第3章33話『――まだ、認めない』
「――よし、それじゃあ早速、行くか」
『ああ』
『時間の神』アスタリアに、肉体の時間を動かされ、ヴァサゴは動けるようになった。
――そしてカナタとともにラインと向かい合うと、戦いの火蓋が切られた。
「――ッ!!」
初めから破滅の力を使えば、大事な使用回数を減らしてしまう。だから、連発しないように、そして、しっかりその力を身体に慣れさせるように動く。
「――? 速いな」
「なんとなくでやったけど、意外とできるもんだな……。《創造》!」
両足に雷魔法を纏い、雷鳴の如く、カナタは距離を詰めた。そして『権能』で真っ白の剣を創り、
「上手くいってくれよ、一回目!」
もう、出す感覚は慣れてきた。破滅の力を剣に纏い、一気に振り下ろす。しかし、ラインはそれを軽々しく避け、
「武器に纏ったのか。やるな。なら、これならどうだ?」
ラインは『創世神』の力で白い剣を創って、カナタの剣と交える。
すると、なんと、ラインの剣は崩れ落ちてしまった。
それにラインは一瞬目を見開くが、それ以上驚くことはせず、
「そっか、破滅の力を纏ってるし、壊れるの当然だな。《超加速》、ウィンドカッター」
「なにそれ速っ!?」
みたことない高速移動でラインは一気に後ろに下がり、風魔法で刃を飛ばしてくる。
単に吸血鬼と『創世神』の力を使うだけじゃなく、こんなふうに戦いをしてくるのだ。もしも彼の敵だったら、恐ろしくて仕方ない。
「そんだけ使えてるのに、まだお前のものじゃないんだよな。一体どこがダメなんだ?」
全く使用できず暴走――というわけではなく、武器に纏ったりと応用は効いているカナタ。それにもかかわらず、その力を掌握できないのはなぜなのか。――やはり、人間という身体のせいだろうか。
『奴にばかり気を取られすぎだぞ』
考え込むラインの後ろから、ヴァサゴが空高く降ってくる。思いっきり、突進するつもりだ。それなのにラインは焦ることなく、
「《引力の王》。《斥力の王》」
と、引力で空高く逃げ、自分のいた位置に迫ったヴァサゴを斥力で吹き飛ばす。
圧倒的戦闘センスだ。多分、カナタ目線で考えると、ラインは白い髪のときが一番強いはずだ。だが、今のラインは赤髪に緋色の瞳。通常状態で、これをやっている。
それに、
「お前、今使ったのロエンの『異能力』じゃん。お前って『異能力』も作れたの?」
「いや? これはあいつの『異能力』を真似して創った『権能』だよ。威力とかはあいつの方が強いから、下位互換になるんだけど」
――なんか、ロエンが可哀想になる。あの男にも使われてるし、模造品とはいえ、ラインにも使われてる。まあ多分、ロエンのが一番効果が強いのだろう。それなら良いのだが。
「――よし、二回目!」
更なる破滅の力を剣に込め、カナタは構える。
そして再び、両足に雷魔法を纏い、一直線。
とはいえ、このまま剣を降ろしても受け止められるか避けられるだけなのはわかりきっている。
だから、
『――ッッ!!』
「うげっ、そうくるか……」
ヴァサゴはその巨大な肉体で突進しながら、口から紫色のエネルギー弾を放出。もしもラインが避けてしまえば、それはカナタに当たってしまう。
味方ごと攻撃しようとするなど、中々やばいドラゴンである。
――ひとまず、ラインのすることは、カナタに当たらないようにすること。
「《引力》――」
「――シャドウ・エクリプス!」
ラインが引力を使うより先に、カナタが闇魔法で目くらましと牽制。
さすがのラインでも、こんな唐突に視界を潰されたら焦るはず。
だから今が剣を当てるチャンスだ。
「ハァァァ!!」
三度目の力を纏わせ、一気に水平に斬撃を描く――はずだった。
なんと、剣の動きが止まった。動か、ない。
「ど、どうなって……」
「闇魔法来るとは思わなかった。ビビったー」
消えていく闇の煙から、ラインの顔が見えてきた。そしてよく見ると、彼の手には真っ白の剣があり、それでカナタの剣を受け止めたようだ。
「な、なんで受け止めれてんの……? 視界潰しただろ……」
「ちょうど《暗視》の『権能』を持っててな。どんなに暗いところでもハッキリ見えるんだ」
「なんだお前、なんでもありかよ」
これにはカナタも呆れた表情。やはり、こんな化け物と戦わないといけない【大罪冠】たちが不憫でならない。
――とはいえ、もうとっととぶっ倒したいところだが。
「今三回目か。あと七回は使えるから、もっと来い」
「わかったよ……。《破壊》。そして――ッ!!」
まず、『権能』でカナタが自身の剣を破壊。そして右手に紫色のエネルギー――四回目の破滅の力を纏わせ、拳を前に押し出す。
「――《未来予知》」
「おいなんか物騒な『権能』聞こえたぞ!?」
ラインが『権能』を発動した途端、カナタの攻撃を全て避け始めた。顔、手、身体、足と、色んな場所を狙っているのに。まるで、来るのがわかるかの如く、身体を逸らす。
「あーくっそ! だったら!」
「おっと……」
風魔法を地面目掛けて飛ばし、身体を宙へと浮かす。大体、十メートルくらいは飛び上がった。――さすがに怖すぎる。が、我慢だ。
そのまま両足に雷魔法を纏わせ、身体をラインに向け、
「五回目!!」
雷魔法でプラスされた速度と、炎魔法を足元で爆発させた推進力で、カナタは一気にラインに接近。
さらに氷魔法でラインの足元を固めた。あとは、五度目の破滅の力で、殴る。
――なんか、力にも慣れてきた。ここまで使えるのなら、そろそろカナタのものとして自由に使えるのではないだろうか。
そう、一瞬思った。だから――、
「――そろそろ、俺のものになってくれよ……!」
そう願いを込めて、一撃を放った。
◆◇◆◇
――まだ、俺のものだ。




