表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/84

第2章30話『決意』


「――あっという間に、一日過ぎてしまうものじゃな」


 フェルザリア邸のリビングで、椅子に座ってお茶を飲む王女様――ミリアがそう呟く。外はもう夜で、窓から見える景色は真っ暗闇と、いくつか星が見えるだけ。


 全く、アッシュに護衛される一日も早かった。アッシュも同じことを思ったらしく、「そうだね」と小さく答え、


「それにしても、ここまで襲いに来るとかなくてよかったよ」


「まあ、そんな馬鹿な真似はしないじゃろう。貴様と戦ったところで勝てないからな」


「うーん、そうかな? どんな攻撃をしてくるか分からないし、襲われたらちょっと心配だよね」


「妾のボディーガードをしているというのに、何を弱気になってるんじゃ」


 手の内の全容が明らかになっていない相手に襲われることが心配なのは、ミリアとしても分かる。が、アッシュは現在ミリアの警護をしていて、さらにこの国で一番強い『剣聖』なのだから、弱気な発言はやめて欲しいと思う。


「学園の方はどうだったのかな? カナタは襲われたりしたのかな」


「さあな。じゃが、あの四人がいる時点で、連れ帰るのは無理じゃろ」


 あの四人――つまりは四つ子がいる学園で、カナタを誘拐するなんて無理に決まっている。たとえどんな相手でも、負けはしないという信用と信頼がある。

 


 ――すると突然、玄関の扉が開かれた。侵入者か!? と思い、すぐさまミリアの前に立ち、腰の剣に手を当てるアッシュ。しかし、その心配は、入ってきた男を見て落ち着いた。


「……なんだ、お祖父様か。びっくりさせないでよ……」


 入ってきたのは侵入者でもなんでもない、アッシュの祖父であるヴァインだった。胸を撫で下ろすアッシュを見つめ、


「そう言われても、仕方ないだろう。そろそろ私が帰ってくる時間だと確認していないのが悪いぞ」

 

「それもそうだね」


 腕を組み、アッシュの確認不足だと言ったヴァインにアッシュも納得し、腰に手を置く。そうしていると、廊下から「あら?」という声が聞こえ、三人が同時に目を向けた。


 すると風呂上がりなのか、濡れた空色の髪をタオルで拭いているアッシュの母親――セリアがいた。セリアはヴァインに気づくと、そのままキッチンに向かい、コップに水を入れて歩いてきた。


「はい、お義父様。お疲れでしょう?」


「ああ、すまないな」


 ヴァインは手渡された水を一気飲みし、空になったコップをセリアに渡す。


「王都の警備は大丈夫だった?」


「ああ、何も変化はなかった。ただ……」


「ただ?」


 王都が何か奇襲を受ける、なんてことはなかったようで安心だ。だが、「ただ」と言葉を続けたヴァインに、アッシュも同じ言葉で聞き返す。すると、ヴァインの口から衝撃的な出来事が聞かされた。


「以前、お前が捕らえた盗賊が二人いただろう。それが何者かによって逃がされた」



◆◇◆◇



「魔法、魔法……。戦う力をつけないと……」


 カナタが、ファルレフィア邸の広い図書室で、机に何冊もの魔法の本を並べ、一冊ずつ読んでいる。


 どうして急にこんな感じになっているかというと、理由。

 

 それは、カナタはこの異世界に来てからというもの、何度か襲撃を受けているが、その全てを仲間に守ってもらっている。

 敵の狙いがカナタだというなら、これ以上迷惑はかけられない。


 そして、六限の授業で、ロエン・ミリディアとちょっとした交戦を行ったが、為す術なく負けた。ロエンが強いのは分かっているが、クラスメイトに負ける状態じゃ、カナタは襲われても何も出来ず、攫われるだけだ。そうならない為にも、せめて自分の力をつけないと――。


「――早く、元の世界に戻りたいのに」


 ボソッと、弱い声で呟いた。カナタは別に強くなりたいわけでも、異世界生活を満喫しようと思っているわけではない。魔法を覚え、魔法学園に入り、という行動は全て元の世界に帰るためだ。


 もしも、カナタが死んで異世界転生、という形だったのなら、受け入れられただろう。しかし、カナタは転生ではなく転移。それも、知らない奴に勝手に飛ばされた。


 ――早く、家に帰りたい。

 

「クソが……」


 一体、なんだというのだ。あの【大罪冠(たいざいかん)】とかいう組織は。奴らは、カナタの世界を滅ぼせる力を狙っていると、『嫉妬』が言っていた。

 

 だがそんなこと言われても、納得出来ない。異世界に来て、チート能力は与えられていない――いや、未だ完璧に扱えるわけではない《創造》と《破壊》をチート能力と括れば分からないが、そんなカナタに世界を滅ぼせる力があるなんて到底考えられない。


「――チッ」


 【大罪冠】はカナタの生死を問うのだろうか。カナタを異世界に飛ばした男といい、『嫉妬』のリオネといい、カナタを殺そうとはしなかった。

 

 ――いや、男は《腐蝕の呪い》を使ったり、リオネは何度か夢でカナタを痛めつけたが、殺害まではしなかった。カナタは弱く、すぐに殺せるというのに。


 となると、カナタを殺すのはNGといったところか。

 それなら、こちらは殺す覚悟でいけばいい。




 こうなったら――、


「こうなったら……」


 ――俺が強くなるしかない。

読んでいただきありがとうございます!

第2章これにて終わりです!次回から第3章です!

ここまで活躍出来なかったカナタですが、次章から活躍していきます!楽しみにしていてください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お〜、強くなる決意を固める回ですね〜。 今後、どこまで強くなるのか楽しみですよ。 (「`・ω・)「
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ