大倉 亘 8
ひょこっと何の動物かわからない人形が顔を出す。
「……」
「……」
“あなた達、成真さんのなんなんですか”
そう人形が喋ると、作太が「あの!」と言って人形へ向かって走っていった。
「おいっ作太!」
205の扉は直ぐにまた閉まったが作太はドアの隙間へ顔を引っ付け「あの!すいません!」と声をかけ続ける。
「おい、どうしたんだよ作太!」
「だってこの人なら何か知ってるかもよ?何処に行ったとか」
「ただの隣人だよ!」
「だって人形プレゼントするくらいだよ?」
「それはー、またちょっと違うような…」
“何でその事知ってるんですか?”
あちら側からも顔をくっつけているのか声が隙間から聞こえてくる。
俺はこの不気味な女がどうも苦手で近づきがたいが、この作太の感じを見ると全然平気そうだ。今だけは先陣を切る作太がとても頼もしく見える。
「あ、あの、僕たち成真君の友達です。成真君がどこに居るか知ってます?」
“証拠は?”
「はい?」
“ショーーコ。本当に成真さんの友達って言うショ―ーコ”
「証拠…」
そんなもんどうやって証明すんだよ、やっぱりくるってるなこの女は。
「おい作太、もう行こうぜ」
「あっ」
「何?」
「あるよ、証拠」
「は?」
作太が取り出したのは自分の携帯だった。
「大会前に撮ったエントリー写真、3人で映ってるやつ」
「そんなの撮ったっけ?」
作太の携帯画面には笑顔の成真、硬い表情の作太、そして不愛想な顔をした俺が写っていた。
「あぁーそれか」
作太がドアスコープへ向かってその画面を見せる。
「僕たち成真君が働いてるゲーム屋でいつも遊んでるんです、成真君の出勤前なんかは3人でカードしてるんですけど、あ、カードゲームしてるんですけど成真君は本当強くてエンドカード出すのが上手いんです。それに比べて最近この亘君はサインドカードばかり自慢するかのように使い始めて負けが続いて
て―」
「おい作太!何の話してんだよ!」
「え?だから友達って言う証拠を…」
“ガチャ…”
と音がし、扉が少し開いた。
隙間から見えたのは人形の顔ではなく、女の顔だった。
「どうぞ、入って下さい」
扉が静かに閉まった。
「……入ってだってよ、どうする作太」
「入るでしょ。もしかしたら成真君いるかもよ?中に」
「何されるか分からねぇぞ。もしかしたら中で成真が死体で居たらどうすんだよ。親父どころじゃねぇぞ」
「お邪魔しまーす」と扉を開ける作太。
「おいおいおい」
「大丈夫だって」
作太に促され俺は恐る恐る205の中へ入っていった。




