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第6話  エリクサー 天然温泉 フェンリル

森が色づき、秋の気配が濃く近づいてきた。「もう一年になるのか」秋らしくしばし物思いに耽ったりはするが、半神となったからにはもはや年を取らない。とはいえ、サンタのおじいさんから若い美女、さらにはドラゴンにすら変身できる訳で、外見の年齢はもはや意味をなさなかった。


しかしながら、アルトの経験自体は未熟と言えるもので、料理にしてもフレンチにイタリアンましてや日本の懐石料理など食べたことはなく、クリエイトで再現できるのはもっぱらジャンクフード中心となっている。


お酒にしても20歳になったばかりだったのでビールぐらいしか知らない。アルトの両親は既に他界しており、兄弟姉妹や彼女もいないため天涯孤独。研究に忙殺され、贅沢をすることはほとんどなかった。様々な意味で、未熟さが際立っていた。


さて、世界樹の材料はサーシャからふんだんに提供されるので錬金魔法に手を出してみようかと思ったのだが、意図せず圧倒的な魔力でエリクサーが瞬時に生成してしまった。なんとも、「究極であるべき到達点が一瞬」である。そもそも世界樹の材料なしでも、アルト自身の魔力だけでエリクサーが生成できてしまうのではないか、そんな超絶レベルなのである。


ポーションなどはエルフたちが世界樹の落ち葉や森の薬草から作っており、その仕事を奪うわけにもいかない。それに、金も剣も剣を作る金属もいらない。要するに、アルトは錬金術を極めてしまったとも言える。


それでは料理でもと考えてみるが、エルフたちが色々と差し入れてくれたりする。むしろ、アルトがクリエイトするジャンクフード、特にスパゲッティナポリタンがバカ受けでエルフたちによくねだられ、何だかお腹いっぱいだ。


そこでドラゴンの姿になって、これまで探検してこなかった山脈の方面を飛び回ってみた。すると、大きな滝を発見した。その滝の水はなんと、お湯だった。そう温泉である。天然温泉を発見してしまったのだ。


いやもう、矢も盾もたまらずストレージにタップリなみなみと温泉を取り込み、自宅横の露天風呂へ注いでいると、ちゃっかり匂いを嗅ぎつけたカイザーも来た。お土産に龍酒を持ってきてくれたものだから、湖面に映える夕日から満天の星空に至るまで長々と温泉を楽しみ、アルトはふと、一年の歳月を振り返ってみるのだった。


翌日はエルフの住む森の南側、つまり美しい湖が望めるように、森の東側と西側にそれぞれ30人は浸かれる大きな露天風呂を創造してあげた。お湯は当然、温泉のものだ。日替わりで男湯と女湯を交換しながら利用している様子だった。この湯は冷めてから世界樹に捧げると、サーシャは非常に心地よい成分が含まれていると喜んだ。


エルフの風呂には、湖の方面以外、しっかり衝立をして目隠しをした。これは、アルトの風呂にはない。360度の視界を確保するためだ。魔力をわずかに開放するだけでエルフたちは見えなくなるので問題ない。


サーシャは風呂が大好きで、アルトと一緒に入ったりエルフ側の風呂に入ったり自由にしている。ちなみにサーシャはその美貌が一段と冴え、何となく——いや確実に——女神さまに似てきた。


アルトの仕事といえば、この温泉の湯を継ぎ足すくらいで、あとはサーシャやサクラとまったりゴロゴロするのだが、この静かな時がたまらなく至福だ。アルトは決して「世界最強」を誇示したいわけではないのだ。


秋も深まり森の奥を探検していると、瀕死の子犬を見つけた。冬ごもり前の食糧確保に忙しい熊に襲われたらしい。アルトたちに気づくと、熊は逃げ去った。


子犬を鑑定すると「フェンリルの子供」であることが判明した。すかさずストレージにあるエリクサーを与えると、みるみるうちに回復し元気になった。親の居場所をサーチしたが、近くには見当たらなかった。お腹が空いてそうなのでログハウスに連れて帰ることにした。


フェンリルの子供はよく食べた。異世界の犬なので、チョコレートや玉ねぎなども問題ないと鑑定さんが教えてくれたので、ハンバーグなども与えてみたが、とにかくよく食べた。アルトは時折、親の居場所をサーチしてみるのだが、どうにも見当たらない。

森の中にそれほど強力な魔物が潜む気配はない。毛皮目当てで神獣が人間に狩られるということがあるのだろうか。


アルトはこのまましばらくは家の子として保護し育てることにした。名前をポチにしようとするとすごく嫌な顔をされたので、「ハク」と名付けた、白いからな。元気になったハクはサーシャやサクラとはしゃぎ回って楽しそうに戯れている。新しい家族が出来たようだった。


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