第2章19話『簡単な小テスト』
――朝、ラインたちと魔法学園まで向かったカナタは自分のクラスに入り、席につく。何やらすごく眠そうな顔をしていて、目を擦っているが、昨日はよく眠れなかったのだ。
図書室で一人になってからというもの、魔法の本だったり色々な本を読んだことで、寝る時間が遅くなってしまった。
「――っぶね……。意識落ちるとこだった……」
「大丈夫ですか? 眠そうですけど」
「ああ、昨日全然眠れなくて……」
隣の席のロエンが心配そうに聞いてきたため、カナタは目を擦りながら答える。
そうしていると、教室前方の扉が開き、担任のカイラス先生が入ってきて教卓に着いた。
「席に着けー。今日は一限から六限まで魔法の授業だからな。覚悟しろよ」
「えー」と、クラスメイトの悲鳴が耳に入る。どうやら、六時間も魔法の授業を受けるのは生徒側もキツイのだろう。ここは魔法学園なのだが。
「三限までは教室で座学だ。で、食堂で昼食を撮ってから、四限から魔法実習場で魔法を使う。時間が空いたら『権能』の練習でもしろ」
先生が日程を伝え、クラスメイトたちは「はーい」と答え、ショートホームルームは終わった。
◆◇◆◇
――一限のチャイムが鳴り、先生は授業を開始――する前に、
「ちょっとした小テストをするぞ。魔法についての簡単な問題ばかりだ」
またもや教室からは「えー」と声が出るが、カナタは逆にワクワクしていた。なぜなら、属性魔法については、『魔導師』であるグレイスにスパルタ教育されている上に、昨日この世界の文字は覚えた。そのため、その能力を発揮したいと思ったのだ。
「ありがとう」
前から渡ってきたプリントを取って机に置き、ペンを持って問題を読む。問題は全部で五問のようだ。
(えっと、炎魔法の詠唱を弱い順に並べろ、か。簡単だな。フレイムスパーク、インフェルノ、フレアランス、エクスプロード、と)
完全に覚えていた。弱い順に並べ、第一問は突破。そして第二問に目を通すと、「雷の刃を出す魔法の詠唱を答えろ」とあった。
(これって……)
問題を見て、カナタはニヤリと笑った。なぜならこの魔法は、魔法学園への入学試験の第二試験で、先生に課された問題と同じだったからだ。
(これは雷魔法と風魔法の組み合わせだから、ライトニングカッター、と)
またもやすぐに答え、続いて第三問に目を通す。
(氷の針を飛ばす魔法? フリーズニードルだな)
これも簡単に答え、三問解けた安心感がカナタの心を和らげてくれる。ふぅ、と一息ついて、第四問を見る。
(魔力が切れてしまった場合、魔力を補給するのに適した食べ物はなにか? ……いや知らねえよ!? そんな食べ物あるの!?)
順調だった手が止まってしまう。今のところ、カナタは魔力切れになったことはないため、そんな食べ物を食べたこともなかったし、存在するということも知らなかった。
(いや、分かんねえ。もう適当でいいや)
分からないものはどれだけ考えても分からない。「グレープフルーツ」と適当に書き、最後の大問へ進む。
(えっと、現在は失われている属性魔法を答えろ? なんだよこの問題……)
属性魔法を答えろという問題だが、今は失われているものを書かなければならない。
グレイスから教えてもらったのは、炎、水、氷、雷、風、光、闇魔法の七つだが、これ以外にまだあるのか。
(うーん、土魔法とか? いやでもなんか簡単そうだし、今はないってことはないよな……)
四大元素などで土が入っているため、そうかな? とも思うが、土魔法より闇魔法や光魔法の方が感覚として難しそうなため、土魔法といった魔法はないだろうとカナタは考えた。
(……。分かんねえな。これも適当に……)
もう適当に書いてやろうという気持ちでペンを走らせようとしたカナタ。しかし、その刹那、ビビッと頭が刺激される感覚が広がった。
知識が蓄えられている扉をいくつも通り抜け、カナタは記憶にある、ある一つの答えにたどり着いた。
(無魔法、と)
――そう書いた瞬間、先生が手をぱちぱちと叩き、
「終わりだ。俺が口頭で答えを言うから、自分で丸つけをしろよ」
全員が答えを記入するのをやめ、先生の顔を見つめる。すると、先生は手元にある紙を見ながら答えを読み上げる。
「一番はまあ分かるだろ。弱い順番に並べればいい。二番は『ライトニングカッター』だ。で、三番は『フリーズニードル』だな」
(ここまでは順調だな。で、問題は次なんだが……)
回答を聞き、三問目までは正解だった。大きな丸をつけて一息つくが、問題は次。第四問は全く分からなかった。「グレープフルーツ」と適当に書いたのだが、答えは――、
「四番はドライフルーツだ」
(……え、マジ? めっちゃ惜しいじゃん!? てか、ドライフルーツってどの果物? レーズンとかあるの?)
まさかのドライフルーツ。この世界の果物をまだよく知らないのだが、どうやらドライフルーツを食べれば魔力を回復できるようだ。
それに驚いているカナタをよそに、先生は続ける。
「で、最後の答えは無属性魔法な」
(正解っと。ふぅ、昨日本読んでて良かったー)
そう。カナタは、寝る前まで魔法の本や様々な本を読み漁っていた。そして、「無属性魔法」というものが内容に乗っていたため、答えることができたという訳だ。
安心していると、先生が、
「ま、簡単だっただろ。その紙は回収するからな」
と言った途端、全員の机から紙が浮き、先生のもとまで集まっていくのだ。
(……えぇ。そ、そんなことも出来るの? 便利だな……)
わざわざ後ろから回収させる必要もなく、便利な魔法だなぁとカナタは感心していた。
「じゃあ早速、座学を始める。全員教科書を出せ」
小テストは終わり、これから三時間、座学が始まる。先生の声に反応したクラスメイトたちは、引き出しから自分の教科書を取り出し、準備する。
しかし、カナタはというと――、
(……教科書? ナニソレ)




