第3章13話 side B『神々の話し合い』
3章13話のラインたちのお話です!
「前に宇宙空間に飛ばした【十執政】を探しに行きましょう」
現実ではありえない神秘的な空間で、ラインは『時間の神』アスタリアにそうお願いした。
――のと同時に、神殿から『知恵の神』アステナがびっくりした顔で走ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「あ、アステナ? どうした?」
「だ、だって、カナタ君が誘拐されたって言ってたから……」
「ああ、された。だからアスタリアさんに頼みに来てさ」
友達が攫われたというのに、普通に落ち着いているラインにアステナは肝が据わってるなと思いつつ、
「頼みって?」
「【大罪冠】を指揮してる男は、俺らの正体を知ってる。それに当てはまるのは、【十執政】しかない。だから、それを探しに行こう、ってこと」
ラインの言葉を聞いて、アステナは興味深そうに「【十執政】か……」と呟いた。
四つ子が吸血鬼と『創世神』のハーフだと知っているのは、その組織だった。――となると、【大罪冠】を率いている男は【十執政】の関係者としてみていい。
「――――」
ただ、昨年に【十執政】を率いていた『破壊神』と『魔王』を倒し、組織は消えた。
十人いた幹部のうち、『第五位』、『第七位』、『第八位』、『第九位』、『第十位』の五人。
ミレーナ、ロエン、サフィナに加え、残り二人いる彼らは、今は普通に学園生活を送っている。
であれば、【大罪冠】を率いていると考えられるのは『第一位』、『第二位』、『第三位』、『第四位』、『第六位』だ。
「でも……」
しかし、『第一位』以外の四人は、おそらく死亡している。
――おそらくというのは、絶対死んでいると確証できないからだ。とはいえ、普通の人間であれば確実に死ぬことはされている。
そう考えると、一番可能性のあるのは『第一位』なのだが、
「わたしが言うのは癪だけど、彼はそんなことしないだろうね。今はどこにいるか分からないけど、世界を滅ぼそうなんてことは考えていないはずだよ」
と、『時間の神』は腕を組んで呟く。彼女の言う通りだ。
色々あって、『第一位』の男は『破壊神』たちを裏切ってラインたちについた。
ということもあって、彼である可能性は限りなく低い。
「まあ、そういうことだから、俺は宇宙に飛ばしたやつらを探しに行こうって提案したんだ」
先程あげた内の二人を、『時間の神』アスタリアは宇宙に追放している。それもまた、えげつない方法で。
そのため、宇宙で彼らを探して、いなかった存在が犯人であるという探し方を、今から行う。
「――わかった。それなら、私はカナタ君の方に向かうとするよ」
「え、はぁ!? 一人でか!? だ、ダメだ、危険だって!」
「全く、君は心配症だな。私は『知恵の神』だよ? 君ほど強くないとはいえ、そんな簡単に負けるわけないだろう?」
「それは、そうだけど……」
ラインは、アステナが心配だ。一人で敵のアジトに行って、カナタを救い出すなんて、いくら彼女が『知恵の神』でも怖い。それに、
「悪い想像はしたくないけどさ。もしもカナタがたぶらかされて、あの破滅の力を向けてきたら、どうするんだよ」
「安心して欲しい。もしも彼が、世界を滅ぼす方に着くなら、容赦なく殺すから」
「……なんか、意外と怖いこと言うよなお前」
確かにそれは『知恵の神』として最善の選択かもしれない。それでも、ラインはカナタを殺されて欲しくない。だから今は、
「あいつが、俺らを裏切らないって信じるしかないよな……」
自分たちはカナタに真実を伝えていないのに、信じてほしい。なんて虫のいいことを言っている自覚はもちろんある。
カナタを地球に帰せる力を持ちながら、「帰せない」などと嘘をついたことも。それらを、男はカナタに伝えるだろう。
そしたら、カナタはラインたちに失望して裏切るかもしれない。
――そうなっても、ラインたちにカナタを責めることは出来ない。それくらいのことを、してしまったから。
「――わかった。じゃあ、アステナ、そっちは任せた」
「はいはい。それに、私のことばかり心配してるけど、君は自分の心配もした方がいいよ? 宇宙を移動してるときにアスタリアに離されたら、君は一人で一生宇宙を歩むことになるよ?」
「怖いこと言うなよ!? ――いや、でも、流石にそんなことないって。だって、俺は――」
「『創世神』、だもんね?」
こちらではなく、何故かドヤ顔で言ってきたアステナにラインは笑い返す。そうしていると、
「――はいはい。あなたたちは本当に仲がいいね。良いことだよ」
腰に手を当ててそう切り出し、続ける。
「わたしは『時間の神』だし、あまり人間の恋愛感情っていうのがわからないからさ。あなたたちのような関係は羨ましいよ。――結婚式はいつにするの?」
悪意のないその言葉に、ラインとアステナは同時に吹き出す。その顔を、真っ赤にして。二人は別に恋人同士というわけではない。
――のだが、アステナはラインのことが大好きだし、吸血鬼で恋愛感情の薄いラインもアステナにだけは惹かれている。
毎日ラインの部屋で仲良く寝ているし、まあ正直いって今にでも結婚すればいいんじゃない? と、アスタリアを含む神たちは思っているのだ。
「ま、全く、急に変なことを言い出して……」
真っ赤にして顔で、ラインと見つめ合うアステナ。すると、再度アステナの顔は赤くなった。
――その様子を見て、これまでずっと静寂を貫いていた『夢の神』フォカリナが、ポツンと呟く。
「――なーんか、シリアスな雰囲気が消えちゃったねー」




