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大倉 亘 10

ーーー


「成真さんはそう言って自分の部屋へ戻られました」


「そうですか…。え、じゃあ成真は今自分の家に?」


「このアパートって壁が薄いんでよく隣の音が聞こえるんです」


「…はい?」


「水出す音やらくしゃみやら。でも暫く無音が続いたので気になって出てみたんです。そしたら成真さんの部屋のドアノブに私が作った人形が掛かっていたんです。このメモ紙と一緒に」


 女が持っていた人形に張り付いていた小さな紙、そこには〝帽子も作って欲しいです〟と書いてあった。

「帽子…」


「成真君、確かにバイト以外の日は帽子してるよね?」


「私その後直ぐに探しに行ったんですけど、50メートル位走ったら心臓がバクバクしちゃって。落ち着かせる為に自分の作業に戻ったんです」



 色々と話をされたがつまり成真はもうここには居ないという事だ。



「やっぱりあいつは親父の所に行ったんだな」

「もう着いちゃってるかな?」

「だろうな…」


 今どんな状況になっているかはわからないが事が大きくなる前にあいつを連れて帰る事が一番だ。


「私の話が長かったからですよね?ごめんなさい。こう見えてお喋りで……」



「……」

「……」


 ああ、だいぶ時間を取られたよ……。



「どうするつもりです?これから」


「まぁ、一番は成真がどうしたいかですけど。…親父さんの家覗いてみます、いずれにしても成真があの家に居るのは危険です」


「場所わかるんですか?」


「ええ。一度連れ出した事あるんで。ありがとうございました。作太、そろそろ行くぞ。馳走様でした」


 家を出ようとした時、「素敵ですね」と女が呟いた。


「……え?」


「私にも何か出来る事があれば言って下さい」


「は、はい」





とりあえず部屋を出て成真のアパートの前で作戦会議をする。


「亘君の顔も知られてるんでしょ?どうやって攻めるの?」


「んー。普通に行って普通に“おい成真、帰るぞ”って……、またお前かって殴られそうだな~」


「じゃあまず俺が見てくるよ。」

 平然とした顔でそう答える作太。


「どうやってだよ」


「ポスティングのバイト装って」


「そんな奴が庭とか家とかジロジロ見てみろ、明らかに怪しい」


「あ!じゃあボール投げて敷地内に入っちゃって取りに来ましたって」


「住宅街のど真ん中で不自然過ぎる。それに中入った後はどうするんだよ?何か考えてるのか?」


「……。はぁ、手持ちのカードが少なすぎるよ」


「俺大倉亘のスタンガンカード使うか、パワー最強の」


「力尽くで行く気?ダメだよ、ガードとスタミナが弱すぎるよ」


「それさ、普通に言ってるけど普通に失礼だからな?」


「まって、今持ってるカードはもう一枚ある」と言い、ゆっくりと後ろのアパートを見上げる作太。


「……え」


「……スペシャルカードがあるじゃん」


「おいおい、白ワンピの人形使いの事か?」


「攻撃力、防御力、スピード、HP、そして必殺技、すべてが未知数……」


 作太の顔つきが対戦中に見せる本気モードの表情へと変わっていった。俺にはわかる、こいつは今興奮状態だ……。

「全部低い可能性もあるぞ?差し詰めホワイトパペットレディーカードってか?名前も変で弱そうだしやめておこう」



「違うよ。あれは……




ホワイトドラゴンだ!!!」






「は?」


 作太は目を輝かせ、再び201の部屋に向かって走り出した。


「おい!落ち着けって!」

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