表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/84

第3章14話『残りの残機』


「ど、ういうことだ……? 全く魔法が効いてない、って感じじゃねぇよな?」


 炎魔法で消し炭にしたはずの男は、無傷で立ったまま。カナタたち三人は信じられないといった目で見ていると、男はブツブツと呟き出した。


「まさか君に殺されるとは思わなかった。防御をするのを怠ったし、まあ当然の結果といえばそうかな」


「えぇ……? 殺されたってことは、死んだのか……? じゃあなんで生き返って――」


 そこまで言って、カナタは思い出す。王都で彼と戦ったとき、彼は自分で部下を呼んで殺害させていた。

 つまり、男は何度か生き返れるということ。

 その数はおそらく、


「あと9998回も倒さなきゃならないのか……?」


『――やるじゃないか。残り、9998だよ』


 その男の発言から、カナタはそう推理した。ただでさえ強い男をあと約一万回も倒さなければならないのか。そんな途方もないこと、行う前にこちらの精神がおかしくなる。


「――そうだね、あと一万回近く僕を殺すなんてこと出来ないか」


「ていうか、なんでお前そんな色々能力持ってんだよ!?」


 思わず、カナタは叫ぶ。今まで見た能力だけに区切ると、魔法といった基礎的なものから、《腐蝕の呪い》などの呪い、そして《引力の王(グラビティ・ロード)》などの『異能力』。まだまだあるかもしれないが、ひとまずカナタが見たのはこれくらい。


 ――にしてもレパートリーが多い。カナタなんて、魔法、『権能』しかないというのに。


「ってなると、逃げるしかないよな……でもどうすれば……」


「――仕方ありません。一気に引きますよ」


「あ、ぇ?」

 

 突然、ロエンがカナタとサフィナの手を取って引き寄せる。この状況でどうやって引くというのか。どうにか走って逃げるのか。そういった疑問が口に出る前に、


「――おーっと、逃がさないよー。折角捕まえたのにさ?」


 後ろから、そう声が聞こえた。――最悪だ。なぜなら、声を発した男は、【大罪冠(たいざいかん)】『暴食』ヴェルドだったから。

 まずい、三対二になった。こちらは依然劣勢のまま。さらに逃げにくい状況になってしまった。


「ふ、二人とも、どうす――」


「――セルヴィ?」


 サフィナがヴェルドを見ながら、そう呼んだ。するとヴェルドは「ん?」と首を傾げるとすぐに「あー」と言って、


「セルヴィって、僕のこの姿のモチーフの人でしょ? 会っとことないからよく知らないんだけどね」


 そして、男はロエンとサフィナをじーっと見つめて、


「ってことは、君らは僕の同僚のモチーフってことかな。女の子の方はリオネと似てるし、男の子の方はバラムと似てるね」


「知らない名前出さないでもらって良いですか?」


「えぇ、先にセルヴィとかいう名前出したのそっちでしょ……」


 ヴェルドが少々引いた目つきでロエンを見る。それにロエンは何も返さず、ただじっと睨み返すだけ。


「そんな睨まないでよ……あ、もしかしてセルヴィって人と仲が悪かったとか?」


「まあそういうところですね。嫌いでしたよ、私は」


 淡々とロエンが会話している中、カナタは顎に手を当てて思考を整理し始めた。

 

 ヴェルドの口から出された『嫉妬』リオネと、バラム。バラムが誰か知らないが、ヴェルドの発言からしてロエンと同じ姿をした【大罪冠】なのだろう。

 ――友達と同じ姿のやつが敵だなんて、嫌に決まっている。


「――にしても、この状況をどうやって抜け出すか……」


 正面には男、背後にはヴェルド。このまま戦いを続ければ、ほかの【大罪冠】たち全員が集結してくる可能性もある。ロエンとサフィナがいくら頼りになると言っても、この状況はとてつもなくキツい。


「目くらまししたって、意味ないよな……」


 闇魔法の「シャドウ・エクリプス」を使って視界を奪っても、短時間で逃げ出すのは無理だ。

 

 それに、今ここにいるのは、気分次第でカナタたちが魔法を使えるか否か設定できる男と、デバフ効果を撒き散らしてくるヴェルド。


 ヴェルドのそれに対抗するには光魔法を纏わなければならない。となると、カナタたちがどう動いても、詰みだ。


「クソ……」


 必死に、必死に考える。考え尽くす。なにか手がないだろうか。頭をかき、考え、考え――、


「――さて、僕らはカナタ君に用があるだけ。君ら二人が素直に帰ってくれるなら、何も危害は加えないよ?」


「それはどうもーって納得するわけないよねー?」


「だろうね。僕もそう思ってた」

 

 今カナタを置いて逃げるなら、襲うことはしない。それが、男たちの意見だ。だが、それを二人が飲み込む訳はない。答えを聞かなくてもわかっていたことを、男はわざわざ聞いた。


 ――男としても、ロエンたちが意見を曲げないなら、それを尊重するのが流儀だろう。

 ならば、


「《亡者の印(グレイブ・シグル)》。『吸血鬼』×『エルフ』×『獣人』」


 と、過去に殺したそれぞれの力を身に纏う。もう、準備は出来た。ヴェルドと共に三人を襲って、カナタだけ連れ出す。そうしようと、まずはその一歩を――。


「ガハッ!?」


 踏み出す直前、ヴェルドは何者かによって蹴り飛ばされ、男の方へ一直線。これには男も想定外だったのか、引力や斥力を操る『異能力』を使う前に激突し、壁まで吹き飛ばされてしまった。


「え!?」


 カナタも驚愕の声を上げて、ヴェルドがいた位置を見る。だが、誰もいない。となると一体誰がヴェルドを蹴り飛ばしたのか。

 その答えは、カナタには分からなかった。――カナタと、ヴェルドには。


 しかし、その正体を理解したのが三人。共に、同じ人物を頭の中に浮かべた。

 その人物は――、


「サフィナとロエンの買い物にこっそり着いて行ったら、こんなところまで来ちゃったよ、あーし。マジびっくり」


 そこにいなかったはずの人影が一気に姿を現し、声を出した。

 水色の長髪を触って、腰に手を当ててギャルっぽい喋り方をする少女。


 ――それこそが、ミレーナ・ネフェリアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ