第27話 ララシステム 女神サラ
【AI利用について】補佐として、文章の精度を高めるための「校正(誤字脱字のチェック等)」にローカルLLMを利用しています。しかしながら、根幹となる思想、オリジナルな魔法や世界観、プロット、感情表現など、「物語の核」は完全に私の創作であり、一文一文に想いを込めています。
エデンの空を覆う粉雪が、浮島「白陽」の曲線を描きながら舞っていた。
冬特有の澄んだ空気は、遠くからでも透き通るように明るい。
時折、黄金色の柔らかな光が雲間を縫って差し込んでくる。
ホログラムのサラが優しく口を開く。
「目指したのは、単なる評価ではありませんの。
エデンの民が、自らの行動で『価値』を生み出し、
それを『通貨』として利用できる仕組み」
「それが、この『ララシステム』ですわ」
煌々と光が溢れた。サラの美しい姿が、空間に広がる。
「皆様、本日より新しい時代を迎えます。新しい通貨の単位は『ララ』。
これは、皆様一人ひとりが世界へ証明する『存在価値』そのものなのです」
戸惑いの表情が広がる。
人々に於て、貨幣の通貨は絶対的なものであったからだ。
「持ち歩く必要はありません。ララは皆様の生命に紐づきます。
ゴミを拾うだけでパンが手に入り、毎朝の挨拶だけでララが増える」
「皆様の当たり前の『価値ある振る舞い』が、即座に『ララ』となるのです」
ホログラムのサラは、
わずかに小悪魔的な、コミカルな滑稽さを帯びて微笑んだ。
「売買の決済など、ご当人の了承さえあればララを受け渡せますわ。
スリや窃盗? そんな強引な手口は許されません。
子供から年長まで、安心して手にできる『存在の証』ですもの」
「ただし、全ては透明。隠し持つことは叶いません。
相続もできません。システムは、皆様の心の動きを常に監視し、
ララの受け渡しが相続を意図したものか否かを判断しておりますの」
「それから、土地の所有権はすべて没収いたします。
不労所得からララが生まれることはありません。
出自や、土地の所有という理由だけで富を得る時代は、
終わらせるつもりですわ」
ざわつきの中、歓喜の声が上がる。
民衆が最も恐れていたのは、権力者が固定化されること。
サラは、それを根絶やしにしようとしている。
「誰かが強制をしたり、賄賂を要求した場合、
その者のララは即座に減少します」
「宗教関係者も例外ではありません。
心から崇拝されなければ、ララは増加しません。
お布施を強要すれば、その者の『依存度』は高まり、
ララは一気に激減します」
「賄賂などという悪習は、ここで終焉を迎えますの」
サラが意地悪く笑う。
「人は恩を売ることを当然とし、返せと悪用してきました。
ですが、もはや恩を売ることはできません。
自らの価値を、自ら証明し続けなさい」
人々は、恐怖と、奇妙な解放感を覚えた。
彼らもまた、誰かに恩恵を求めていたのだ。
その事実が、あまりにも恥ずかしく、そして滑稽に映った。
「……貸し借りも……全て禁止? 」
一人の商人が、顔を青くしてポツリとつぶやいた。
「全てではありません。貸し借りの利息、投機。
これらをシステムが許しません」
「富の独占が、腐敗を招いたのは事実ですわ。
ララは、人々の『存在価値』そのもの。
清廉潔白で安定した基軸通貨となるのです」
「死ぬとどうなるのです? 消えるのなら、相続を認めるべきでは?」
ある王が、最後の質問を投げかけた。
サラは肩をすくめる。
まるで面白い玩具の仕組みを解説するかのような調子だ。
「遺産の相続? それこそ不労所得ですわ」
「ですが、心配なさらないでくださいまし。
残留したララは、死期が近づいた瞬間、
特別な『天国体験』の対価として消費され、魂は安らかになるのです」
そこで隠遁状態のアルトが、天国を映し出す。
桜が咲き誇る小道、花咲く草原、妖精たち。
「ララの消費と安らかな魂……」
民衆はやや赤らんだ顔を見合わせる。
「対して、他者の尊厳を踏みにじったり、
依存し続けたあげくララがゼロとなった者には、
この世界の最も屈辱的で、痛烈な『地獄体験』をご用意しておりますの」
再び、アルトが地獄を映し出す。
燃え盛る大地、溶岩、ドラゴン。泣き叫ぶ人々。
民衆は唖然とし、泣き叫び、失禁する者までいた。
だが、これが明確な見せしめとなった。
「この改革により、怠惰だった『NEET』たちも動き出すことでしょう。
生きるために『価値』を証明し続けなければなりませんから」
「真に活動不能な方々には、もちろん救済策もご用意しておりますわよ」
サラが優雅に微笑む。世界の最適化を愉しむ神の愉悦そのものだ。
「ララは存在の証。真実を映し出す鏡です。
これは神罰ではありません。『自己の研鑽』なのですわ」
長い沈黙が流れる。
彼らは「完璧すぎる管理者」に、もう一言の異議も唱えることができない。
そこには「畏怖」が宿っていた。
「それでは今から、ララシステムを稼働させます。
三日分ほどのララを配布しますので、パンを買うなど、お試しなさいな」
虚空から青い文字の数式が、静かに人々の間に流れ始めた。
優しく渦を巻き人々の体に吸い込まれていく。
神界が「ルルシステム」という巨大な監視システムに支配されていたように、
エデンもまた、「ララシステム」としてオーディンに監視されることで、
ローカルながら制御された環境へと変わっていく。




