07 気になるアニス
二日後には熱も下がり、完全に回復したティアは、ノイに風邪を移すこともなく、元気に登校した。
教室に入るなり、リデルとミーアはひしっと抱きついてきた。
「やめて、苦しい」
「もう、心配したんだから」
「風邪だって馬鹿にできないんだよ。死んじゃうことだってあるし」
「今、苦しくて死んじゃいそう」
息も絶え絶えにティアが言うと、教室は笑いに包まれた。
入学して三ヶ月もすれば、クラスメイトとはだいぶ打ち解けることができた。休憩時間になると、ティアの周りには自然と生徒が集まってきた。隠しきれない王女としてのカリスマ性がそうさせるのか、はたまた巧みな話術がそうさせるのか。いずれにしても、ティアはすっかりクラス一の人気者になった。
女子生徒だけでなく、男子生徒ともティアはよく話すようになった。特にレムとは、お互い兵法学が好きということもあり、戦術や英雄の話で盛り上がった。取っつきにくそうだったファオとも、ティアが遠慮なくグイグイ来たこともあって次第に打ち解け、お互いの故郷のことを語り合ったりした。
それでも、未だに一人だけ打ち解けられない生徒がいた。他でもない、アニスだった。これまでもティアは、何度も話しかける機会を窺ってきたが、ことごとく無視された。
何でこんなに嫌われているのだろう。
そのたびに、ティアは悲しくなった。
ティアだけでなく、アニスは他の生徒にも冷たい態度を取っていて、クラスですっかり孤立していた。 唯一、幼馴染みのレムとは二言三言話すこともあったが、ほんの挨拶程度のもので、会話としては成立していなかった。
「昔からそうだったの」
ティアはレムに訊ねたが、レムは首を横に振った。
「大学に入学してからだな。それまでは普通に話していたし、友だちも、多い方ではなかったけど、まあまあいたよ」
「何かあったの」
「さあ。あいつは何も言わないし。直接聞いてみたら」
レムは、無茶なことを言った。
「聞けるわけないじゃん」
ティアは、ため息をついた。
休憩時間の騒がしい教室の中で、アニスはいつものように頬杖をつき、窓の外を眺めていた。彼女の周りだけ、時間が止まっているかのように静かだった。
あえて、孤独になることを選んだのかな。
いったい、何のために。
そんな大学生活、つまらなくないの。
ティアは、アニスの長い黒髪を見つめた。




