第3章30話『色んな告白』
「俺の力が必要な理由。それを、教えてくれ」
ヨナギ・カナタが、身に宿る力を自分のものとするための訓練。その『方法』と『理由』の一つは確立されている。
残り気になることは、ラインたちが一体なぜ、カナタの力を狙っているのかということだ。
真っ直ぐ、目を向けられるラインだが、彼にはもうカナタに嘘をついてやろうなど考える気はない。ただ、事実を述べるだけだ。だから、
「お前の力があれば、この世界に蔓延ってる破滅の力を無くすことができるんだ」
「――えーっと? 悪い、話が全然掴めねぇんだが……」
「まあだろうな。ならちょっと簡潔に言うんだが……」
このまま長々しい説明をしても、訳分からなくなるのは目に見えている。そのため、ラインはできるだけ端的に伝えようと内容を圧縮した。
「この世界には至るところに漂ってるんだよ。世界を滅ぼす力が。もちろん、今は全然悪影響とかないけど、この先何百年、何千年ってすれば、漂う力も多くなって世界が壊れちゃうんだ」
「!? 危なすぎだろそれ!? 一体誰がそんな物騒なことしてやがんだ……? ――でも、お前らは『創世神』なんだろ? そんなもん、ちょちょいのちょいで消滅させたりできないのか?」
なんとも危険な世界だと改めて実感するが、宇宙を生み出した『創世神』の血を引くラインたちなら、そんなものすぐに消せるのでは? とカナタは思うわけだ。
だがしかし、
「そりゃ、魔法とか呪いとかが世界を蝕むんだったら、俺らはすぐに解決できる。でも、これに関してはお手上げなんだ。――俺らには、神の力を完全に消せない」
「……ん? 神の力? んじゃあ、誰かお前らの知り合いの神様がそんなことやってるわけ? やべぇやつだな」
「知り合いって言っていいのかわかんないが……。こんなことになったのは、『破壊神』アズラエルってやつの仕業だ」
――ラインの口から聞いたことのある名前が飛び出たため、カナタは止まってしまう。
『破壊神』アズラエル。『知恵の神』と共に見た神話に出てきたり、先程は男から【十執政】という組織を率いていた存在と聞いた。
「アズラエル」という名前は初出であり聞いたことはなかった。――はずだ。だがどこかしら、聞き覚えのある名前だった。
「ん……」
それを思い出そうと脳内の引き出しを探るが、上手くいかない。それに悩んでいると、ラインは構わず話し出した。
「俺らは去年、『破壊神』アズラエルを倒したんだ。そしたら世界に平和が……ってならなかった。こんなふうに、世界全土にマジで少しの破壊の力が広がったんだ。全く、面倒なことを……」
「それはまた大変だな……。――えーっと? それをラインたちがどうもできないなら、俺が何になるって言うんだ? 世界を滅ぼす力を持ってるって言われたんだが、それでどうにかするのか?」
「That's right!」
「なんで急に英語!? てかどこで習った!?」
急に発音も完璧な英語が披露され、カナタは目をかっぴらく。するとラインは「ハハハ」と笑い、
「前に、アステナがお前の世界で使われてる言語を調べててさ。面白そうなものがあったから覚えてみた」
「お前バケモンじゃねえか……。あ、神だからそりゃそうなんだろうけど……」
「――。いや、この世界の文字を一発で覚えたお前には言われたくないんだけど……?」
ラインが神としてそんな芸当ができるのは、まあ当然だとした上で言うが、確かにカナタも化け物よりだ。
生まれ持った素晴らしい記憶力のおかげで、この世界の文字は一分程度で暗記した。
そんなカナタに「バケモン」と言われても、ラインとしては「人の事言えないだろ」といった感じなのだ。
――っと、話を戻そう。
「――あー、それで、俺の力でどうにかするってことでいいの?」
「ああ。お前がその力を身につけてくれれば、世界中に蔓延る力をお前の身体に集められる。そのあとに、俺に渡してくれ」
「そんな簡単にそれができりゃあねぇ……。――あ、そうだ。さっき男と戦ったときに破滅の力を使ったんだけどさ、10回しか使えなかったんだ。それ以上は使えない、あと、人間の身体では使えないとか言われたよ」
そんな簡単にカナタが力をマスターできれば良いが、おそらく今はできないと思っている。あのときも10回しか使えなかった上に、人間の身体では使いこなせないとまで言われた。
――そんなもの、一体どうすれば良いのだろうか。
「――まあ、そこは訓練だな。一応、破滅の力に慣れるように、俺はお前に《創造》と《破壊》をあげたんだけど」
「――やっぱお前だったか俺に『権能』あげたやつ!! ずーっと考えてたんだぞ? 密航者の俺がなんで持ってんだろ? って」
「悪い悪い。お前の力が必要だった件といい、言う機会を掴めなくてな。ちなみに、お前がグレイスの屋敷で気絶した日あっただろ? その日にあげたんだ」
「そうなの!?」
以前、カナタが『魔導師』グレイス・エヴァンスの屋敷に住んでいたとき、留守中だった屋敷でカナタは図書室に入った。
そこで『忘れられた世界の記録』という本を読み、頭痛を引き起こして丸一日寝ていたのだが……。
――なんと、その間に『権能』を渡されていたらしい。
今日は驚きの連続ばかりで頭がおかしくなりそうになる。
しかも記憶力が良すぎるカナタは今日の内容全部が頭に入るし、かなり疲れてきた。
「はぁ」
――さあ、今日はもうとっとと休んでしまおう。そう思って、この真っ白な空間から出ようとするカナタ。
ラインに背中を向けた瞬間、絶望の一言が耳に入った。
「――それじゃあ、今からちょっとだけ訓練してみるか?」




