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第3章29話『二人きりの話し合い』


「――その話なんだが、ちょっと二人だけで話したい。良いか?」


「え? ああ、別に構わないけど」


 ラインたちが、これまで隠してきた秘密。それを話すのは、二人きりがいいとラインが頼んだ。カナタとしても別に拒絶する理由はないため、快く同意する。


「――ってわけで」


 そう言って、ラインは右手を上に挙げる。すると、白く眩い光が発生し、二人を囲いこんだ。


「なーにこれ。真っ白……」


「簡易的に作っただけだから、こんなもんだ」


 二人を囲むのは、ただ真っ白の部屋。それ以外、何もない。外の景色が見えることもなく、ただ、二人がお互いに見えるだけだ。

 だがこれで、場所は整った。ラインは緋色の瞳をカナタに向けると、カナタは息を飲む。そして、


「俺を、帰してくれなかったのはなんでなんだ? 異世界に来た俺を助けて、屋敷に住まわせて、魔法を覚えさせて、学園に入学させて。俺は、帰るためにここまでやってきた。でも、こんなことする必要なんてなかったんだな?」


「――。ああ、そうだ。本当ならあの日、お前と初めて会ったとき。すぐにでもお前を帰すことはできた」


「――ッ!! だったら、だったらなんで!?」


 異世界に来てから、怒るという感情が出てこなかったカナタが、初めて怒りを表す。

 ――当然の反応だ。カナタはずっと、元の世界に帰るためにやってきた。それなのに、ラインの発言はカナタの今までを全部否定されたのと同じだ。


「お前をあのまま帰したら、ダメだったんだ。もう、この世界に足を踏み入れた時点で。帰せる、帰せないの問題じゃない。お前は、今のお前が暮らせるのはこの世界だけだ」


「――? どういう、ことだよ……?」


「お前の魂には、力が眠ってる。最初、こんな魔法がある世界じゃなく、お前の世界に生まれたから、お前は平和に過ごせてたんだ。でも、こっちに足を踏み入れたせいで、その力が覚醒した。――世界を、滅ぼす力が」


「――っ」


 世界を、滅ぼす力。それは、『嫉妬』リオネからも、男からも教えてもらった。カナタ自身未だよくわかっていない力だ。

 そのせいで帰れないというのなら、今すぐにでも捨て去りたいが――、


「――ッ」


「? 何やってんの」


 ラインが右手を構えてくるため、何事かと不思議に思ったカナタ。ラインはすぐに手をおろし、「無理か……」とだけ呟いた。


「お前の力を全部取ろうと思ったが、できないな。お前の許可がないと」


「え、俺の許可があれば、力を取れる……?」


「いや、今のお前じゃ無理だ。その力を自覚して、自分のものとして扱えるようにならないと。そうなったお前が許可したら、俺はお前の力を全部取って、元の世界に帰せる」


「……え?」


 ラインたちだって、何もカナタをずっとこの世界に縛ろうと思っていたわけではない。この世界に踏み入れたことで活性化してしまった破滅の力。

 それを保有したままカナタを帰してしまうと、魔法も何もないカナタの世界が崩壊する。


 そんな事が起きないためにも、ラインは早くその力を奪取しようと――、


「俺は、お前を帰したいと思ってるよ。こんなよくわからない異世界に飛ばされて、狙われて。お前が、両親とも会いたいってことも知ってる。だから、できるだけ早く帰してあげたい」


「……本当にそう思ってくれてるみたいなのは、ありがとう。嬉しいよ。――でもさ、そのことをもっと早く教えてもらえてれば、俺だってもっとちゃんと……」


 ラインが、ラインたちが、カナタを地球に帰してあげたいと思っていることは、わかってる。わかってる。

 それなのに、どうしてここまではぐらかしてきたのだ。


 カナタが持つ、世界を滅ぼす力を取り除けば、帰れるようになることを。


 もし初めから教えて貰えてれば、カナタはどんな手段を使ってでも、破滅の力を自分のものにするよう努力しただろう。

 そしたら、すぐにでもラインに回収してもらって、幸せに地球に戻れたのに。

 なのに、どうして――、


「――お前の力が、必要だったんだ」


「俺の、力が……」


『君の持つ、世界を滅ぼせる力を僕らは求めてるんだ。僕は世界を滅ぼすために、四つ子はその力を自分たちが管理するためにね』


 ラインの言葉が耳に入ると同時に、つい先程、男に言われた言葉も思い出した。

 男たちと、四つ子の目的は、カナタの力を掌握すること。

 ただそれで、世界を滅ぼしたい男たちと、世界を守りたい四つ子。

 そのどちらにカナタがつくかといえば――、


 ――俺が世界を滅ぼせる力を持ってるっていうなら、俺はこの力で世界を守ってやる。


 そう、言った。ついさっき、男に向けて。その気持ちは、未だ変わりようがない。絶対に。

 だからカナタのすることは――、


「――俺は、破滅の力も、魔法とか『権能』みたいに、自分のものにする。そしたら全部お前らに渡すよ。そのために、また手伝ってくれ」


「――。ああ、わかってる。何度でも、俺が手伝ってやる」


 カナタの提案を、ラインはすぐに飲んでくれた。

 ――これで、カナタが訓練する『方法』は確立した。

 あとは、カナタが訓練する『理由』だけ。


 とはいっても、カナタが訓練する理由の中には、元の世界に戻るというのが根本にある。

 だがもう一つだけ気になること。


 それは――、


「俺の力が必要な理由。それを、教えてくれ」


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