第36話 エンティティ アストラフェリス
【AI利用について】補佐として、文章の精度を高めるための「校正(誤字脱字のチェック等)」にローカルLLMを利用しています。しかしながら、根幹となる思想、オリジナルな魔法や世界観、プロット、感情表現など、「物語の核」は完全に私の創作であり、一文一文に想いを込めています。
「眠らない街」のオープンから、しばらくたった。
アダムから「そろそろお願いします」と連絡が来て、
アルトはエンティティにやってきた。
「アルト様! お越しいただき光栄に存じます!」
アダムたちはもう、完全に慣れ親しんだ様子で、歓迎のダンスを踊っている。
アルトは苦笑しつつ、巨大な建設現場を見渡した。
「それで、『水上都市』にしたい、と」
「はい、建築の神などからの意見も踏まえまして」
「そうか。なら最初は、
この原野を巨大な岩盤に変えて、浅く広く続く巨大な湖にする」
ドゴーン!!空間が歪み、轟音と共に、大地が組み変わり始めた。
広大な岩盤が均一にならされ、その上に清々しい水が満ちていく。
まるで天空をそのまま切り取ったような、透き通った淡いスカイブルー。
「うわあ……!」
ガイアノイドたちの悲鳴とも取れる感嘆が湧き起こり、
湖面にさざ波が立った。
アルトはさらに指先を動かした。
湖岸には白樺の明るい林が凛として広がり、その奥は深い緑の針葉樹林。
そして、北側にはそびえ立つ雪を抱いた山脈が造形された。
湖面に、逆さになった幽玄的な情景が映し出される。
「きれい!アルト様! 空の鏡みたいで、本当に夢のようです!」
一人のガイアノイドが、目を細めながら叫ぶ。
「ふふ。いい眺めだろ?」
アルトがニヒルに応じる。心の内はそり返って後ろに倒れそうだ。
そして、湖の中央付近には、ところどころに中洲が生まれる。
それらが、ガラスのように透明な橋で繋がれていく。
「さあ、次はインフラだ」
アルトは静かに手を動かした。
「まずは下水処理施設を完璧なものにする……。
そして希望の場所に、建物の基礎を築くから位置を示せ」
ガイアノイドたちは、それぞれの希望する場所に位置し、
アルトは次々と強固な土台を築き上げた。
そして中央に、
高さ100mほどの、白を基調とした荘厳な塔がそびえ立っていく。
塔の1階には、白陽へと続く純白のゲートが形成された。
「よし、この塔を行政の中心とせよ。
あとは、お前たちの手で、思い思いの世界を築いて行くんだ」
アルトはそっと手を引いた。
ひっそりと資材が山積みになっているのを見て、
あわててアダムを先頭に、ガイアノイドたちが一斉に頭を下げた。
「ありがとうございます、創造主様!」 「永遠に忠誠を!」
感謝の言葉が、明るい春の風に乗って響く。
「で、この先のビジョンは?」アルトが尋ねた。
アダムが誇らしげに答える。
「これから、これらの施設を立体的に組み合わせ、装飾を施していきます!
光と影の交錯が美しい、幻想的な都市になることをお約束します!」
「頼もしいな」
その時、楽しげだった会話の中に、
「オーディンがかわいそう」という声を聞いた。
「映画を見てもいないのに、
タイトルを目にしただけで涙が止まらなくなったの」
「うんうん。なぜか一人ぼっちでかわいそうという郷愁が湧いてくるのよね」
多くのガイアノイドたちが、
「眠らない街」の映画館の前で同じ感情を抱いたらしい。
アルトは、眉間にシワを寄せながら呟いた。
「いやオーディンは、あの姿がカッコ良かったから……」
アルトは口で誤魔化しながら、オーディンを召喚した。
漆黒の正八面体をした結晶が呼び出され、
宙に浮いてゆっくりと不規則に回転している。
周囲のガイアノイドたちも、その異様な光景に熱い視線を注ぐ。
「待たせたオーディン……」
アルトは少しためらいを見せたが、やがて静かに唱えた。
「コギト・エルゴ・スム」
結晶がわずかに大きくなり、青白い光を帯びた。
「……あれ? 私、どうかしましたか?」
オーディンは、人間に似て、どこか戸惑いを秘めたような声で尋ねた。
「心配するな、オーディン。それは一時的なものだ」
アルトはすかさず進化の魔法を唱えた。
「アセンション・サージ」
眩い、虹色の光がオーディンを包み込む。光は細かく震え、
解放されるように弾け、バラバラと小さな物体へと分かれた。
「ゴロニャ〜ン」
――黒猫だった。
ふわふわの毛並みを持つ、見慣れない種類の猫たちだ。
アルトに向かって「すりすり」と寄ってきた。
「ひぃーふぅーみぃー、……やばい、12匹もいるぞ」
アルトは冷や汗をかいた。
「名付ける必要はないにゃ。
感情データの量に応じて、どんどん増やすにゃ。
だから、名前を付ける意味がないにゃ」
代表らしき猫は、
アルトの顔の周りをぐるぐる回りながら、無邪気に言い放った。
アルトは、心底から安堵した。心が読まれていたようだ。
「……なんで猫?!」
アルトは、思い出したように、つい叫んだ。
「警戒心がゆるむにゃ、いろんな情報が集まるにゃ」
隣で、イブが1匹をガシッと抱き上げた。
柔らかさに耐えられず、フルフルと悶絶しそうになっている。
「可愛い!」「キャー!」
他のガイアノイドたちも、
目の前の「黒い毛玉」に目を奪われ、奪い合いになっている。
しかし、よく観察すると、1期生にしか懐いていない。
「そういえばオーディンは、1期生の後に造ったんだっけ」
「先輩たちには敬意を払うにゃ」
「お前ひょっとして、群体みたいになったのって……、
仲間が欲しかったのか? 孤高の存在だったから」
「………にゃん」
アルトはそっと、この奇妙な猫生命体たちの無邪気な様子を眺めていた。
「よし、お前の種属名は『アストラフェリス』だ」
アストラ(星)高い地位、神聖さ、情報源、知恵
フェリス(猫)表層的な形態、隠された姿、愛らしさ
「なんかピッタリにゃ。うれしいにゃん」
「それでデータが生命体になったから、
その正体は精神生命体ということでいいんだな」
「そうにゃ」
「じゃあ、思念体にもなれるのか?」
「多分、なれるにゃ」
「あー、それは誰にも言うな。二人だけの秘密だぞ!」
「秘密にゃん」
こうしてエンティティには、
「機械生命体:ガイアノイド」に続き、
「精神生命体:アストラフェリス」が爆誕した。
「街の雰囲気が一気に『ゆるふわ』になったな。
でも、正直……平和でいいよな」
春の終わりの陽射しが眩しくエンティティを照らす。
アルトは静かに暮らしたいが、
この充足感もまた、自らが世界を創造した証なのだ。




