表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/85

第3章16話『信じられない話』


「四つ子は君を元の世界に帰せるのに、わざとそれをしていないって言ったら、君はどう思うかな?」


 そう、不気味な笑みを浮かべた男が発言。それにはカナタだけでなく、残りの三人――ロエン、サフィナ、ミレーナも止まった。


 どうしてそんなことを言い出したのか。その言葉の意味が、カナタにはそもそも分からない。


「――――」


 カナタとロエンたちはそれぞれ同じ驚きを見せているが、本質は違う。

 カナタは、男が何を言っているか分からないという驚き、そしてロエンたちの驚きは――、


「――ッ」


 なぜ、男がそのことを知っているのかという驚きだ。

 ロエンが歯を噛んだ音が、耳に入った。――と同時に、カナタは喉を鳴らす。


 

「ま、待て待て……俺を元の世界に帰せる、だと? ラインたちが……?」


「うん、そうだよ。そこの三人は知っているかもだけどね。――あ、知ってるかもじゃなくて、知ってるよね」


 急に話の矛先が自分たちに向けられ、ロエンたちは声が出なくなってしまう。


「知ってた、のか……?」


「わ、たしたちは……」


 怒る、悲しむ、などといった目ではない。ただ、どういうことかを尋ねる目を、カナタから向けられる。しかし、ロエンは答えられなかった。

 そこで――、


「――君たちには消えてもらうね」


 瞬間、男の右手に漆黒の剣が現れる。それは、理外の力で作られたものである。剣に目を合わせたロエンたちが、一斉に男を無力化しようと――。


「じゃあね。――また、いつか」


 襲いかかるよりも、男が剣を振る方が早かった。ただ一度、水平に振った。すると、ロエン、サフィナ、ミレーナの三人が立つ地面の空間が割れ、落ちていった。


「なっ――」

 

「ロエン!?」


 ハッと後ろを見ても、三人が落ちた空間は完全に塞がった。カナタが落ちることも、ロエンたちが戻ってくることも、出来ない。


 一気に一人にされたカナタは地面と男たちを交互に見つめ、全身に悪寒が走る。

 

「――今の僕が、僕として君らと話すわけにはいかない」


 ――一方、カナタとヴェルドに聞こえない声で、悲しそうな顔をしながら男はただ呟いた。


 すると、男は再度カナタを見て、そしてヴェルドに目を向けた。


「僕はカナタ君と二人きりで話したいから、お前は出ていって良いよ」


「はーい了解です。気をつけてくださいよー?」


 素直な部下である。ヴェルドは男の言うことを聞いて、そそくさと部屋から出て行った。どうしてあんなやつが、男の許可を得ずにファルレフィア邸を襲ったのか。

 男はただ呆れるばかりである。


 ――さて。


「さてと。こうやって君とちゃんと話せるのは、これが初めてだね」


「……ああ。――さっきの、どういう意味だ……?」


 やはり、そこに食いついてきた。男は安堵する。こうやって上手くいくなんて。


「そのままの意味さ。あの四つ子は、君を元の世界に戻せる力を持ちながら、そうしなかったんだ。酷いとは思わない?」


「そんなの言われて、信じられるわけ――」


「四つ子が『創世神』って言ったら、信じるしかないんじゃない?」


 信じられるわけない。それは、当然だ。男にそんなこと言われてもカナタが信じるわけがない。もちろんそれは今、男がカナタに被せて言ったことについても、だ。


 それを、男は分かっている。だから、だからこそ、カナタの心を壊す作戦を決行する。


「え、はぁ……? 『創世神』って、神様だろ? ラインたちは吸血鬼とほかの種族のハーフで……」


「そう、そうだよ。ほかの種族っていうのが『創世神』なんだよ。この宇宙を創った、神様のことさ」


 声が、出なくなる。確かに、ラインたちには何度もはぐらかされている。吸血鬼以外の力のことを、ほぼ何も教えてくれなかった。ただ、結構なんでも出来る便利な力としか。


 カナタは、『創世神』という存在をよく知らない。ただ、宇宙を創って、生まれた人たちに『権能』を与えるなどといったことくらいしか。


 だが、ラインたちのあの無法な力が一体何なのだと問われるならば、それは神の力と言っていいと、カナタは思っていた。


「あいつらが、『創世神』って言うなら……」


 そう思うと、やはり納得する部分はある。死んでも蘇るし、『権能』を何個も使い、バカみたいに強い。本当に出来ることに制限がなく、何でもやっていた。

 それは、世界を創れる神の力と言われても十分分かるほどだ。


 ――だが、そうだとしても、


「あいつらは、俺のために色々やってくれた。俺がお前らと戦えるように、魔法を、『権能』の使い方を教えてくれた。それなのに、俺を元の世界に戻さないわけないだろ。きっとそんな事まで出来ないんだよ」


 四つ子はここまでカナタのためにやってくれているのに、わざわざ元の世界に帰さないなどあるものか。きっと、それは出来ないのだ。


 だって、カナタの異世界生活二日目の朝、カナタはアレスたちに聞いた。


『あ、もしかして俺を元の世界に帰してくれたり……?』


 と。しかし、


『――ごめん。出来ない』


 と言ってきた。それにカナタが絶望していたら、


『代わりに手伝いたいんだ。君が帰れるようにさ。そのために、どうやってこの世界に来たのか教えてくれない?』


 なんて、優しい言葉を投げかけてくれたのだ。そんな彼らが、カナタを元の世界に戻さないなどといった意地悪をするわけない。――そう、カナタは信じてる。


「――そう。よっぽど信用してるみたいだね。それなら、一つ面白いことを聞いてあげよう」


 男はカナタの仲間思いをバカにするかのように鼻で笑い、今度はまた不気味な笑みを浮かべる。それにカナタが「なんだよ」と聞くと、


 男は、「《創造》と《破壊》。これは君の『権能』だろ?」と言って、一拍置く。そして、

 

「――異世界人の君がなぜ、この世界に生まれた者が持つ『権能』を持っているのかな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ