第26話 ラグナロク
【AI利用について】補佐として、文章の精度を高めるための「校正(誤字脱字のチェック等)」にローカルLLMを利用しています。しかしながら、根幹となる思想、オリジナルな魔法や世界観、プロット、感情表現など、「物語の核」は完全に私の創作であり、一文一文に想いを込めています。
冬の終わりの光が、露天風呂を優しく射抜く夕暮れ。
サラとサーシャは水着姿。
「お父さん、あたしも一緒にお風呂に入りたい」サーシャが甘えてくる。
「そうだな。ドタバタしてて、広げるの遅くなったわ」
アルトは三人用だった露天風呂を五人用くらいに広げた。
「あらアルト、随分と節約家ね。もっと広くすればいいのに」
サラが、湯気越しに楽しそうに囁く。
「……『起きて半畳、寝て一畳』このエデンの在り様を体現させてるだけだよ」
アルトの冷めた言葉に、サラは一度だけ驚き、それから大笑いした。
「よく言えるわね。ところで、他の座右の銘とかは?」
「食う、寝る、デブる」アルトが意地悪く返す。
するとカイザーが、懐かしい少年のような眼差しで、深く感銘を受けたようだ。
「……なるほど。極限状態における本能を極めた、哲学じゃな」
「他に『明日できることは今日しない』って、自分で言っておいてだけど……」
アルトは、その屁理屈のせいで部屋がどれだけゴミだらけになったか、
を思い出し、思わず眉をひそめた。
「それは、ダメよ」サラはやれやれと、首を振る。
「お父さんったら……」
サーシャは両手のひらを上に広げ、可愛らしく肩をすぼめた。
「フンッス」サクラは立てた親指を下に向けて、鼻を広げた。
―― 場面はそのまま露天風呂 ――
「それで、エデンの人々に対するララシステムの説明会だけれど、
サラに一人で担当して欲しいんだ」
アルトが、湯気の中で静かに切り出す。
「えっ、何? なんで? どういうこと?」
サラが眉を吊り上げて尋ねる。
「オーディンのことは黙ったままで、
ララシステムの開発と運用は全て女神サラがやってる……、
という設定にして欲しいんだ」
「でもそれって、今のルルシステムからすると、
騙す、詐欺、みたいな『依存』と判定されて、ペナルティを食らう可能性が高いんだけど」
「うん、それなんだけどさ。『嘘も方便』って言葉があるだろ」
「何それ? また変な座右の銘?」
「人々にとって、まったく知らない元人間っぽい僕より、
いかにも女神様なサラが説明する方が、彼らは信じて納得すると思うんだ」
「それはまあ、そうでしょうね」
「だからお願い。エデンの神はサラだけ、という体裁でやってみてよ」
「……分かったわよ。アルトがそこまで言うなら」
「アフターフォローは、しっかり考えておくからさ」
―― さらに、場面はそのまま露天風呂 ――
「それで一つ、前から疑問なんだけど。
このエデンの世界って、中世ヨーロッパ風なんだけれど、
産業革命みたいなことが起きて、進歩とかしないの?」
「しないわよ。だって、そういう『セット』だもの」
「えっ、セットって何?」
「だから、中世ヨーロッパ風セットを買ったのよ、5000年前に。
カイザーを守護龍に置いて始めたんだけど、
何度もラグナロクかけてリセットしたわ」
「それじゃ、今のエデンって……」
「今のエデンは500年前くらいかな、そこからやり直してるの」
「ええっ、原始時代から発展してきたんじゃないの?」
「そらそうよ、そんな悠長なの、視聴率が取れないじゃない。
最初から中世で始まるわよ」
「今みたいな中世からだとしても、500年もあったのに時代が進まないの?」
「進まないわよ。
仮に転移者とかが手押しポンプなり、何か『特異点』を持ち込んでも、
その転移者が死ねば、時代はまた徐々に、今の中世時代に戻るわ。
そうなってるんだもの」
「カイザーは、最初から知ってたの?」
「もちろんじゃ。わざと黙っておった訳ではないんじゃが、
そんなもんだと、静観しておったのじゃ」
「じゃあ、カイザーはどうやって生まれたの?」
「それはサラ様に、ポンと造られたんじゃ」
「じゃあ、親とか子供は?」
「おらんのじゃ。サラ様はなぜ、つがいとか造ってくれなかったんですかの?」
「それはダメよ。あなた食べ過ぎるもの。うんこはバカでかいし、
ワイバーンもみんな食べて絶滅させちゃったでしょう。
ドラゴンが二匹とか、ありえないわよ」
カイザーはお湯に「の」の字を書いている。
「じゃあハクは? ハクは親がいたよね」
「そうね。前のフェンリルは大気の汚染がひどくて弱かったの。
だから子供のフェンリルも造ったんだけど、
決して前の親から生まれたんじゃないわよ」
「「あの、一年前の感動を返して!!」」
アルトと、サーシャは絶叫した。
サクラは中指を立てていた。カイザーはまだ立ち直れていない。
「ハクはアルトのそばで神気をたっぷり吸ってるから、過去最高に強いわよ」
「じゃあやっぱり、二匹目のフェンリルは造らないの?ハクの彼女とか?」
「造らないわよ。造ったら、フェンリルだらけに成っちゃうじゃない」
「えっー、えっと、それじゃラグナロクって?」
「そういうリセット機能のボタンがあるのよ。完全に失敗した、
視聴率がゼロ、あるいは『もう飽きたな』っていう時、押すの」
「そんな!」
「スタンピードボタンを押して起死回生って手もあるんだけど、
絵柄が酷いとか言われるし。
強いヒーローがいる時じゃないと、逆効果なのよ」
「怖えー、じゃあ、転生者や転移者がいる時のスタンピードって、
実は……」
「ファーストチョイスね。
視聴率アップの定石よ。どこの箱庭でもバンバンやってるわよ」
「あちゃー、……えっと、ラグナロクとかもだけど、
そんな残虐なことして心が痛まないの?」
「全然! 痛むわけないじゃない!
エデン人は、箱庭で飼育してるただの『アリ』のようなものなんだから。
神が忖度する必要なんてないわよ」
「うおっと、……ああ、でも今度からはちょっとまずいかも。
十分な理由のないラグナロクだと、ルルが激減するんじゃ」
「そうね。だから今回のララシステムは助かるわ」
「そ、そうかな?」
「なので、国や王家をぶっ壊したり、貴族制を廃止したり、
思い思いにやっちゃって!
大事なのは視聴率なんだからね! そこんとこ忘れないようにね!」
アルトは、もう何も言えず、遠くを見つめるしかなかった。




