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第3章17話『世界の命運』


「――異世界人の君がなぜ、この世界に生まれた者が持つ『権能』を持っているのかな?」


 男の質問に、カナタは止まる。だって、カナタにだって分からない。

 この世界に生まれた者が『創世神』に与えられる『権能』。それを、なぜ持っているのか。


 もしかしたら、異世界転移したカナタに神様から与えられたのかもしれない。――否、それはない。カナタは神に連れてこられたわけではなく、目の前にいる男に勝手に連れてこられた。

 

 いわば、密航者である。そんなカナタに、神が力を与えることがあろうか。いや、ない。

 と、なると――、


「君の『権能』はあの四つ子が。まあ、ラインが与えたって考えるのが妥当かな」


 そうなると、そんなことができるのは『創世神』の血を引く四つ子しか、出来ない。それが、男の考えだ。


「い、いやいや、わざわざそんなこと、あいつらがするのか? それなら、俺に教えればいいだろ。何にも言われなかったぞ?」


 だが、カナタは信じられない。だって、ラインたちは『権能』のことを何も聞いてこなかったし、『権能』のことを知ったのはアッシュのおかげだ。

 ラインたちが与えたというのなら、そのことを言うに決まっているだろう。


「――なんて、考えてるかもしれないけどさ」


 カナタの思考を読んだかのように、男はため息をつき、腰に手を当ててそう言葉を紡いだ。


「そもそも、君は彼らを信用しすぎじゃない? 僕も、彼らも、君からすればただの異世界人だ。なのに、なんで僕の言うことは信じられなくて、彼らのことは信じてるの?」


「――。そりゃ、俺をこんなところに飛ばしたのがお前で、その後助けてくれたのがあいつらだからだろ。バカかお前。言わなくても分かるだろ」


 ごもっともなカナタの言い分に男は「それはそうだね」と納得しつつ、

 

「君の意見には賛成だけど、助けてくれたからって完全に信用していい訳じゃないでしょ。実際、『創世神』の血を引いていることも、君に『権能』を与えたことも教えて貰ってないでしょ?」


「だから、それはきっとなにか理由があって……。また今度聞いてみれば――」


「今度。今度か。君が、またこれから四つ子たちと仲良く暮らせるなんて思ってるのかな?」


 また今度、聞いてみればいい。そう言おうとしたカナタの言葉を遮って、先に男の言葉が空間を塗り替えた。怖い、というか不穏な内容に、カナタは「は、っ?」と声が出る。

 これから仲良く暮らせるのか? というのはどういうことだ。

 まさか、今にでもカナタを殺そうと――。


「――ッ!」


「あー言い方悪かったか。そんな身構えなくて大丈夫だって。僕は君に危害を加えるつもりないしね。ただ、君を彼らのもとに帰さないだけさ」


 生存本能からか、身体を傾けるカナタ。それに男は笑いながら、危害を加える気はないとのことを話した。


「――さて、それじゃあ話を戻そうか。言ったでしょ、君の力が必要だって。君が知ってるか分かんないけど、君って世界を滅ぼせる力を持ってるんだ」


「――。前に、『嫉妬』のリオネってやつが言ってた」


「あ、リオネは言ってたんだ。じゃあ良かった。――で、君に力を貸して欲しい。この世界をぶっ壊すためにね」


「だから何度も言ってるだろ!? 俺がお前の提案に乗るわけ――」


 ――乗るわけない。そう、当たり前である。何度男が提案しても、カナタが受け入れることはなかった。男が、これからどれだけお願いしても、カナタが受け入れることはない。

 それは、お互いに理解していることだ。同じように頼んでも、絶対に結果は変わらない。

 

 ――だが、男は持っている。この状況を覆せる唯一の手立てが。

 それは――、


「じゃあこうしよう。僕たちの仲間になってくれたら、僕の目的を遂行したあとに君をもとの世界に帰してあげる」


「……え? は?」


 それは、カナタが最も望んであろうこと。それを引き合いに出して、カナタの心を掌握する。

 

「僕が君をこの世界に連れてきたんだ。もとの世界に帰すことだって造作もないよ」


「い、いや、でも……」


「あの四つ子は、君を帰せる力を持ちながら、していないんだ。彼らと一緒にいて、君がいずれ故郷に帰れる保証はどこにもないだろう? だから、僕が帰してあげるよ」


 ――もう一息。ただ、故郷に帰ることを目的としてここまで頑張ってきたカナタには、これが一番効く。だから、


 次だ。


「それに、君はこの世界の人間じゃないんだ。世界が滅びようが、どうなろうが、君にはどうでもいいことだろう」


「で、でも、ラインたちは、俺を助けてくれて……」


「それでも君に嘘をついて、出来ることもしてあげてない。確かに、魔法や『権能』を教えてくれたけど、君が本当に望んでることはしてくれてない。それなのに、君が彼らに気を使う必要がどこにあるの?」


 カナタにとって、この世界はどうでもいいものだろう。故郷でもないし、それほど心を込めて守ろうとする必要なんてない。

 だからこその、男の提案だった。


「――さあ、カナタ君。僕と、僕たちと一緒にこの世界を滅ぼそうよ」


 そう言って、男は笑顔でカナタに右手を差し出す。

 その手を取るか、否か。

 ――世界の命運を分ける手が、カナタに向けられた。

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