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第3章10話『『第七位』&『第八位』』


「――うん。面白そうな本は買えたし、後は兄さんたちに何か買っていってあげようかな」


 袋に購入した数冊の本を入れ、商店街を歩く少年――アレス・ファルレフィア。朝から一人で買い物に出かけているが、かなり長い時間ここにいる。――本屋で本を探すのに結構時間を喰ってしまったのだ。


「花にするか……いや、魔法グッズでも面白そうだよね」


 何を兄妹とメイドたちに買ってあげようかと悩み、歩き続ける。そしたら、後ろから声が聞こえてきた。


「あれ、何してるんですか?」


 呼び止められ、アレスは振り向く。そこには、クラスメイトであるロエン・ミリディアと、サフィナ・カレイドが仲良く一緒にいた。


「僕は買い物しに来ててね。二人も買い物? 相変わらず仲が良いね」


「まあそんなところです。ミレーナとヴァルクは家でまだ寝てるんですよ。ほんと、だらしないですよねあの二人は」


「あの二人は朝が弱いイメージがあるし、そんなものじゃないかな」


 ヴァルクというのもまた、彼らと同じ学園に通う少年の名だ。ヴァルク・オルデインという名前なのだが、今は訳あって学園には偽名で入学しているという変なやつだ。


 そして、ロエンたちは四人で同居している。ほんと、仲の良いことだ。


 そして、アレスはサフィナを見つめ、


「君、本物のサフィナだよね?」


「えー? 本物ってなにー? アタシはアタシだよー?」


「うん。どうやらそうみたいだね」


 昨日、学園で【大罪冠(たいざいかん)】『嫉妬』リオネとかいう、サフィナそっくりの少女と会った身としては警戒するしかない。


 だが、目の前のサフィナの態度は普段の彼女のそれと何ら変わりないので、ただロエンと仲良く買い物しに来ただけだと理解した。


 すると、


「本物ってどういうことですか? サフィナの偽物でもいるんです?」


 と、ロエンが質問してきた。それにアレスは頭をかきながら「えっとね」と言って、内容を話した。




「――ま、そういうことがあってさ。偽物だったら危ないなーって思っちゃって」


「へー。アタシの偽物がねー。わざわざアタシの偽物作るってことは、アタシのことを知ってる人かなー?」


「あ、そういえば、リオネは【大罪冠(たいざいかん)】のボスはサフィナのことをよく知っているみたいなこと言ってたけど」


「アタシのことを? 幼馴染のロエンとヴァルク以外でアタシのことよく知るなんていないでしょー」


 サフィナにとって、彼女のことをよく知るという人物でまっさきに浮かぶのは幼馴染のロエンとヴァルク、そして親友のミレーナの三人だけだ。

 

 仲良く四人で暮らしている現在だが、彼らがサフィナの偽物を作ったり、【大罪冠】とかいう組織を作るわけないとは分かる。


 となると、一体それは誰なのか。それを考えようとしたら、


「――ま、分からないことを考えても分からないでしょう。アレス、その組織のボスは以前王都で私たちが戦った相手ですよね?」


「そうだね」


「――分かりました」

 

 そうとだけロエンは呟き、サフィナの手を取って後ろを向き、歩いていく。


「あ、どこ行くの?」


「帰るだけですよ。ヴァルクたちもそろそろ起きたでしょうし。また学園で」


「……うん。じゃあね」


 突然帰り出す二人にアレスは何も言わず、ただその後ろ姿を眺め続けた。



◆◇◆◇



「……ロエン、家に帰る気ないでしょ?」


「――よく分かりましたね」


 商店街から離れ、森の中を歩く二人。そこで、二人は立ち止まった。

 

「どこ行くのー?」


「サフィナも引っかかりませんか? 以前王都で戦ったときのことです。カナタの話では、あの男は触れたものを破壊する力を持っています。それなのに、私たちには触らなかった」


「うーん、ただ単に力を使う気が起きなかっただけじゃない?」


「それに、なにか意味があるのではと思いまして」


 ロエンの発言に、サフィナは首を傾げる。

 王都での戦いのとき、男は明らかにロエンとサフィナを殺そうとしなかった。

 カナタとミリアを誘拐する絶好のチャンスだというのに、だ。

 それはもしかして、


「私たちに何かしら情がある人物なのでは?」


 というのが、ロエンの考え。

 ロエンたちに情があって殺せず、サフィナのことをよく知っていて、理外の力を持つカナタを狙う男の存在。

 それは、


「【十執政】……?」


 サフィナがそう答える。今までの考えに当てはまるとすれば、もう、それしか思いつかない。

 ロエンたちをよく知っている人物と考えるなら、もうそれしか。


「……ロエンは行こうと思ってるでしょ? アレスを連れていくべきじゃなかった?」


 ロエンが、敵の根城に乗り込む気なのを幼馴染は理解した。だったら、アレスも連れていけば良かっただろう。

 そう誰でも思うはずだ。でもロエンは、


「もし相手が【十執政】だとしたら、またあの四つ子に迷惑はかけたくないです。私たちが行くべきです」


「……そうだね」


 二人とも、同じことを考える。今こうして二人が魔法学園に通えて、友達がいるのは他ならぬ四つ子のおかげだ。そんな彼らにこれ以上迷惑はかけられない。


 そして、予想通り、もしもロエンたちの知り合いが【大罪冠】を運営しているボスだとしたら、ロエンたちはカナタを守らないといけない。


 もう、知り合いと四つ子をぶつけるわけにはいかない。


「行きますよ、サフィナ」


「うん。行こーか」


 ――次の瞬間、黒い羽根のような霧が二人を包み込み、消えていった。

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