元宮 美千代 3
今だ。
視線がこの作太君って子へ向かっている隙に外へ出た。
「成真さん!!」
二階から見下ろしても見当たらない。きっと戻ったんだわ、あそこへ。
「おい!うっせぇぞさっきから!」
203から金髪もやしが出てきた。こんな状況でこんな奴の相手なんかしてられないわ。
「今じゃないのよーあんた」
「は?」
その時、“バンッ”というドアの音とともに後ろから作太君が走り去っていく。
「え、ちょっと?」
“ねえさん取られた!”と今度は後ろから大柄の相方が下へかけていく。
“バチバチバチッ”とスタンガンを鳴らしながら外へ出てきたクソ野郎に私は別に恐怖を感じない…、けどここはひと先ず離れた方が良さそうだわ。
‥‥金髪に目を遣った。
「あ!金髪君!やっと来てくれたのね!」
「は?」
「この前やっつけてくれるって言ってたじゃない!後は頼んだ!」そう言って金髪もやしの肩をポンと叩き、私も下へ走った。
〝テメェも仲間か?〟
〝なんの事だよ!?〟
〝バチバチバチッ〟
〝ひ―――っ〟
そんな会話が上から聞こえると思わず吹き出した。
「ぶふっ!」
我ながらあの一瞬でよく思いついたわ。まさかあの金髪もやし野郎が役に立つとは、少しは電流でも浴びてもやし炒めにでもなればいいのよ。
「ぶふふっ!」
それにしてもあの二人も何処へ行ったの…。
成真さんの後を追いかけたとしたらー、駅?
息を切らしながら走っていると“こっちこっちー!“と、小さな公園から手を振っている作太君が見えた。
「はぁはぁはぁ、ちょっとあなた、非情な人ね!はぁはぁ、逃げてくらい言いなさいよ」
「すいません、これからはそうします」
「もうないわよ!こんな状況!」
「あ、亘君!こっちー!」
“はぁはぁはぁ”と、とても苦しそうに走ってくる亘。
「え!?私あなた抜きました?」
「はぁはぁ、抜いたよ、俺が膝に手をついてる時に、はぁはぁ」
「お、遅……」
「ドラゴン、あ、じ、じゃなくて、おばちゃんこれからどうする……?」
「……何、あなた達は私の事ドラゴンって呼んでたんですか?」
「あ、いや、その……」
「はぁはぁ、すいません、作太のバカがかってに、はぁはぁ」
「ご、ごめんなさい。でもでも!僕達が言ってるのは良い意味でです!正式にはホワイトドラゴンって意味なんですけど、それはもう本当にレアなキャラで…!」
「作太、もう喋らない方がいい」
「……まぁそうですよね、自己紹介してなかったですもんね。私、元宮美千代です」
「…僕は佐久間作太」
「大倉亘」
「作太君に亘ね」
「え?何で俺だけ呼捨て?」
「私より足が遅いからかな」
「…すげぇ偏見」
「それよりも成真君、お母さんの所に戻ったのかな?」
「あの時のアイツの顔はー、多分そうだろうな」
「警察に連絡?」と言ってポケットに手を入れた作太君に亘が冷静に答えた。
「まだだ」
「何で?だってあいつ達も向かってると思うよ?成真君が危ない」
「いや、まだだ。俺達もあそこに行ってからだ」
“まだだ”という言葉で私はこの先どうなるかを少し理解した。
そう……。
成真さんの友達がそう動いているのならきっとそれが良いのかもしれない。
だとしたらー。
「今大事なのはあいつらよりも先にあの家に行く事ですね」
「そうだね」
そう作太君が言うと公園の外へ走っていった。
「ああーあた走るのかぁ、しょうがねぇ」
再び駅に向かって走り出すと少し前に居る作太君が手を上げている。
「はぁはぁ、何してるの?」
「タクシー来たよ」
「え?」
そうか、確かに今から駅に行って電車に乗ってまた歩くよりここから車で行った方が早く着く。
「美千代さん場所説明できる?」
「うん、さっき行ったばかりだから」
「亘君早くー!」
「はぁはぁはぁ!」
よかった、これであいつらよりも先に着けそうだわ。少しは神様も微笑んでくれたみたい……、
「ちょっとまって、ダメじゃない」
“賃走”の表示が見えた。
「え?あ、本当だ…なんだ…」
「はぁはぁはぁ、くそ!!もう走れねぇよ!」
向かって来るタクシーをただただ見つめていると乗客と目が合った。
「え…」
乗っていたのは成真さんの父親とあの女だった。
「おい今の……見たか?」
「見た。目が合った僕」
「私も」
「ダメだったか……」
膝から崩れ落ちる亘を見て私も立っていられなくなりそうだった。成真さんが今どこでどうしているかはっきりとは分からないけど、今ここで警察に連絡してあそこへ行ってもらうのが一番いいかもしれない。
「作太君…、今連絡を―」
「ねぇ、一人降りてきたよ?」
「ん?」
作太君の視線の先にはタクシーから降りてこちらへ歩いて来る、あの優里という女の姿があった。
「……何する気、あの女」
女を降ろしたタクシーは成真さんの父親を乗せたまま走り去って行く。
「…だ、大丈夫だ。こっちは3人だし」
「うん、今度美千代さんの髪引っ張ったら僕があいつの髪引っ張ってやる」
…今日初めて会った二人なのになんだろう。前から知っている仲みたいな。これが友達ってやつなのかな‥‥。
「あんた達何がしたいの?」
苛立っているのか呆れているのか、どちらとも捉えられる様な言い草で女は目の前で立ち止まった。
「あの家とは関係ないでしょう?」という女の言葉に直ぐ反応したのは作太君だった。
「僕たちは、成真君と関係があるから」
「だったらあんた達も止めなさいよ、あの庭の事がバレたらあいつも捕まるよ?一緒に埋めたんだから」
「成真君がそれでもいいなら成真君に協力する‥‥」
「‥‥」
女は不思議そうな表情で私達を見た。
「あいつだって、今さらお母さんを移したり出来るとは思ってないはずです」と亘が少し語気を荒げた。
「じゃあ何しに行ってるのよ」
「あいつはただ、あいつはただ会って‥‥」
「‥‥」




