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第3章3話『屋敷を燃やした犯人』


 ――まずい。ファルレフィア邸が燃え上がる直前、ライン、セツナ、レンゲ、アッシュ、グレイスの五人はそう感じ取った。

 未来予知、などという類ではないが、彼らが十分高水準で持つ、危機回避能力が作動したのだ。


 ――まずい。まずい。危機感を感じるということは、何者かが敷地内に侵入してきたということ。それはおそらく、いや、確実にあの【大罪冠(たいざいかん)】とかいうのだろう。


「そんな目で見られても、無理なものはむ――」


 そんな五人の感覚には気づかず、椅子に座りながら、カナタがミリアに声を出した。


「――っ」


 ほんの、あったか分からない一瞬。セツナは、花壇を壊したバカ三人を拘束していた彼女の血液を取り外し、自由にさせる。


 そして――、


 グレイスがカナタを、アッシュがミリアを捕まえ、空高く飛び上がる。

 続いて兄妹三人は、メイド二人をすぐに抱え、飛び上がった。


「は、え?」


 突然のことに反応できず、そうつぶやくカナタ。彼の黒い瞳には、同じように、状況を理解できていないミリアの瞳と目が合った。


「は、なんで、急――」


 カナタの疑問に誰かが答える前に、ファルレフィア邸は燃え上がった。


「《空間操作》」


 と同時に、アッシュは『権能』で異空間の武器庫を出現させ、そこから氷の『神剣』フロストリアを取り出す。

 すると、その異常な冷気が室内を包み込み、炎が止まる。


「――――」


 そして、その後ろでラインが作った空間の裂け目。そこに、一行は吸い込まれた。



◆◇◆◇



「うお、おぉあぁぁ!?」


「うるせぇ黙ってろ」


 次に一行が世界に現れたのは、空高い上空だった。屋敷の庭に向かってそのまま落ちていき、身体にかかる力と恐怖でカナタは叫ぶ。それを、彼を抱えたままのグレイスが黙らせて、ゆっくり地上に足をつけた。


「な、なんで、屋敷が燃え……」


「さあな。変なやつが襲ってきたんだろ」


 そう言いながらラインが腕を構えると、屋敷の燃えて崩れていた部分が直ちに修復された。


「えぇ……」


 これにはカナタもこの反応しか出来ない。――それよりも、何が起きたのかの方が大事だ。


「クソ、一体なんなんだよ休みの日に……」


「そう愚痴を零しても仕方ないじゃろう。おそらくは、妾と貴様を狙っているあの――」


「――ッ!? こ、れは……」


 次の瞬間、ライン、セツナ、レンゲの三人以外は、重力で地面に倒された。

 これは、カナタを異世界に飛ばしたあの男が使う技と一緒だ。と、いうことは、彼が来ている。


 そう、思っていたのだが――、


「チッ……」


「ラ、イン……?」


 突然舌打ちをかましたラインを、カナタは地面に押さえつけられながら見上げる。すると、彼の手が吹き飛び、ただならぬ出血が溢れてきた。


 ――しかし、彼は吸血鬼である。こんなのを治すのは造作もない。すぐに切断された手は再生され、なんとかなった。


「ふぅ……良かった」


 安心してカナタは呟いた。だがそれどころではない。何の攻撃をラインは喰らったのだ。全く、何も見えなかった。少なくともカナタには。

 そう、思考を繰り返していると、


「……誰?」


「――――」


「屋敷を焼いたのあなたたち? ぶん殴るよ?」


「――――」


 セツナの問いに、向こうから歩いてくる二人の男は答えない。左の男は両腕を後ろで組み、堂々と歩く。

 もう一方は腰に手を当て、だるそうに歩く。


 ――そして、立ち止まった。左側の男は口を開き、


「これはこれは初めましてどうもおはよう。今日はなかなか良い天気だな」


「…………」


「――おっと。無視か。会話も出来ないのか愚か者共。耳が悪いのか? それとも通じないのか? 答えてみよ。まずはそれからだ」


 いかにも傲慢な発言だ。自分たちが勝手に来たというのにこの態度。中々ヤバいやつである。カナタたちは引き気味で男を見つめ、睨みつける。


「まあまあ落ち着けって。君たちも何か喋ってくれないと。こいつ、怒らせるとめんどくさいぜ?」


「黙れ。俺の評価を勝手に貴様がするな」


「えぇ、庇ってやったのに酷い言い分だな」

 

「庇っただと? 面白い。貴様ごときが俺を庇えるとでも?」


 ――なんか仲間? 同士で喧嘩をし始めた。カナタは「何やってんの」という感じで呆けていると、


 ――血液の刃が、二人の男の間を通り過ぎた。

 それをした少女は、


「さっきから聞いてれば愚か者だのなんとか言って。まずはそっちから名乗るべきでしょ。私たちの敷地に入って、屋敷も燃やして。あなたたちはどの口でものを言ってるわけ?」


 ――あーやばい、ガチギレだ。セツナがキレている。普段はここまで口数が多くないのに、めちゃくちゃ言っている。カナタは後ろから見上げているだけで顔が見えないが、それでも圧がかかって怖い。


「あいつら、どうするんだ……?」


 そう思っていると、右側の男が急に笑いだし、


「アハハ、それもそうだね。ごめんごめん悪かった悪かった」


 そう言って、男は再び腰に手を置く。


「――僕は【大罪冠(たいざいかん)】『暴食』ヴェルドさ。以後、よろしくね。――ほら、お前も」


「黙れ。俺に指図するな。――俺は【大罪冠】『傲慢』バエル。死ぬ前に、覚えておけ」

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― 新着の感想 ―
大罪冠の新キャラ登場ですね〜。 全員揃うのが楽しみになって来ましたよ。 (「`・ω・)「
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