第26話『聖煌魔法学園』
――朝のホームルーム。二年A組に通う、ラインたち四つ子とそのメイド二人、『剣聖』アッシュ、『魔導師』グレイスはクラスメイトと共に教室で担任の話を聞いていた。
「――さて。連絡はこの辺にして、今日から転校生がやってくるぞ」
「え、またですか? 去年めっちゃ転校生来てましたよね?」
「そうだ。今年はいないと思ったんだが、なんか増えそうで心配だな。――って、どうでもいい。入ってこい」
このクラスの担任であるカイラス・ヴァルディ先生が頭をかきながらそう言うと、外側から扉が横に開かれた。
「軽い自己紹介と『権能』を伝えてくれ」
「えっと……夜凪叶向です。『権能』は《創造》と《破壊》です。よろしく」
本当に軽い自己紹介しかできなかった。もっとなにか好きなことを言おうと考えたが、例えばサッカーが好きと言って「何それ?」となる空気の方が耐えられなかった。
それに、
(やっべぇ……みんな髪色明るすぎじゃね? 俺だけ黒髪で浮いてるんだけど……)
そう。ここは異世界。みんな髪の色が金だったり銀だったりと明るく、そこに黒髪のカナタが混ざればすぐに目立つ。
地毛なのかな? などとどうでもいいことを考えていると、先生が席を指さした。
「お前はあそこに座れ。じゃ、ホームルームは終わりだ。授業の準備しとけよー」
「は、はい」
席の間を歩き、奥にたどり着くと、椅子を引いてゆっくり座る。すると、隣に座る紫髪の少年が声をかけてきた。
「よろしくお願いしますね」
「あ、うん、よろし……く!?」
思わず声が裏返ってしまう。なぜならその少年は、入学試験を終えた帰り道でぶつかった少年だったのだ。
「え、ここに通ってたんだ」
「そうですよ。まさかあなたもここに来るとは驚きましたよ」
「偶然だなー。あ、名前教えてくれる?」
「名乗ってませんでしたね。――私はロエン・ミリディアです」
ロエン、か。良い名前だと思うと同時に、なにか懐かしい感覚がしてきた。何度も呼んだことのある響きのある名前な気がする。
「……? どうかしましたか?」
「あ、ああ、何もないよ」
そう答えたカナタに、ロエンは「そうですか」と答え、教室から出ていってしまった。
「おい」
突然後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。すると、腰に手を当ててニヤリとしているグレイスと目が合った。
「合格したんだってな。やっぱり俺のおかげか?」
「ああ、まあな。――あ、グレイスもアッシュも、先生のこと怖い人みたいに言ってたけど、全然そんなことなかったぞ?」
「そうか? ま、今日の授業で分かるだろ。あの人すぐ雷落としてくるからな」
「またまた〜」
◆◇◆◇
「おいそこ! 授業中だ。無駄口を挟むな!」
「「「痛ってぇ!?」」」
始まった一限目の授業。それは、この広い魔法実習場で先生の話を聞いたあと、それぞれ再現するというものだった。
先生が魔法を実演している中でも、もちろん少々騒がしい生徒はいる。
なんと、先生はそこに雷魔法を落としたのだ。
先生が手加減したのか、この世界の人がタフすぎるのか分からないが、喰らった数人は叫んだ後にすぐ大人しくなった。
それよりもカナタが思ったのは、
(雷落とすって、まじで雷落とすんかい! 俺はてっきり、めちゃくちゃ大声で怒鳴る人みたいなのを想像してたんだけど!?)
ということだ。比喩表現だと思っていたそれが、全然そんな事なくて目が飛び出るほど驚いてしまった。
「な? 言っただろ? 雷落とすって」
「いや、まさか本当の雷を落とすとは思わないだろ……」
カナタの肩に手を置き、「な?」とドヤ顔を浮かべるグレイスにそう答え、腕を前で組んで続ける。
「てか、そもそも無駄口叩いてるほうが悪いだろ? 授業中なのに」
「まあそれはそうだな。――あ」
「ん? どうし――あ」
急にそう呟き、全身を防御魔法で包み込んだグレイスを不思議そうに見つめる。そして、彼が目を向けている方向に沿って顔を動かすと、指をこちらに向けている先生と目が合った。
「サンダークラッシュ」
カナタとグレイスに向かって雷魔法が落とされた。グレイスは防御魔法のおかげでなんともないが、展開が遅れたカナタは喰らってしまい、地面に倒れ込んでしまった。
「無駄口は叩くなよ?」
(俺が悪いのか……? これ……)
そう思いながらも、カナタはゆっくりと立ち上がり、先生の話を素直に聞き始めた。
◆◇◆◇
「さて、明日は休みだから好き勝手遊べよ? 一年に一度の王国の祭りなんだからな」
(え、祭り? 明日?)
帰りのホームルームにて、先生がそんなことを言い出し、カナタは周りを見渡した。どうやらみんな知っているようだ。――って、一年に一度の王国の祭りなら知っていて当たり前か。
「じゃ、またな」
先生がそう言って職員室に帰っていった途端、カナタは隣のロエンに話しかけた。
「ねぇ、王国の祭りって何?」
「あれ、知らないんですか? このレガリア王国の最初の国王が誕生した日を国の祭りにするっていうものです。何百年も昔から続いているようですよ」
「すっげぇ……。どこであるんだ?」
「王都レガリアでありますよ。ここら辺からはまあ、ちょっと遠いので、行くなら早い方が良いと思います」
わざわざそう言ってくれたロエンに礼を言い、カナタはラインの席に向かう。
「なぁ、ラインたちもお祭り行くの?」
「行くっていうか、行かないといけないんだよな」
「なんで?」
何やら義務のような言い方をするラインが気になり、質問する。すると、ラインは頭をかいて呟いた。
「王女様の相手をしないといけないからな」
第一章終了です!次回から第二章です!




