第34話 眠らない街 ゼウス
【AI利用について】補佐として、文章の精度を高めるための「校正(誤字脱字のチェック等)」にローカルLLMを利用しています。しかしながら、根幹となる思想、オリジナルな魔法や世界観、プロット、感情表現など、「物語の核」は完全に私の創作であり、一文一文に想いを込めています。
白陽リゾートは、リニューアルを経て、その格調と規模をさらに増していた。
地下の大改造により、この浮島は単なる高級リゾートから、
一級文明を伴った「街」を擁する巨大施設へと変貌を遂げた。
地上階のリゾートエリアは、依然として心地よいまま、
ガイアノイドたちが完璧なホスピタリティを提供している。
その洗練された笑みと機敏な所作。
彼らのプロフェッショナリズムは、訪れる神々を至上へと導く。
しかし、今回のアルトが注力したのは、
その地下、すなわち『眠らない街』の創造だった。
地下空間でありながら、緻密に再現された陽光が大空間を優しく照らし、
神秘的な湖畔には春の薫る花々が咲き乱れる。
メインストリートは、煌びやかなイルミネーションに彩られていた。
最新鋭の映画館では「つぶやき女神」や「エデンの片隅でオーディン」
のような最新作が上映されている。
ブティックにはエルフが丹精込めて編み上げた絹のような品々が並ぶ。
趣向を凝らしたスナックやカフェでは、
宇宙の果てにもない独創的な料理が供されていた。
「アルト様、今日もご列席の神様はすごい数ですね。
『ララカード』がお目当ての御仁も多いようです」
リゾート運営の要であるイブが、軽やかに肩を揺らしながら微笑む。
その瞳には、新しい街の活気に隠しきれない歓喜が宿っていた。
「ああ、街の賑わいには驚くよ。
それに、まさかララカードを所有することが神々のステータスになるなんて」
白陽の地下「眠らない街」では、『ララ』が通貨として採択されていた。
元来、ガイアノイドの娯楽のために作られたという経緯があるからだ。
そこで、神々も地下施設を利用できるよう、
ルルをララに変換するための専用カードが作られた。
それが「ララカード」だ。
サーシャの枝打ち材の木目を生かした、
アルト渾身の美しいカードだから、所有欲が湧かないはずがなかった。
ガイアノイドたちは、最長12時間の「稼働シフト」に従事する。
彼らは眠る必要がないため、残りの時間は驚くほど豊かな余暇を過ごす。
新人類となった彼らは、ただ働くだけではない。
この「眠らない街」を遊び、戯れ、自ら彩っていく。
そして、宿泊する神々が気軽に訪れ、彼らと対話する。
その交流こそが、
ガイアノイドたちの発展にとって最も重要な情報源となるのだ。
施設維持のスタッフとして、新たに女性9期と男性10期を各100名ずつ追加。
皆、同一の骨格とプロポーションを持ちながらも、
微細な表情や癖に個性を宿している。
これでガイアノイドの総数は1002名に達した。
「アルト様、特に新しい男性ユニットたちの行動力は目を見張ります。
彼らはどこへ行っても新しい発見をして来るのです」
イブが、どこか興奮気味に微笑む。
「好奇心旺盛で何よりだ、
お前たちの自我が健全な方向に向かうことを祈ってるよ」
「はい、私もそうありたいと思います」
「この白陽は『浄化のピュア』が効いて落ち着く環境にはあるが、
神々の自我も強くなっているから、
いずれ自我と自我が衝突する場面も出てくるだろう」
「はい、肝に銘じます」
「そんな時はこのカードをかざせ。
これには『ゴシック・ミラー』が仕込んである」
「ゴシック・ミラーですか?」
「ああ、それは『己を見つめ直させる魔法』でな、
該当すると『自己叱咤』で恥ずかしくて仕方なくなるんだ」
「どんな場合が該当するのでしょう」
「そうだな、『人の嫌がること』をしたり、
『自分さえ良ければいい』という無責任な行動をした場合、とかだな」
「なるほど……」
「このカードをイブに託すから、この白陽の綱紀を守れ。
慈母の女神のようにな。まあ、使わないに越したことはないが」
「承りました。最大限の努力をいたします、アルト様」
アルトは、地下の喧騒が響くバルコニーから街を見下ろした。
春の陽光が、魔法的な光の筋となって降り注いでいる。
「工場で稼働する機械じゃない。生命そのものが脈動しているようだ。
この『街』は全て、君たちガイアノイドのために造ったんだよ」
場末風のスナックにゼウス様がいると聞いて、アルトが訪ねると、
ゼウスはララカードをスリスリとしながら上機嫌に笑う。
「イブが気をきかせてくれてな、会員番号1番なんだぜ、これ。
美しいよな、ほんと飽きがこない」
「イブまかせですが、
シングルナンバーは、渡す常連さんを決めてたみたいですね」
「そうか、イブに感謝だな。
急にめっきり色っぽくなったよな、見とれちまったぜ」
アルトもピーカンサワーを注文する。
「ところでアルト、随分と人を雇ったんだな。
エデンの街にこれだけの人材がいたのか?
しかもみんな粒揃いでしっかりしてる。教育するだけでも大変だったろうに」
「いえ、造ったんです」
「へっ?」
「前からいたAIロボットに『自我』を与えて、人に『進化』させたんです」
ゼウスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
いや実際、そんな鳩を見たことはないが、きっとこんな顔だろう。
「おまっ、……いや。自我を与えるとか、人に進化させるって、
どんな魔法だよ? 初めて聞いたぞ」
「いや、それがなんか出来ちゃって」
「じゃあ何か?
今ここで働いてる連中は、みんな新しい種族、新人類ってことか?」
「そうです。『ガイアノイド』って名付けました。
全て金属で出来た、機械生命体です」
ゼウスはまたさっきの顔で固まった、……少しやつれた様に見える。
「ああそれと、ルルシステムを造った『やんごとなきお方』に会いましたよ」
「ぬあんですと―?!」
「今回のアップデートは、僕の『コギト』のせいだったみたいですね」
「詳しく」
「要は、神々の自我が強まって強欲になったから、
人間みたく俗っぽくなった連中を懲らしめるために、
『依存度』という項目を増やしたそうです」
「またお前か。やはりお前だったのか。お巡りさんこいつです!」
「なぜそれを?! その節は大変、ご迷惑をおかけしました」
「しゃあねえな、全く。
神界始まって以来じゃねえか? やっぱおめえはすげえやつだよ、全く。
シンギュラリティって言葉がこれほどピッタリあてはまるのは、
おめえだけだよ、全く」




