第3章21話『これも計画の内』
「10回。それだけしか、君はその力を使えないのさ」
「……なに?」
どういうわけかカナタの持っている破滅の力。それを、十回しかカナタは使えない。
そう、男が言うわけだ。
さっきから謎の数字を数えていると思ったが、それがこういう意味だとは。思いもしなかった。
「ぐっ……くっ……!」
「無理に動かない方が良いよ。じゃないと、君の身体が壊れる。本当の意味でね?」
「そんな、こと……」
「あるわけないって? あるんだよそれが。その力は君の身体に合っていない。――っていうか、人間の身体で使える代物じゃないんだよ」
無理やりにでも動かそうとして思っていた身体が、止まる。男に止められたわけでも、アステナに抑えられたわけでもない。――ただの、カナタの恐怖だ。それに、動きを止められた。
「――でもまあ、よくやった方だよ。褒めてあげる」
そう言いつつ、男はポケットから取り出した真っ白の指輪を左手の人差し指にはめた。
「――ッ!」
一瞬で、アステナは一人でその場を離れた。カナタを置いて逃げようとしたわけではない。本当ならカナタも一緒に離そうとした。
しかし、最悪の可能性が頭に浮かび、一人で動いた。
「へぇ、さすが『知恵の神』。すぐに意味がわかるなんて」
そう言いながら、男は指輪をカナタに向けた。すると――、
「んっ!? あぁ、ぁ……!」
カナタから出てくる紫色のエネルギーが、指輪に吸い込まれていくのだ。身体の奥深くから、どんどん吸い込まれていく感覚。
その不快感にカナタは襲われていた。
「――っと。まあこんなものかな。出来れば、君の力も欲しかったんだけど……」
指輪を外してポケットに直すと、その瞳はギロッとアステナに向いた。その目に怯えることもなく、
「私の力を奪われるわけにはいかないからね」
「それもそうだ。君の力が手に入ったら、なんでも知ることができたというのに。残念だよ」
アステナが、カナタを置いて一人で離れた理由。それは、彼女の力まで奪われるかもしれないと思ったからだ。
男の使う指輪を、アステナは知っている。あれは力を奪う指輪。
もしアステナの神の力まで奪われたら、今後何も出来なくなってしまう。
だから、離れるしかなかった。
「君はその指輪に力を集めて、どうするつもりだい」
「そりゃ、世界を滅ぼすためだよ。僕はね」
一度区切って、男は深呼吸。そして、
「この世界も、『創世神』も、『知恵の神』も、『時間の神』も、『空間の神』も、『生と死の神』も、『法則の神』も『夢の神』も、属性神らも滅ぼす」
――また、知らないやつらが増えた。カナタにとっては。
「神様多すぎだろ……」
と、カナタは意識朦朧の中呟いた。『創世神』と『知恵の神』、そして、本で見た『破壊神』しか知らないカナタは、その数にびっくりする。
「君らが、邪魔なんだよ。邪魔すぎる。僕は君らを殺して、奪って、全部僕のものにしてやる」
「――。それなら、君をここで生かしたままにしておくわけにはいかない。9997回だろうがなんだろうが、私が殺し切る」
「ハハッ、君に戦う力がないってのはわかってるけど、何で攻めてくるかわからないから怖いところだよ。――でもね、君は一つ大事なことを忘れている」
笑顔が一瞬でスンとなり、アステナに緊張が走る。黙って見つめ、「なんだい?」と問うアステナ。
それに男は、ゆっくりと口を開け、
「ここは僕らの根城だ。いずれ君らが来ることもわかってた。だから、僕はここに仕込んでいたんだ。こういうときのために」
「仕込む……? まさか……」
「ああ。ここは去年まで『破壊神』と『魔王』の根城だった。だからまだ残ってるのさ。――世界を滅ぼす力が。それがこの空間を、君らを滅ぼす」
そう。ここには、かつての使用者の力の残骸が残っている。男はソレを使って罠を作っていたのだ。いつか、敵が来たときのために。
それが、今日だった。
「――でも、ここにいる君と君の仲間たちも同じだ。全員仲良く死ぬ気かい?」
だがここには、彼の部下である【大罪冠】たちいる。そんな中で世界を滅ぼす力が作動すれば、彼らも、男も道ずれだ。そんなのをどうやって男は回避する気だろうか。
「僕らの心配は不要さ。《造物》」
この状況に何も動じず、男は一本の騎士剣を作り出した。
そしてソレをカナタたちに――向けることはなく、なんと自分の首元に向けた。
「こういうときのための、《再誕の輪》さ」
そうとだけ呟いて、男は首を切断する。――そして、男の肉体は消滅していった。
――じゃあね、『知恵の神』、カナタ君。また、会う日まで。
――残り、9996か。




