第3章34話『『水神』との再会』
「……ん。――ハッ!?」
「――あら、起きたわね」
「ここは、……あの綺麗な場所か。俺は確かラインと訓練してて……。――って、誰!?」
ラインと訓練していたはずのカナタは、白い床で目を覚ました。どうしてここに寝ているのか、全く記憶にない。
それに、知らない声が聞こえたため、カナタは咄嗟にそう反応した。
すると、カナタの知らない声を発した当人とされる、女と目が合った。女――というよりは、少女っぽい見た目だ。
薄い青色のストレートヘアーと水色の瞳を持った少女は、カナタを睨みつける。
「誰って何よ。まずはアタシに何か言うことあるでしょ?」
「え? えぇと……?」
何かと言われても、だ。何をしてもらったのか全くわからないし、そもそも誰だこの人は。
――そうだ、ラインを探そう。
「――ちょっと、何無視してるのよ」
そんな女の声は、聞こえない。カナタはラインを探すように首を回すと、五十メートルほど遠くで、ヴァサゴとなにか話しているラインを見つけた。
そして、
「ライ――痛っ!?」
ラインの名前を呼ぶより先に、女に頭を思いっきりしばかれた。
あまりの痛みに地面に横たわり、
「きゅ、急に何するんだよ!?」
「アタシに感謝もしないし、無視するし。叩くに決まってるわ」
「か、感謝……? 何について?」
「はぁ……。あなたが急に倒れたから、アタシが治癒してあげたの。そのおかげで起きれてるのよ?」
――教えてもらっても、意味がわからない。そもそもカナタの最後の記憶は、拳に込めた、五回目の破滅の力で殴る直前。
そこから気絶したというのだろうか。そして彼女がカナタを何かしらして起こしてくれたのなら、それは感謝すべきだろう。
「えっと……ありがとうございます?」
「はい、それでいいのよ」
「あと……あなたはどちら様、ですか?」
感謝してもらえて、少女は腕を組み、嬉しそうにしていた。そんな中で、カナタは彼女が何者か尋ねる。
すると、「え?」と まるで知られていたかのように驚くが、すぐに「あー」というと、水色の瞳をカナタに向けた。
「――アタシは『水神』アクア。ラインとかアステナとかアスタリアみたいに、神様よ」
「はぁ……。よろしくお願いします」
「あら、驚かないのね? 普通、神様って聞いたら驚くと思うんだけど」
「いやなんかもう、『創世神』に『知恵の神』に『時間の神』に会ってるんで、これ以上増えてもそんなに驚かないというか……」
それに加えて、この世界の歴史書で読んだり、【大罪冠】を率いてる男から聞いた『破壊神』という物騒な神様もいる。
これ以上神様を名乗るのが増えても、さほど驚かない。
「――って、『水神』ってことは、『炎神』とかもいそうだな……」
「正解ね。あとは氷、雷、風を司ってる神様もいるわ」
「まーた増えたよ……」
そう、こうやって、どんどん神様が増えてくる。驚く気力もない。
――ところで、水、炎、氷、雷、風を司る神様。その五つの属性は、どこかにも共通してる部分がある。
――そう、魔法だ。となると、もしかしたら『光の神』や『闇の神』、『無の神』などもいるのだろうか。
「うーん……」
「あら、他に属性を司る神様がいるか気になる表情ね?」
「どんな表情ですかそれ。――まあ、はい」
「ま、いないのよね。光属性と闇属性は人間が生み出したものだから。司る神様なんていないのよ」
「いないんかい」
あまり驚きもせずそう答えると、カナタはゆっくり立ち上がる。身体は――どこも、痛みがない。
そして服をパッパッっと手で払っていると、急に距離を詰めてきたラインと目が合った。
「うおっ!? びっくりしたわ……急に来るなよ……」
「悪い悪い。お前、急に気絶したんだぞ? 力が抜けたように地面にバーンって倒れた」
「えーガチで? それ頭めっちゃ強く打ってない? 大丈夫かな」
「安心しなさいよ。傷は全部アタシが治したから」
これはまた、頼りになる『水神』様だ。――というか、ラインが治せば良かったのに、なぜに彼女が治してくれたのだろうか。
――カナタのその考えを、ラインは思考を覗き、
「別に俺でも良かったんだけど、俺よりアクアさんの方が治癒能力高いんだよな。あと、俺のは治すっていうか創り直す感じだし」
「え、『創世神』なのに!? 意外だなー」
宇宙を創った神様でなんでもありな性能をしているのだから、治癒に関しても勝手に宇宙一の力を持ってると思っていた。だが、アクアの方が高いらしくでびっくりする。
「へー」と呟き、頷いていたら、アクアはラインに話しかけた。
「――前にアタシの力貸したでしょ? また貰っていいかしら?」
「ああ、良いですよ。使わなかったですし。――どうぞ」
次の瞬間、ラインの体内から青色の光の粒子が一粒だけ現れ、アクアの中へと入っていった。
――何をしたのか意味がわからず、カナタは「え? え?」と両者を交互に見る。
すると、
「お前が学園の制服を商店街に取りに行った日あっただろ? 俺はあの男に襲われたあとにアクアさんに治して貰ったんだよ。そのときに、力をちょっとだけ借りたんだ」
「力を借りた……? ――ん? 待てよ……?」
何やら、今までバラバラだった記憶の断片が繋がる気がした。
そもそも破滅の力を完全に自分のものにしたあとに、カナタがどうやってそれをラインに渡すのか、詳しいことがわからなかった。
だが今の二人のやり取りを目で見て覚え、わかった。
――そうやって、力を渡せばいいのか。




