三橋 成真 10
耳慣れない多くの階段を上がる音がとても違和感だ。
家の扉はいつもと違い重く感じる。
自分から続いて順に部屋へ入って来る。10畳程の部屋に6人、部屋の匂いが満員電車で嗅ぐような生々しい人間の匂いに変わった。
適当に其々の居場所を決めたまま時計の秒針の音だけがカチカチと流れる。
「……」
自分に視線が集まっているのがわかる。何をどう話せばいいのか。それはまだ自分に問いかけている最中で口は動かなった。
今本当に自分が望んでいることは何なのか…、俺は…何であの時、庭へ行って…。
「今さら動かせるわけないだろう」
胡坐をかいている進が口を開いた。
「自分のした事に後悔してるのか?何を今さ
ら……」
「……」
「お前まさかー、ここに連れてこようとして
ないよな?雅子を」
一点を見つめたまま口を閉ざす自分を見て心配したのか、亘君が「……成真」と小さく発した。
「……」
「ここのどこに置くんだ?見つかってみろ、お前も捕まるんだぞ?お前達もそう思うだろ?」
3人とも無言のまま進を見ていた。
進はそれでも話し続けた。
「それともただ俺の事が嫌いでこんな事するのか?‥‥ふふ、こいつな、小中と学校で虐められてたみたいでな」
「……」
「その頃からだよ、モノを見るような目で俺を見てくるのは」
その時だった。
「……何もしてあげなかったからでしょ?」
そう聞こえた。
まるで縫い糸で引っ張られるかの様に、全員ゆっくりと元宮さんへ顔を向いた。
「あなたが悪いじゃないですか。ちゃんと成真さんに謝って下さい」
「あんたまだ妻演じてんの?」と優里が元宮さんを睨みつける中、進が目の前までやってくる。
「……あの時は悪かったなぁ、成真。すまなかったよ」
「……」
元宮さんの足が見えた。
〝バチンッ〟
「何してんだこのクソ女!」という優里の声で元宮さんと優里の取っ組み合いが始まった。




