三橋成真 5
ーー現在ーー
ドンドンドンッ!とドアを叩かれた。
何も考えずにドアを開ける。
「おい、なに壁叩いてんだよ?あ?」
顔を近づけて来たのは隣の203に住んでる茶髪の男だった。
「はい?」
「はいじゃねーよ。調子乗ってんのかお前」
「……。いつもうるさいですよ」
「だったら壁叩いていいのか?ああ!?」
「一回トンってやっただけじゃないですか」
「回数聞いてんじゃねぇよ!」
俺がこんな見た目だからなのか、物凄く威圧感を出しているが俺には一ミリも感じない。只々普通にこの男を見つづけた。
「……おい、何見てんだよ?」
「…え、じゃあどこ見ればいいんですか?」
「こいつ…」
“ねぇ映画観よーよー”
この男が住んでいる部屋から同じく茶髪の女が顔を出し、甘えた声で男にそう投げかける。
「次やったら承知しねえぞ?」と、息がかかる程の距離でそう言って203に戻っていく男。
「……」
“大丈夫ですかぁ~~?”
反対の方から声がした。
振り向くと205のドアからパペット人形がこちらを見ていた。そしてパペットが動きながらまた喋り出す。
「あいつらヤバイですよ。ゴミ出し注意したら唾かけられましたね~。あの女も性格悪いし天罰下るのも時間の問題ですね~」
また逆の隣、205に住んでいるのは元宮もとみや美智子みちこという一人暮らしの女性だ。多分35,6だろうか?たまに会ったら会話する程度の仲で悪い人じゃない。
ただ少し不気味なだけ…。
この前なんか俺に似た手作りの人形をポストに入れプレゼントされた。〝成真さん〟とだけかかれた手紙と共に…。
「というか私自らやってやろうかしら。まず男から腹に一発…」
パペットはまだ喋っていた。
「元宮さん、新作ですか?」
パペットはピタッと止まり、答えることなく部屋へ引っ込んでいった。
自分でもよくわからないが体が勝手に動く感覚で俺はそのまま205の前へ行き、インターホンを押した。
閉まったドアがまた開き、隙間から少し下を向いた元宮さんが見える。
「す、すいません…、出しゃばりました。もうしませんので…人形を持つとつい……」
「いえ、そんな事思ってませんよ。あのー、…自分でもなんで来たのかよくわかんないんですけどー」
「お話しませんか?」
「え」
「多分そうじゃないかなって…わからないですけど…」
「多分、そうだと思います」
「どうぞ入って下さい」
元宮さんは部屋の奥へ入っていった。
「……お邪魔します」
205の中へ入った。




