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第3章31話『格差を感じる』


「――えーっと、本気すかラインさん?」


「まあ、うん。どうせならって思ったんだが……」


「ちょーっとしんどいんじゃないかな? それにほら、俺は今日10回使っちゃったし、これ以上は無理なんじゃない?」


 あの男の言い分を信じれば、カナタが10回しか使えないのであれば、本日10回使った破滅の力は、明日にならないと使えるようにならないのではないか。


 ――と、思うのだが、


「にしては、身体が普通に動いてるだろ? 普通なら今も動けない状態になってないとおかしいんだが」


 そう、ラインは言った。

 そういえば彼の言うとおり、カナタは使用直後に身体が動かなくなり、【大罪冠(たいざいかん)】のアジトから逃げるのにアステナの魔法に頼っていた。


 それがなぜか、あの龍――ヴァサゴと出会ってから、回復したのだ。


「ヴァサゴのおかげで回復してるってあいつ自分で言ってたよな……」


『我のおかげだ。貴様の身体が回復しているのは』


 と、ヴァサゴの言葉を思い出してつぶやくと、ラインは「へー」とだけ答える。

 

「それならまあ、回復はしてるんじゃね? 五、六回は練習しようぜ」


「――。――――。はい……」


 断りたかったが、仕方ない。それに、もし今にでも身につければ、家に帰るという目標が近くなる。まずはやってみるしかないだろう。


「それじゃあ、ここは壊して――」


 そう言って、ラインは『創世神』の力で創った、この真っ白な空間を破壊。

 そしてファルレフィア邸の庭へと戻った二人は、二人きりにしていたレンゲとヴァサゴに目を向ける。


 そこには――、



◆◇◆◇



「――それでね、それでね! ラインお兄ちゃんが女の子になってメイド服着たこともあってね! すっごく可愛かったんだ!」


『ほう。性別を入れ替える薬とな。なかなか興味をそそられる内容ではないか。貴様らの学園祭は楽しそうなことをしたようだな』


「うん! とっても楽しかったよ! あと、フィナーレの夜空にでっかい星空も広がって、綺麗だったんだー!」


『なるほど、星空を浮かべる魔法か。それは面白そうだな。我も見てみたい』



 ――。――――。なんか、仲良く打ち解けて話している。カナタとラインの知らない間に、めちゃくちゃ仲良くなってる。


 レンゲはもちろん楽しそうだが、なんと龍がカナタ以外に心を開いた瞬間でもあった。


 外に出てきた二人が呆然と立ち尽くしていると、レンゲが満面の笑みでこちらを向いた。


「あ! 話し合い終わったの?」


「ああ、うん、今終わったよ。それよりヴァサゴ、お前、俺以外と仲良く喋れるようになったんだな」


 まだ会って少ししか立ってないが、カナタにしか懐いていなかったヴァサゴ。

 そのため、どこか親目線のような気持ちでカナタはヴァサゴに言葉を発した。すると、ヴァサゴはただ笑い、


『この娘がなかなか面白い話をしてくれたからな。我も初めは話す気がなかったが、聞いていくうちにさらに聞きたくなってな』


「良かった良かった! 私もヴァサゴさんの話聞きたいなー。なにか話してくれない?」


『悪いが、我は千年程度引きこもっていたのでな。動くこともしていない。貴様のように面白い話は持っていないのだ』


「えーそうなの……? ちょっと残念」


 本当に残念そうにしょんぼりするレンゲを、ヴァサゴは無関心を貫くのではなく、なんと「悪いことをしたなぁ」といいたげな顔をしている――ようにカナタは感じた。


 ヴァサゴの顔面の変化が未だわからないし、実際どう思ってるのか真偽はわからないが。とにかく、カナタはそう感じた。


「――まあ、仲良くなったならいいか。ちょうどいいや、ヴァサゴ、お前に手伝って欲しいことが……」


『我の名を気安く呼ぶな貴様』


「えぇ……」


 ――うん。ラインに対してはまだ心を開いていないようだ。冷たく返され、妹との差にラインは引いた顔をしていた。


「えっと……ヴァサゴ、ラインとも仲良くしてくれよ。俺の……友達だからさ」


『ふむ……。まあ、良いだろう。貴様に頼まれたうえ、その娘の兄でもあるのだからな』


「なんか凄い距離を感じるけど、まあいいや」


 ラインと仲良く――という感じではなく、カナタとレンゲの大事な人だから仲良くしてやってもいいだろう。といった感じだ。めちゃくちゃ距離を感じる。


『それで、貴様は我に何を手伝って欲しいのだ?』


「俺とカナタ、今から訓練するんだけどさ。俺が襲いかかるから、お前はカナタ側について、一緒に迎え撃ってくれない?」


『ハッ、まあ良いだろう。ただし、戦いとなるなら我は本気でやるぞ。命を落としても文句言わないことだな』


「大丈夫大丈夫。俺は死なないからな」


 なんとも軽い言い方だが、ラインに関しては本当に殺しても死なないといった男なので、心配いらない。

 ――それならこっちも、全力で戦える。まあ、カナタが力を出したところでラインを倒せる気は全くしないのだが。


「あー、でもさ、ここで戦ったらまずいんじゃない? 花壇とかぶっ壊したら、セツナたちにキレられるでしょ?」


「それもそうだな」


 今日の朝早くから、ラインは『剣聖』と『魔導師』とともに訓練をしていた。そのせいで花壇を破壊し、セツナとレンゲにしばかれていたのをカナタも目撃したのだが……。


 またそんなことが起これば、今度はカナタもしばかれる。別の、訓練に適した良いところはないだろうか。

「んー」とカナタが唸っていると、突然ラインが「あ!」と叫んだ。


「なんだ? 良いところでも思いついた?」


「まあな。ただ、許してもらえるかわからないんだけど……」


「なにそれ怖い」

 

 ――一体どんなところに行くのか、と考える前に、カナタ、ライン、ヴァサゴは、この世界から消えた。

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