第2章16話『吸血鬼×⬛︎⬛︎⬛︎のハーフ』
「――どうして、俺の記憶にいた姿と全く同じ姿をしてるんだ……?」
カナタが質問をした途端、空気が変わったのを肌で理解する。四つ子は一瞬黙り込んで、ラインは言葉を紡いだ。
「記憶にいた姿と一緒って、どういうことだよ?」
ラインが不思議そうに首を傾げ、質問に質問で返す。確かに、カナタの脳内を知るわけないのに、「記憶にいた姿と一緒」なんて言われても意味がわからないだろう。
それを理解したカナタは返答を考える。
「前にアレスには話したんだけど、俺は頭痛がするときに変な記憶が流れてくるんだよ」
「うん、それは教えてもらったね。この世界の景色が流れてきたりするんでしょ?」
「ああ。で、その記憶の中に、真っ白な髪の男女もいたんだ。そして、それが今のラインたちと完全に瓜二つなんだよ」
昔からよく頭痛に襲われたカナタだが、この世界に来てからというもの、毎日頭痛に襲われている。痛みや時間は日によってバラバラで、気絶するほどの痛みの日があることは彼らも知っている。
アレスにだけは、頭痛の時に変な記憶が入ってくると教えていたが、未だ誰にもどんな記憶なのか正確に話すことはなかった。
それは、別に話さなくても良いだろうと思った結果であった。
しかし今日、四つ子の姿を見て考えが変わった。
真っ白な髪と瞳を持つ四つ子。それが、流れ込んできた記憶にいた四人と完全に一致している。こんなもの、偶然ではないだろう。
「――――」
カナタがじっと目を見つめても、ラインは何も話そうとしない。何も言わないつもりなのか。
「なあ、頼む。教えてくれよ」
口が堅いのか、頼んでも教えてくれる気配は無い。カナタは「わかった」と言い、階段を登って二階に行こうとする。
すると、「はぁ」とラインのため息が聞こえた。
「お前は何を知りたいんだ? なんでお前の記憶に俺らがいるかってことか? それとも、今の姿のことか?」
「……出来れば両方がいい」
カナタがそう答えると、ラインは困ったように頭をかく。ラインは決めた。カナタの疑問に答えることを。
「まず前者の方だが、正直分からない。もしかしたら、未来予知に近いものかもしれないな。これから見るかもしれない未来を見てるとかか? ――で、後者の方だが……」
一息ついて、ラインは続ける。
「俺らは吸血鬼同士の間に生まれた訳じゃなくて、吸血鬼と別の種族の間に生まれたハーフなんだ。で、この状態はそっちの力を使ってるってだけ」
「あ、ハーフだったの? それにしてはいつも吸血鬼の影響受けすぎじゃない? 髪とか真っ赤だし、今の白色とは全然違うじゃん」
「この力は使うと疲れるから、いつも使ってないだけ。私たちは吸血鬼だから疲労なんて感じないけど、この力を使ったら疲れちゃうからさ」
ハーフという割には、吸血鬼の血の方が濃く出すぎでは? とカナタは思った。しかしセツナによると、疲労を感じないはずの吸血鬼でもその力を使えば疲れてしまうため、抑えているようだ。
「使いたくなかったのに、あいつのせいで心臓を潰す羽目になったからね……。絶対明日身体重いじゃん……」
と、セツナが愚痴をこぼす。あいつというのは、先程戦った男たちのことだろう。カナタは彼らの戦いがどうなっていたのかは知らないが、心臓まで潰したのか。
だが、彼らの異常なまでの再生能力をカナタは知っている。なのにどうしてもう一つの力を使うことになったのか。
そんな疑問が生まれたカナタは質問する。
「心臓を潰しても、また再生するんじゃないの?」
「吸血鬼って、心臓潰されたら普通は死んじゃうんだよ! だから普通は治せないんだー。でも、私たちは心臓がなくなっちゃったらもう一つの力が勝手に治してくれるんだ!」
レンゲが元気いっぱいに教えてくれた。
そう、吸血鬼の弱点は心臓だ。心臓以外がどれだけバラバラにされても、心臓が無傷なら復活出来るというのがこの世界の吸血鬼。
そのルールはもちろん四つ子も対象であるが、彼らはもう一つの力がオートで心臓を治してくれるため、心臓を潰したくらいで死ぬことは無い。
――ただ弱点といえば、疲労してしまう力が勝手に発動してしまうということ。そのせいで、彼らは現在真っ白な髪と瞳を持った神々しい姿となっている。
「そのもう一つの力すげえな!? そんなこと出来るのか……。あれ、もしかして、ミリアさんの扇子を作ったり、ここまでワープしたのもその力?」
「そうだね。まあ色々と便利な力だしさ」
武器も作れてワープも出来る力などと、かなり無法な強さをしているようだ。
――もしもそのワープ能力が、元の世界にも繋げるのなら、カナタはすぐにでも頼んで帰りたいと思った。
(……いや、無理か)
しかし、以前アレスにカナタがこの世界の人間では無いと見抜かれた時、カナタは確かに「俺を元の世界に帰してくれたり……?」と聞いた。だが、その時に彼は「出来ない」と言った。
やはり、まだこの世界でやらなければならないことがあるようだ。
「色々教えてくれてありがとう。ちょっと謎が解けた。――あ、図書室借りてもいいか? 色んな情報を知っておきたくてさ」
「うん、良いよ」
ファルレフィア邸には多くの本がある。もしかしたら、いずれ役に立つ情報があるのではないか。そんな淡い期待を持ちながら階段を登って二階に向かうカナタを見送る四人。
さて、風呂にでも入ってまだ祭りを楽しんでいるであろうメイド二人を待とう。
そう思った各々が行動しようとしたとき、セツナが「あ」と声をあげた。
「カナタ君って、こっちの世界の文字読めないよね? 本
とか何も読めないでしょ」
「あ、ほんとだ。どうする? 読み聞かせでもするか?」
さてどうしようか。本を読めないカナタの代わりに読み聞かせでもしてあげるか悩む四人。だが、各々やりたいことがある。誰が行こうか話し合おうとすると、第三者の声が響いた。
「――それじゃあ、私がしてあげようかな?」
と、どこからともなく現れた『知恵の神』は言った。




