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第11話  真実

サーシャ「鈴虫が鳴いているわね」サーシャは水着で温泉に浸かっている。


アルト「ああ、もうすぐ秋だね。この世界に来てもうじき2年になるのか」アルトはおじいさん装いで浸かっている。


カイザー「早いものじゃな」カイザーもおじいさんの格好だ。


アルト「それで」


カイザー「………」


アルト「100年前、なんで世界樹が枯れたの?」サーシャの目がキラリと光った。


カイザー「………」


アルト「なんで?」


カイザー「………寝てた」カイザーは縮こまって中学生くらいの大きさになった。


アルト「えっ」サーシャの目がさらにキラリと光った。


カイザー「寝てた」カイザーは小学生くらいの大きさに縮んだ。


アルト「……なんでまた」


カイザー「だってつまんなかったんじゃもん」


アルト「もんって」


カイザー「使命通り見守ってたんじゃけど、300年ぐらい起きて、300年ぐらい寝るのを繰り返してたんじゃ」


アルト「それで100年前は寝てたのに、女神様は起こさなかったの?」


カイザー「それについてはこないだ呼ばれた時に初めて知ったんじゃが、起こしたけど爆睡してて起きなかったらしい。くどくどと説教されたわい」サーシャは全力でジト目をしている。


カイザー「そっ、その……、サーシャさんや。その刺し貫くような眼差しをやめてくれんか。女神様に睨まれとるようで怖いんじゃ」


サーシャ「分かったわよ。ちゃんと反省してなさいよね!」


アルト「なんとも恐ろしく長い孤独だったんだな……。それで、その時の状況は分かるかな?」


カイザー「それも女神様から教えてもらったんじゃが、とある大国で王の溺愛する妃が死の淵にあったんじゃ。王は国の全兵力を上げて世界樹を手に入れるように命じた。攻城兵器まで持ち出してエルフの守る世界樹を攻めたんじゃ。世界樹自体も攻撃を受けてボロボロになる有り様で、居合わせた精霊たちも力及ばず、200人ほどいたエルフたちも半数が力尽き、残りは手足を失いながらも逃げるしかなかったそうじゃ。そうして手に入れた世界樹じゃが、エルフでさえ作れないエリクサーを人間が作れるはずも無く、そうこうしているうちに傷ついた世界樹もあっさり枯れてしまったそうじゃ」サーシャの目から涙がこぼれた。


アルト「そうだったのか。てっきり邪神とかが暴れたのかと思った。なんせ今回召喚されたのが邪神の復活を阻止するなんて、ベタな展開かもと疑ってたんだ」


カイザー「この世界にそもそも邪心などいなかったのじゃから、復活などあるまいに」


サーシャ「それで逃げたエルフたちはどうなったの?」


カイザー「エルフたちは元の世界樹から最高級ポーションを作れたんじゃ。秘伝ゆえ人族には内緒じゃがの。それを使い、手足の欠損を治してから、世界樹を求めて大陸中を探し歩いた。複数の班に分かれての。それでも見つからず、点在したまま森に定住し今に至っていたわけじゃ。じゃから、今いるエルフの半数はその逃げ延びた連中という訳じゃな」


サーシャ「そうなんだ」


アルト「この話をエルフたちに聞かなくて良かったよ。トラウマになってて、命を差し出して詫びるってのが絶対出てくるぞ」


サーシャ「そうね。聞いてみただけなのに責められてると感じるでしょうね」


アルト「この話はこの後、黙ってような!。滑稽で空しいだけだからな」


サーシャ「分かったわ、お父さん。知らなかったことにするわ。それに、この話が拡がるとカイザーの命も危ないでしょうし」


カイザー「そっ、そうじゃの。ワシが寝てたことは黙っていてくれると助かる。それで女神様曰く、ワシは信用できんし、世界樹を託せる相手がいないまま100年が過ぎたとのことじゃ」


アルト「じゃあ、世界樹を守れるほどの力を持つ者として、僕は召喚されたのか。でも、なんで使命として伝えなかったんだろう」


カイザー「それは簡単じゃ。使命というのは指令と違って短文なんじゃ。もし力をつけよなんて使命を受けて草原に降り立ったなら、後はどうしたじゃろな」


アルト「森を突き抜けて人間の街を目指しただろうね。冒険者にでもなって力を蓄えようとしたはずだ」


カイザー「じゃろう。そうなると、力がつくまでに貴族に取り込まれたりギルドに使い潰されたり、今とは違う世界線に入っていたじゃろう」


アルト「そうだろうな」


カイザー「実はアルトが降り立った草原、つまりここが、竜脈の織りなす世界樹を植えるのに最適の場所だったんじゃ。だからアルトにはこの草原にいてほしかったというわけじゃな」


アルト「それじゃ、この草原にずっと居ろ、なんて使命を与えればよかったんじゃないかな」


カイザー「それならそれでここに居るだけでどうやって力を蓄えるんじゃ。ドラゴン化して大陸中を見て回る、なんて展開にはならんかったじゃろ」


アルト「それもそうか」


カイザー「何も知らず初っ端からアルトを攻撃してしまったわしが言うのもなんじゃが、あれは2日目だったわけで、ここに居ろなんて使命のままだと、アルトは結界も貼らずあっさりわしにやられてたかも知れんのだぞ」


アルト「だから使命なしだったのか。好きに生きろということだったから、はりきって初日から露天風呂まで作っちゃったからな」


サーシャ「女神様、やるわね」


アルト「女神様にとっても賭けだったんだろうけどね。期待だけはしてたんだろうけど」


サーシャ「結果、一番うまい具合に落ち着いたって訳ね」


アルト「誰かさんの尻ぬぐいをしていたら、半神になって不老になっちゃったけどね。ここにいるのは皆、不老だよね」


サーシャ「これからどうするの?、お父さん」


アルト「さあ?、………カイザーは寝るなよな!」


カイザー「グハハハ、アルトが面白すぎて、おちおち寝ておれんわ!」


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