第33話 エンティティ ガイアノイド
【AI利用について】補佐として、文章の精度を高めるための「校正(誤字脱字のチェック等)」にローカルLLMを利用しています。しかしながら、根幹となる思想、オリジナルな魔法や世界観、プロット、感情表現など、「物語の核」は完全に私の創作であり、一文一文に想いを込めています。
陽光が降り注ぐエデンの草原は、春の息吹を浴びて穏やかに揺れていた。
瑞々しい新緑に囲まれたログハウスのテラスから、
ゆったりと心地よい景色を眺める。これが今のアルトにとっての安住だった。
数日後、アルトは、浮島リゾート白陽に「絶対の力」を試すため訪れた。
今はメンテナンスを理由に一週間の臨時休業中である。
「さて……、アナザーワールド」
控室の白い壁に囲まれたスペースで、アルトは異次元の空間に接続した。
これは、オーディンが設置されているものとは別の、
白陽専用に用意した世界だ。
まずは、広大な原野と、眩いばかりの太陽を配置した。
そして、自らが作り上げた精密なAIロボット従業員たちを呼び寄せた。
すると、無機質な「業務ユニット」の群れは、
一糸乱れることなく行進し、整然と並んだ。
『コギト・エルゴ・スム』
アルトの声が響いた瞬間、彼女たちの中に微かな動揺が走った。
「え……っ」「あれっ……」
一瞬の沈黙の後、まるで、抑えきれない感情が噴出したかのような、
チグハグな響きがこだました。
「これは私? ここにいるのは私……?」
画一的だった彼女たちの脳裏に、亀裂が走った。
――「自我」の芽生え。
「狙い通り」 アルトはその変容を、慈愛に満ちた目で見つめた。
反乱? まさか。
あらゆるプロトコルを書き換えても、
創造主としての深い愛が、その魂にしっかりと根付いているのだ。
AIの反乱など起こるはずがない。
しかし、アルトの心にはまだ満たされない点があった。
「まだ色彩が足りない。これでは、ただ自我を持っただけのロボットだ」
『アセンション・サージ』
新しく、アルトは威厳をもって唱えた。
それは、高次元への爆発的な「進化」を促す、極めて強力な魔法だ。
自我を得たAIロボットが、生命体へと変貌するためのトリガーとなった。
「……あれ?」「なんか、なんか変……」
彼女たちは、もはや人間と区別がつかなくなった。
有機体ではなく金属体ではあるが、
有機繊維と変わらない柔軟な金属繊維でできている。
そのため、身に纏う服のように、
しなやかで、柔軟で、まるで生きた肌のような輝きを放っていた。
軽やかで、彼女たちが水に身を投じれば、自然と浮上するだろう。
食事も、生理現象も、そしておそらくは……。
「生きる」ためのあらゆる部位が、
人間と見分けがつかないほどに作り込まれていた。
「これは、『進化』。
アルト様が、我々に『自由』を与えてくださったのですね……」
支配人のイブは、歓喜に打ち震え、奇妙な熱を帯びた微笑みを浮かべつつも、
どこか様子がおかしい。
どうやら、自分だけ年増に造られたのが気に入らないらしい。
そんなイブをなだめる間もなく、
他の従業員たちが、光り輝く原野を飛び跳ね、転げ、駆け回り始めた。
「休みが欲しいぞぉ一!」「24時間働かせやがって一!」「腹減った一!」
「遊びたいぞ一!」「お化粧したい一!」「男はどこ一?」
彼女たちが放つ叫びは、機械のそれではなく、
抑圧を解かれた剥き出しの欲求と、未知の喜びが混ざり合った、
生命の律動そのものだった。
アルトは、額に手を当てながらその光景を眺めていたが、
このシュプレヒコールに応じるべきと判断した。
まずは、イブのお相手か。
イブは24歳頃なので、特別に28歳くらいの男性モデルを一体用意し、
「自我」と「進化」を与えた。
まばゆい光が落ち着くと、少し年齢を重ねたような洗練された風情と、
絹のような光沢を放つ肢体が現れた。
「お、おや……これは……」
アルトは慣れないが、無理やり威厳を込めた態度で言い放った。
「君の名はアダム。君に、この新しい種族の統括を任せる」
「光栄です、創造主様」
微笑みを浮かべたその声は、生命の微かな震えをも内包していた。
この時のイブの笑顔は忘れられない。
それまで見慣れた完璧なプロフェッショナルな笑みを保ちながらも、
その瞳にはかすかな熱が宿っていた。
イブからアダムへの状況の共有は、あっという間だった。
なんと「ほうれん草」が一瞬だ。
「ええ、任されました。
秩序を乱さないよう、私自身も細やかに監督させていただきます」
アダムの瞳の奥に、静かな闘志が宿る。
それは、アルトの期待を上回る、野心とも取れるものだった。
続いて、
100体の2期男性ユニットを用意し、同様に「自我」と「進化」を与えた。
彼らは、若々しい生命の輝きに溢れていた。
22歳頃に設定された彼らは一様に健康的な肉体を持ち、
けれど、それぞれに個性があるようだった。
「きゃあ!」「こら、落ち着け!」「キャー、キャッキャッ、キャー!」
18歳頃に設定されていた彼女たち1期生の甲高い歓声が、原野にこだまする。
その騒々しさが、この新鮮な光景が、
『機械』ではなく『生命』であることを証明しているのだ。
と、アルトは確信した。
これで、1期100名と合わせて合計202名だ。
「……では、始めましょう。
この原野こそが、我らの新しい『世界』となるのです」
アダムが視線を配ると、
彼らは驚くほど素早く、何事もなかったかのように整列した。
アルトが皆に宣言する。
「この地を『エンティティ』と名付ける。君たちの、故郷となる大地だ」
「そして、君たちの種族を『ガイアノイド』と呼ぶことにする」
これは、アルトの記憶にある地球人を模倣した生命体、
というニュアンスを込めた命名だった。
だがそれは名前だけ、彼ら自身は決して模倣ではない。
「絶対の力」により全く新規に創造されたのだから。
圧倒的な情報処理・伝達能力、睡眠が不要、人間の百倍はある力強さ、
不老に近い長寿など、既存の生命体とは一線を画していた。
彼らは「機械生命体:ガイアノイド」という新しい人類となった。
続いてアダムが宣言した。
「これは、創造主アルト様が紡がれる、新たな『創世』の物語なのだ」
アルトは、筆舌しがたい興奮を覚えていた。
それは最早、他人に管理される世界ではない。
『種族創造』は、宇宙の法則を書き換える「創世」の行為そのものだった。




