大倉 亘 2
「どうしたんだよ、珍しいな」
「はぁはぁ、泊めて」
「……今ちょっとイラスト作っててさー」
「お願い」
「……。え~~~~~」
「……」
「わかったわかった、入れよ」
仕方ない…、何だかんだ最終的には成真には恩があり頭が上がらないところがある。
靴を脱ぎ、早々に「腹減った」と言って来る。
「あのな、うちは食堂じゃないんだよ。煎餅とカップラーメンしかない」
「うん」
「じゃー、そこ座ってて。掃除したばっかでよかったわ」
「え」
「……何?」
「ど、どこを掃除したの?」
「は?飯あげないぞ?ちゃんとスペースがちゃんとあるでしょうよ」
「スペースって、座るスペースの事?」
「そうだよ」
手鍋に水を入れていると「あ」とまた投げかけてくる。今日はいつもより喋るな。
「何だよ次は」
「そのコップ」
成真は作業台の上に置かれえたコップを見ていた。
「……」
「まだ盗み聞きしてんの?」
「してないよ。水飲んでたんだよ」
「水滴ついてないけど」
「今から使おうとしてたの」
「え、いつも蛇口からそのまま飲んでたのに?てかそんなの使わなくても直接壁に耳をー」
「もうそれ以上言わないでくれ、飯やるから」
「わかった」
湯が沸き、麺を啜り始める。美味そうに食べる成真を見て「今日何も食ってないのか?」と自然に口が開く。
「うん」
そういえばウチに来る事はよくあっても突然きて泊まるってのは今までになかったな…。
「お前、何かあったのか?」
〝ズズズッズズズッ〟と啜り続けている。
「何かあったんだろ」
〝ズズズッズズズッ〟
「喧嘩したんだろ」
〝ズズズッズズズッ〟
「出てけっつって、そんでわかったよ出て行ってやるよ!っつって腹が減ってふと俺の顔を想い出してー」
「お母さんを埋めたんだ」
「お母さんを埋めて疲れちゃってー」
〝ズズズッズズズッ〟
「………は?」
〝ズズズッズズズッ〟
「……今、なんて言った?」
〝ズズズッズズズッ〟
「……」
「……」
こいつは冗談を言うような人間じゃない。
「……あの、病気だったお母さんか?」
〝ズズズッ〟
「うん」
「……そうか。でー、なんで?」
「……」
成真はカップラーメンの麺を口に挟んだまま止まった。その瞬間、目からお粒の涙がこぼれ始めた。
「ま、今日はゆっくり休むか」
「うん、ごめん」と、咥えていた残りの麺を啜り、袖で顔を拭く。
よく見たら服や腕、額にも土がついた跡がある。
「お母さん埋めたってのは、いつの話?」
「今朝」
「……お前逃げ出してきたんだろ?親父さん大丈夫かよ」
「大丈夫って?」
「きっと親父さんが考えた事なんだろ?そんな事してその後喧嘩もして、絶対に情緒不安定になってるだろ。気がさらに狂ってお前を殺しに来たりしないよな?」
「殺されかけたよ」
「は!?」
「それを振り切ってここへ来たんだよ」
「おいやめろよ~!どーすんだよここに来たら~!俺まで危ないだろ!」
「多分だいじょう…」
ドンドンドンッ!
突然玄関のドアを叩く音がした。




