大倉 亘 11
「ちょ、ちょっとちょっと!」
し、信じられねぇ、あの親父を引っ叩くなんて。やっぱ危険なカードだよこの女は!
「おい作太!お前も止めろ!」
「え、う、うん」
いくら女とはいえ、興奮して殴り合っていると抑えるのは簡単じゃない。壁に何度もぶつかりながら二人の間に入る。
「痛い痛い痛い!」
傍から見たらまるで俺がリンチに合っている様だ。
「なんで俺を生んだんだよ!」
ピタリと掴み合いの動きが止まった。
「どうして、……どうして俺を生んだんだよ」
成真が体を震わせていた。
「俺はー、雅子を愛してた、雅子だけでよかったんだ。けど雅子がどうしてもってな」
「よくそんな事を」と、動き出そうとするドラゴンをグッと体を入れて押さえる。
「なんだ、この際だから正直に言っただけだろう」
その親父の言葉に、そろそろ自分の気持ちは抑えきれそうにもなくなっていた。
「……じゃあ聞きますけど」
体が熱くなり口が勝手に喋り出す。
「なんであの時成真を連れ戻しに来たんですか。なんで土下座までして連れ戻したんですか!」
「お前も居ただろう?俺は自分で死ぬ勇気は無い」
成真がこの親父に向かってシャベルを振り翳している光景がフラッシュバックの様に出て来た。
「……」
その時だった。
成真が急に立ち上がり、玄関へ走って向かって行った。
「成真?」
靴を履く成真に親父が焦ったように声を掛ける。
「おい、どこ行くんだ?おい優里止めろ!」
その瞬間、再び女同士のキャットファイトが始まった。
そして家を出て行った成真を追いかけようとする親父の前へ立った俺だが、またこの親父に首を絞められているあの光景のフラッシュバックを起こした。
「ひっ」
「どけよデブ」
「ど、ど、どかないですよ」
「なんだと?お前また邪魔をするんだな?」
「……」
「どけええ!!」
「ひっ」
“バチバチバチバチッ!”
「え?な、何してんだよ作田‥‥」
作田が口の開いた俺の鞄の前で、銃を構える様にスタンガンを握っている。
「ぜ、全員動くなあああああ!」
作太の細い叫び声が部屋に響き渡った。
「……」
「おい、使い慣れてないみたいだな」
そう言って作太にゆっくりと詰め寄っていく進の背中を見て俺は叫んだ。
「作太!押せ!」
“バチバチバチッ!”




