラを揚げてビールか、苦しくならないのか、不思議である。


「仲良いよなぁ……いや、ぼっちじゃないし」


 二人して俺の背中を叩いて、気を付けて帰る様にと言って立ち去ってしまったおじさんズ。あの仲の良さは少し羨ましい。ああいう風に遊べる相手がいると言うのは、俺には経験がない事だからだ。


 施設に居た頃はそれなりに友達もいた気がしたけど、今は誰とも連絡を取っていない。という事は、きっとあれは友達と言うものではなかったのだろう。強がりの言葉の所為で余計に悲しくなった。


「何時もより人が多い」


 気持ちを入れ替えようと背中を伸ばせば視界が広がる。そうすると賑わうラウンジが自然と目に入ってくるけど、時間の所為かお酒専用の給仕ロボットたくさん走り回っている。これが高級なラウンジならロボットではなく、ちょっとエッチな衣装のお姉さんが給仕してくれるらしい。


 そんな高級ラウンジには行ったことがないから、想像もできないけど。興味はある。


「ぅわ、受付も多いぞ?」


 予想以上に多いな、ラウンジを眺めながらゆっくり歩いてる場合じゃなかった。


<列全体を見て偏らずお並びください>


<作業効率化のため、査定品は分かりやすく用意してお待ちください>


 ポール型のドローンが整列させている。大体はきれいに並んでいるけど、列が乱れる度にドローンが整列を促しているようだ。ドローンに注意される姿は、見ていてちょっと恥ずかしい。


 言われたとおりに査定品を見やすく出す。ウヅラが減った分だけ軽くなったけど、いつもと違う結晶用ボトルがあるから、忘れないようにボトルのクリップで胸ポケットを挟んで吊るしておく。こういう時フィールドジャケットの多過ぎるポケットは役に立つ。


「……おい、あれ」


「あ?」


 別の列から視線を感じる。


「野菜野郎が結晶持ってるぞ」


「死体攫いかよ」


「底辺にとっては貴重な収入源なんだろ」


 視線の主は何時もの連中だ。俺がローカーになったころから何かと絡んでくる連中だが、名前も何も知らない。にもかかわらず何かある度にこうやって大きな声で陰口を言い始めるのだ。


 まぁ所謂いじめっ子体質、他人を見下さないと生きていけない人種というやつだろう。社会にはこういうタイプが一定数いるようだけど、正直かかわるだけ無駄なのでいつも無視している。施設にも一定数いたけど、職員の人たちも無視しておけと言っていた。めんどくさかったんだろうな。


「…………」


 まぁ、最初は俺に言っているとは思わなくて無視してたら、突然切れられて気が付いたんだけど、その時の対応が不味かったのか、それ以降は目の敵にしているようだ。あれでローカー歴は俺と変わらないのにすでに中級らしいので、優秀なのだろう。


「良く恥ずかしげもなく並べるな」


「そんな知性があれば死体攫いなんてしないだろ?」


「そりゃそうだ」


「……はぁ」


 かかわると面倒だけど、風評被害も甚だしい。あいつらの所為で実際俺の事を悪く言う人間は増えている。ロカチャで何を呟いても必ず非難されるのは、こういうところから来てるんじゃないだろうか? それとも俺が天然でおかしなことをしてるのか、まぁ後者は無いな。


 なんせ、ラウンジの新作ドリンクを飲んだと言う呟きだけで、企業のイメージダウンになるとか非難されるんだ。あの時は流石にならんだろとつっこんでしまった。まるで存在悪の様に扱われるのなんなんだろうな。


 周囲から聞こえて来る声をシャットアウトしながら並ぶこと15分、臨時ブースが設置されて一気に列の消化スピードが上がってくれた。正直今日は疲れすぎて足が棒になっているので、支援局のこの対応には花丸を上げたい。


<お疲れ様です穴見様。いつもより遅い時間ですが、お怪我はありませんか?>


「あーうん、大丈夫」


 今日の受付さんは黒髪ロングのぱっつんヘアーさん、ブース内に入るなり気遣ってくれる。人間もこのくらい優しければ俺の生活も少しは平和になるのに、そう考えてしまうのは疲れているからだろうか。


 あまりの落差に愚痴が漏れそうになったけど、何とか飲み込めた。とても偉いと思います。


<そうですか、何かあればおっしゃってくださいね>


「うん、ありがとう」


 優しい。これが業務的な優しさだとしても、今の俺には十分な癒しである。


<それで、確認なのですがエネルギー結晶の入手経路をお聞きしても?>


「え、ああ」


 う、ここでも疑われている? いやしかし、拾い集めたエネルギー結晶だとしても別に犯罪ではない。むしろダンジョンに吸収される前に回収できたのだから良いことなのでは? いやでも、褒められるような行為かと言うと何とも言えないけどさ。


<安心してください。我々は誰も死体攫いなどとは考えていません。誹謗中傷の訴えがあればいつでも処理しますので>


「え、こわ……二層で緑ウヅラと遭遇して、報告入れて、避難勧告が出た後に帰り際もう一匹出てきた感じ……だよ?」


 あれ? そう言えば後の方で倒した緑ウヅラの報告したかな? あれ? してないな、それか? もしかしてそれで聞かれてるのか。


<同時ですか?>


「いや、それぞれ単独だったけど……遭遇間隔も結構あいてるし」


 あ、これ絶対報告忘れてるな、怒られる? おこられるのか? 怒られるよな。


<そうですか、了解しました。もう一度言いますが、ローカー間の事で不満があればこちらに連絡してくださいね>


 怒られなかった。


「あーうん? その時はよろしく……?」


 身構えてたからうまく言葉が出てこない。よろしくって何をよろしくするんだ。不満はいっぱいあるけど、報告するほどの不満ではないかな? 愚痴は、言い出したら止まらなくなりそうだからやめておこう。


 話しながらそっとテーブルに置いていた収穫物が素早く持ち去られて、交換の収穫袋がこちらも素早くテーブルの下から出てくる。テーブルエレベータの上にはラディッシュ用の大袋に結晶用のボトル、それに防水袋まで揃っていた。


 どうやら俺の行動は全て把握されているようだ。流石と言うかなんというか、どこまで知られているのか恐ろしくなる。AI相手になにを気にしてもしょうがない気もするけど、特にこの船の中では切っても切り離せない関係なんだしな。


<はい。それでは、ダンジョンラディッシュ、エネルギー結晶、ダンジョンパニック協力一時金も含めて総額450円になります>


「え、マジ!?」


 よん!? よん!!? マジか、すげぇな協力金、大して何もしてないのにそんなに貰えるなら、今度からパニックは率先して参加しようか、後ろから見てただけなのにこれなら美味しい。


 ……どど、どうしよう。豪遊? 豪遊か? カツ丼と蕎麦に、トッピングまで付けちゃうか?? …………冷めた。自分の豪遊の想像が思った以上にしょぼくて萎えた。良くないな、良くない。貯金だ貯金、こうやって燥いで何かして成功した試しはない。どうせ食べすぎてお腹痛くしてテンション下がるんだ。


 俺は知ってる……何回もやらかしてるから。そろそろ学習したい。



 いかがでしたでしょうか?


 学習したからと言って、次回正しく利用されるかは別の話だったりしますが、皆様はいかがでしょうか? 作者は欲望に翻弄されるタイプです。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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