第2章27話『六限開始』
※タイトル変更しました。よろしくお願いします
「ん……。――ハッ!?」
目が覚めたカナタが周りを見渡すと、そこは保健室だった。残っている最後の記憶は、【大罪冠】『嫉妬』のリオネとか言っていた、サフィナもどきの少女との記憶。
まさかここも夢では……!? と焦って身体を起こすと、近くの椅子にアレスが座っているのが目に入った。
「ア、レス……。ここって、現実か?」
「うん。リオネとか名乗っていたあの子が居なくなったら、すぐ現実に戻されたんだ。それで、またカナタが変なのに襲われないようにここで見守ってたってわけ」
「そうなのか……」
ここは現実のようだ。もう、下半身を何度も切断されたりといった出来事を受けることはない。――いや、このアレスも夢の中にいる存在であれば関係ないのだが。
しかしまあとりあえずはそんなことは無いとカナタは信じる。
「てか、いつもほんと世話になってるよな……。俺、こっちの世界に来てから守られてばかりの気がする……」
「『気がする』じゃなくて、全部僕たちが守ってるけどね?」
「……うん、改めてそう言われると、なんか情けねえな」
こっちに来てからというもの、何度か戦いに巻き込まれていたが、その全てをカナタは活躍していない。ほとんど彼らや周りの人に守られていて、今のところ情けない姿しか見せていない。
「チート能力とかあればなー」
せっかく異世界転移したのだから、神様みたいな存在から一つくらいチート能力を貰っても良かったのでは? と愚痴をこぼしそうになる。そしたら、今までももう少し楽に動けたのではないだろうか。
――と思うが、そもそも、元から映像記憶能力を持ってる時点で一種のチート能力だと思うし、そのおかげで魔法もすぐに使えるようになった。
さらに、何故か未だに分からないが、この世界に生まれた者に『創世神』から与えられる『権能』という力も持っている。
今のところ、『権能』は二度しか役立っていないが、《創造》と《破壊》といういかにも強そうなものだ。
そう考えると、カナタは以外にも恵まれた環境かもしれない。
「あ、てか、今何限? もう学校終わった?」
「今は五限の休み時間だね。あと五分で六限が始まるよ。魔法の授業は終わったし、『権能』の訓練をするはずだよ」
「お、まじ!? 俺、『権能』持ってるのに使い方が分からなくてさ……。まじで上手くいかないんだよなー」
「《創造》と《破壊》だっけ? 兄さんに教えてもらえばいいよ。兄さんはカナタと全く同じ『権能』を持ってるから」
なんと驚きだ。そういえば聞いていなかったが、ラインはカナタと全く同じ『権能』を持っているようだ。これはもう、運命か。――と、冗談はそこまでにして、二人は魔法実習場まで向かおうと席を立った。
◆◇◆◇
チャイムと同時に、生徒たちはそれぞれ適当なチームを組んでバラバラに分かれた。
カナタはラインとロエンとトリオを組み、適当な場所まで歩く。
「なあ、アレスが言ってたんだけど、ラインの『権能』って俺と全く同じなんだな。運命か? びっくりしたわ」
「え? あー、《創造》と《破壊》か。確かに一緒だな。まあそういうことにしてるけど」
「? どういうこと?」
「や、こっちの話。――って、俺がカナタに付きっきりに教えるなら、お前空気になるぞ?」
そう言って、ラインは隣にいるロエンを見つめた。その通り。ラインがカナタに『権能』の使い方を教える間に、ロエンはただ見てるだけしか出来ないだろう。
「別に良いですよ。私のは単純なものなので、適当にやっときます」
「適当じゃだめだと思うがな……。ま、いいや。それじゃあカナタ」
「あ、うん」
急に名前を呼ばれ、カナタは返事をする。そして立ち止まると、ラインは右手を構えた。
「《創造》」
そう呟くと、真っ白い光を発しながら、ラインの手に野球ボール程度の小さな球が出てきた。
「おー。――で、どうするんだそれ」
ものを無から作れるのは、凄いのはわかった。が、どうやってそれをするのか分からない。魔法のように、魔力をどこかに集中させないといけないのだろうか。
「魔力は使わないぞ。できることに上限はあるけど、まあ大体は想像力さえあればなんでも作れる。武器も作れるしな。なんか、剣でも想像しながら作ってみろ」
「……あのー」
「? なんだよ」
「そもそも、『権能』の発動方法がわからなくて……」
挙手をして気まずそうに言うと、ラインとロエンの両方が「まじで?」と引いたような顔をしてきた。そりゃあ、この世界に生まれて、子供の頃から『権能』を使ってきたであろう彼らなら簡単なことだと思うが、カナタにはそんなことできない。
「使い方? うーん、そうか……。――《叡智の伝達》」
「え、何それ?」
ラインがなにか呟いたのが聞こえたが、何だろうか。『権能』? いや、アッシュの話では、一人二つ持って生まれるはず。となると、また別の力か。
「いや、『権能』だけど?」
「え? 《創造》と《破壊》だけなんじゃ……?」
普通に『権能』らしい。一人二つというのはどこに行ったのか。――あ、しかしそういえば、カナタはアッシュからこうも聞いていた。
『僕にも三つ『権能』があるけど、二つは子供の頃から使ってたし、自然に出来るからね』
そう言っていた。となると、たまに何個も持つ人物が産まれてくるのかもしれない。――それはそれで、アッシュといいラインといい、何か確率が多い気もするが。
――と、そんなことを思ったカナタの思考を、ラインの一言がぶち壊した。
「だって俺、全ての『権能』使えるし」
「……ん? え? は?」




